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プロジェクト:運輸 2009年 香港・マカオ旅行記 その3

2009-08-26 23:17:32 | 旅行記
(← その2からの続き)

【第3話 恐怖と立ち向かう(スタンド)のだ】

驚くほどすっきりと起きた四人は、予定通りマカオ行きフェリーへ急ぐ。
上環駅から歩いて数分。
フェリー乗り場で出国の手続きをして、いざフェリーへ。
待機しているフェリーの揺れがひどく、聞いていた通り、気分が悪くなりそうになる。
だが、用意周到な花京院(僕)は、こっそり持ってきた酔い止めを飲んでいた。
勧めたが「いらない」と言った二人承太郎とアヴドゥルは、フェリーを下りたとき、かなり気分が悪そうだった。

一行が向かった先は、マカオでのメイン・イヴェントとなるマカオタワー。
マカオタワーの目玉はなんと言っても世界一の高さから飛ぶ「バンジージャンプ」!
ピークタワーからの景色だけで、もはや怖がっていた四人は、「これはだめだわ!」と言いながらタクシーから降りて、タワーに向かう。
タワーに着いたとたん、元気になったジョセフと、アヴドゥルは、精神的に飛ぶテンションまで一気にあがっていた。
どうしても踏ん切りがつかない僕は、促されるまま1階のチケット売り場へ。
ここで飛ばなかったら一生飛ばないだろうと思って、予算の関係上、安い「スカイジャンプ」を選択した。
バンジージャンプは1488香港ドル。
スカイジャンプは688香港ドル。
スカイジャンプは、落ちるスピードを抑制してくれる「なんちゃってバンジー」。
こちらの方が安全性が高く、万人向け、ということで、こちらを選んだ。
(もちろん、あくまで予算の関係のための選択です。)

まずは展望台のある58階へ上る。
展望台には、ガラス張りで下界が見下ろせる場所がある。
それを見たとき、僕は本当に飛べないことを確信した。
1階でお金を払うシステムでなければ、おそらく飛ぼうとさえ思わなかっただろう。
一緒に行っていた三人は気づいていたはずだ。
このあたりから僕に表情が消えていたことを……。

20分ほど、「これはやばい」と言いながら楽しんでいたが、その時間も終わり、61階のジャンプ台へ向かった。
びびりまくる僕とはうらはらに、テンションが急上昇しているジョセフとアヴドゥルは、どんどん手続きをすすめていく。
書類にサインして、着替えていよいよジャンプ台へ。
二人はバンジーなので、先に飛んで、僕は待たされることになった。
先に外に出されたアヴドゥルの様子を中から見ていると、なにやらもめている様子。
顔と口の動きからどうやら落下した後の手順について説明されているらしい。
(え? これを引っ張ればいいってこと? どういうこと?)
と不審そうな顔をしているアヴドゥルの様子は、他人から見ればほほえましく見えるのかもしれないが、僕にとってはもうそれどころではない。
想像を絶するその高さに、テンションは急降下。
スカイジャンプで墜ちるより先に、僕の心はブレイクしていた。
快晴で風も穏やかだったが、僕には皮肉にしか思えない。

二人は、とっとと颯爽とジャンプしていった。
残るは僕だけ。
絶対に飛ばないと言っていた承太郎は、外で見守っている。
現地のスタッフが楽しそうにビデオと写真を撮影している。
後で僕たちに売る算段だ。
(結局そのフォトCDを購入したが、そこには、今から手術を受けるようなうつろな僕の写真が入っていた)
真下を見ると、着地点であるエアマットが小さく見える。
明らかに的が小さい。
あんな小さい的に、墜ちられる訳がない。

僕は、本当に、どん底に、後悔していた。
飛べばなんともないだろうということはわかっていた。
怖いのは飛ぶ前で、終わってしまえばいい思い出になることもわかっていた。
だが! 怖すぎる!
やめるという選択肢があるなら、やめたかった。
スカイジャンプとバンジーは装備が異なるので、その換装に時間がかかって、待っているときに日本人の家族連れが僕の方を見ている。
僕を日本人とわかったのかどうかはわからない。
でも、僕を見つめるその表情は、明らかに同情の色をしている。
そんな気がした。

僕は叫びたかった。
「頼む! 助けてくれ!」

ヘタレ丸出しのまま、発射台へ。
英語で最終確認をしているスタッフの単語に「セーフティ オフ」という音が聞こえてくる。
いよいよだ。
死へのカウントダウンが始まる。
スタッフは僕の真後ろに立ってじりじりと外側へ押し出していく。
へっぴり腰になった僕は、5、4、3…というカウントダウンを聞いている。
手のやり場に困っている僕に、スタッフはキョンシーのように突き出すように要求する。
手が空中に漂って、不安定な体が余計に不安定に感じてしまう。
そして、GO!の声がかかる。

空中に足を踏み出すように墜ちていく瞬間、これまで体験したことのないカタルシスが僕をさらっていった。
まるで体ごとタワーの頂上に忘れてきて、空中をさまよっているかのような爽快感。
その瞬間、あれだけ怖がっていたのに、恐怖心はどこかへ飛んでいった。
僕は叫びながら(結局叫んだんかい!)、そのまま一気に地上へ墜ちていった。

装備を外して、地上に降りると、へろへろになっていた。
下で待っていた二人は、「楽しかった」と連発。
僕も「怖すぎるけど、降りたら怖くないね」と発言できるまでになっていた。
タワーに戻るとき、中国人のおばちゃん観光客に声をかけられた。
「怖かった?」と聞かれて、「怖かったけど、とてもエキサイティングだった!」と答えた。
その中年女性は「すごいな~。私はようせんわ~」と英語で話していた。

都合、三時間ほどマカオタワーで過ごし、遺跡が乱立する次の目的地までタクシーで移動した。
想像していたよりも道が入り組んでいて、しかも高低差が激しい。
タクシーの運転手に指定したところまで行ってもらったが、どこに降ろしてもらったさえいまいち把握できない。
とにかくセナド広場がメインの場所で目印として役立つので、セナドを目指すことにした。
途中、いくつかの教会などにも入ったが、セナド広場に着くと、一気に人間の数が増える。
広場、といっても小さい噴水があって、周りがポルトガル領時代の建物で囲まれている小さな空間。
雰囲気は悪くないが、人が多すぎて何がなんやら。
とにかくおなかが減ったので(マカオタワーの地下でパンを食べただけだった)、適当な店を探す。

入った店は王将のような食堂。
お昼時だったためか、座席は満員だった。
注文しようにも、全く料理がつかめない。
「~飯」とか「~麺」とか、「~包」といった最後の言葉でジャンルを特定し、具材が何かを調べる、という方法で指を指しながら頼んだ。
結局「~包」というのはサンドイッチのようなもので、中に牛肉や鶏肉?が入っていた。
まあ、普通の味。
「~麺」はその名の通り、ラーメン。
こちらは、麺がちょっとやる気のない食感で、僕は好きになれなかった。
店のおばちゃんが勧めてきたご飯がおいしかった。
野菜あんかけ炒めのような料理に、ご飯がついている。
これが一番、まともな昼飯のようなもので、若干濃いめ。
だからご飯と一緒に食べると、なかなかいける。
最も残念だったのは、飲み物。
それなりっぽいのを頼んだが、どれも求めているような感じのドリンクではなかった。
特にジョセフが頼んだ黄色いジュースは、冷やしあめのような味で、甘ったるくて厳しかった。
彼は「ぜんぜん大丈夫」と言っていたが。

何がメインか、端から見るとよく分からない感じのチョイスで、とにかくおなかを満たして、さらに散策は続く。
高台に立っているモンテの砦と、教会の入り口のみが残る聖ポール天主堂跡。
照りつける日差しと、生ぬるい風、そして登ってきた疲れを癒すには、その高台は役に立たなかった。
見渡せる景色はすばらしいが、マカオタワーを経験している僕たちに言わせれば、手前に広がるスラム街のような街並みと、角度を変えると豪華絢爛のホテル街との落差を楽しむくらいだった。
それにしても暑い。

聖ポール天主堂跡では人だかりができていた。
日本語もちらほらと聞こえてくる。
マカオは特に、アメリカのニューヨークのような趣で(行ったことないけど)、ありとあらゆる人種が集まっている。
隣ではヨーロッパ人が記念撮影しているかと思えば、通りの向こうではハングル語が聞こえてくる。
街並みはポルトガル調だし、気候は高温多湿。
看板はやっぱり中文(中国語)が多い。
どこの国にきたのだ、と不思議になるくらいだ。

聖ポール天主堂跡での目的は、記念撮影。
四人の共通点である「ジョジョの奇妙な冒険」での一コマを、教会跡をバックに写真で再現したかったのだ。
東南アジア人(タイ人?)のカップルに声をかけて、写真をパシリ。
端から見ると、本当に変なポージング(「ジョジョ」を知っている人ならうすうす分かってもらえるだろうが)をとっている僕たちは、さぞかし奇異に映っただろう。

だんだん目的を見失いつつあったので、一度作戦会議。
時計を見ると、まだ三時(くらいだったと思う)。
それなら、ということで少し遠いがタクシーで「マカオグランプリ博物館」と「マカオワイン博物館」へ行くことにした。
ワインを持って帰りたいというのが旅の目的の一つだったので、それに併設されているF1の博物館も回ろうということになったのだ。
F1はおもしろかったが、ワインのほうは、ちょっとがっかり。
これが特徴なのか、試飲させてもらったものはどれも甘すぎて買う気にはなれなかった。

ここからの数時間はずっと市街を放浪していった。
お土産やカフェ、夕食をもとめて街を歩きまくって、サンダルで日本から来ていた承太郎は、足にタコを作りながら歩いていた。
ホテル・グランド・リスボアの品のない成金ロビーをみたり、腹痛に悩まされた花京院(menfith)のために、トイレを探し回ったりと、かなりの距離を歩き通した。
すっかり夜になって、マカオを出たのは、現地時間で22時45分のフェリー。

一時間かけて香港にわたり、帰る…とおもいきや、そこから上環と中環の間にあるエスカレーター群へ。
バーが集まる街並みをみようと、さらに歩いた。
夜中の一時ちかい時間だったため、もうエスカレーターはストップしていて、店もほとんど閉まっていた。
「恋する惑星」で有名になった街並みは、すっかり夜のとばりの中で休んでいた。
少し歩いて見つけたバーにいき、二時まで飲んで、タクシーで帰った。

バーでは落花生を付け出しで出されたが、殻を床に捨てていくスタイルで、床中殻だらけ。
滑りそうになりながら、バーの店員と話していた。

(→ その4に続く)

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