ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

深夜の九州山地で冷や汗をかいた話

2005年10月09日 | 随想録


 少し前に、「九州一周気まま旅」を記事にしました。
 あれ、実は2度目の九州一周なんです。(あそこは何周しても『きゅうしゅう』なんですよね。。。


 最初の九州一周は、これも車による、気ままなものでした。
 手元のアルバムを見ると、日付けは「1997年7月21日~24日」になっています。


■7月21日 
 国道2号線を西へ。
 急がない旅だったから、のんびり走ってみたんです。
 夕方、関門トンネルを通過して、この夜は博多に泊りました。
■7月22日 
 佐賀県を通過して長崎県へ。
 雲仙を経て、フェリーで熊本県へ。
 このあと国道3号線をひたすら南下。
 夜になって鹿児島県へ入りました。
■7月23日 
 早朝出発、鹿児島市内を抜けて開聞岳へ。
 続いて知覧、薩摩武家屋敷、桜島。
 その後宮崎に入り、霧島、高千穂、えびの高原へ。
 霧島は神秘的な雰囲気でした。人間に例えると「老師」かな。
 夕方前に小林市の手作りハム工房にフラリと寄りました。
 ここではすっかりお世話になってしまいました。
 夕方、国道265号線に入って北上。
 この夜は九州山地の中で車中泊。
■7月24日 
 阿蘇へ。ちょうど正午ごろ山頂に着きました。
 ここでいきなり「帰ろう」と思いたち、
 そのままぶっ通しで8時間運転して家に着きました。


     
      国道265号


 さて問題は23日夜のことです。
 前述の通り夕方前に国道265号線に乗りました。
 地図で見ると、そのまま北上すれば阿蘇に着くんです。「24日は、阿蘇の山頂で朝日を浴びるのだ」と決意しました。
 あまり車も通ってなくて、とっても快適! のどかな風景を見ながら運転を続けます。
 そろそろ緩やかな上り坂です。地図で見た通り、このへんから九州山地に入って行くんだな・・・。
 ところが道が徐々に細くなっていくではありませんか。
 対向車が来たらすれ違うことなんてできません。S字カーブの連続が延々と続くのですが、そのカーブのふくらみのところで辛うじてすれ違えるくらいです。
 幸いにも、おそらく林業関係の方でしょう、軽トラックと一度すれ違っただけでした。


     
      国道265号


 でもぼくは、あまりにも平和で、のんびりしてました。
 そして、全然ひと気がなくて、やや神秘的ですらある山の中の景色をひたすら楽しんでいました。高~い山に、別な高~い山の影が映っている様子などは、自然の威圧感すら感じるようです。
 そうこうしているうちに、とりあえず山頂に着きました。
 ここはダムの工事中らしい。
 そこを過ぎると下り坂です。「ふもとに着けば村があるだろうから、とりあえずそこまで行こう」


     
      西米良村の遠景


 途中、何軒かの廃屋と、廃校を見ました。
 時計を見るともう6時を過ぎています。
 ちょっと不安になりながら、なんとかふもとの村に着きました。「西米良村」です。
 ラーメン屋さんで夕ご飯を食べ、付近にその一軒しかなかった食料品店で飲み物と食べ物を買い込んでおきます。
 そして、暗くなったにもかかわらず、道を教えてくれたおばちゃんが引き止めてくれたにもかかわらず、地図で見ると一本道ということがぼくの冒険心に火を点けました。
 「明日は阿蘇で朝日を浴びるんだ~~」


 夜の山道、それも初めて通る道をバカにしてはいけません。そこが九州なら、なおさらです・・・


 山中で見る星空は、実にきれいでした。
 スパンコールを振り撒いたよう、だなんてありがちな表現しかできない自分がもどかしいくらいです。

 車を止めて、ヘッドライトを消してみます。
 コワイ・・・
 闇がぼくに向かって押し寄せてくるんです。
 「鼻をつままれてもわからない」ってこのことだったんだ。
 だって民家の明かりも、電柱の電灯も、なーんにもないんです。物音すらしない。
 物心ついてから真の闇を見たのは、これが初めてでした。

 
 しかしそんなことにひるんでいるヒマはありません。
 なにせ、まだ見ぬ「朝日の中で見る阿蘇」の美しい景色で、ぼくの脳内はテンションが高くなっていましたから。
 そこで気づくと、当然のごとく道幅は狭くなっている。
 間違いなく対向車とはすれ違うことができない。そのうえ、またもや連続につぐ連続のS字カーブ。
 そうこうするうち、あるT字路に出ました。道路標示と地図をよく確認したところで右に行ってみます。
 10数分後。記憶に新しい、見覚えのある道路標示のあるT字路に出ました。夜だからうっかり迷ったかな・・・。
 注意ぶかくもう一度右折。
 すると10数分後、またもや同じT字路に。
 ??? 
 意を決して、今度は左折してみます。
 10数分後・・・ おいおい、また同じT字路だよ・・・
 昔話で、旅人がキツネに化かされて同じ所をグルグル回り続ける話がよく出てきますが、もしや、それはこのことなんではなかろうか。
 夜、曲がりくねった道を進んでいると方向感覚が失われるんだ、そうだそうなんだ、あ~ヤバイなぁ・・・


 なんとかここをやり過ごしてひとまずホッとします。 
 しかしピンチはここからだったのでした・・・


 延々と続く長く曲がりくねった道。(チューリップの『青春の影』の歌詞に出てくるのは「長い一本道」だったなぁ・・・) あるカーブを曲がると、目の前に
 岩が!

 石じゃありません。岩でした。
 そう、崖崩れのため、右上から大きな岩が落ちて、行く手を塞いでいる。
 岩と、崩れ落ちた土は、道路の半分を覆っています。
 しかも、岩は相当大きく、ぼくひとりが押したところでびくともしない。 さあどうしよう・・・


 ほんとうにカラスが飛んでてもわからないくらいの闇です。
 テールランプの明かりだけでカーブをバックするのは至難の技です。だって標高500メートル以上の山の中の道路ですよ。道路の左側は、見下ろすと何十メートルも、いや何百メートルもあるかもしれない崖なんです。しかもガードレールがない・・・
 ちなみに道路右側は、逆に切り立った崖です。
 進むもならず、退くもならず、ぼくの脇の下はいつの間にか汗びっしょり。
 さあ、どうしよう。
 「九州山地で男性転落死」「無謀な深夜の運転」・・・、そんな新聞の見出しが頭をよぎります。
 しかしぼくは冴えていた。

 そうだ! 携帯電話を使って助けを呼べばいいんだぼくってばなんて頭がいいんだろうアハハハハ~

 早く助けを呼ぼうと、あせりながら携帯電話を取り出すぼく。
 しかし、天は、我を見放した。
 携帯電話のディスプレイには、非情にも

  圏 外

 の二文字が・・・

 ぼくが最後に取った手段、それは、
①運転席に座る。
②助手席側の窓を開ける。
③右手でハンドルを握り、助手席側の窓から身を乗り出して前と左を見る。


 10cm進んではブレーキを踏むような感じで、おそるおそる前に進んだのでした。
 失敗すると左下は奈落の底。落ちればまず命はない。さあ、結果はどうだったのでしょう・・・


 失敗してたら今ここでノンキにブログなんかやってませんよね。


 何度も何度も道に迷ったあげく、その夜は疲れきって山中で車中泊。もちろん、「朝日のあたる阿蘇山」、拝むことはできませんでした。


     
      国道265号 遠景


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コメント (8)
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