私が学校経営の中でも、大切にしている方策の一つは、同僚性の高い職員室づくりです。
「同僚性が高い」とは、教職員どうしで相談しあえる人間関係があり、別の言い方をすれば弱音を出せて、子どものために協力しあい、支え合うことのできることです。
このような職員室を求める理由はいくつかあります。
①教師は多様な生徒と一人で向き合わなければならないから。
教職という仕事は、けっこう独立性の高いものです。 ティーム・ティーチングなど二人で授業をすることはあっても、基本的には35名以上の一人ひとりちがう多様な生徒たちと向き合います。 その生徒たちは、思春期の揺れる気持ちで、ときには行動や態度に表します。
当然、教師は指導上の課題に直面するとか、悩みも生まれます。このような時、教職員がチームになり協力し合い、助け合うことで、課題を解決し、悩みをやわらげることができます。
②助け合う教職員のもとで、生徒たちはつながることの大切さを学びとるから。
教職員団が一体感をもって、生徒に接していないのに、生徒はどのようにお互いにつながりあうことができるでしょうか。
生徒は先生たちの様子を、じつによく見ています。「あの先生とこの先生は、仲良しだ(仲が悪そう)」ということを敏感に感じとります。先生同士が仲良くないのに、子どもたちに「クラスで団結しなさい」といっても、説得力をもたないのです。
③教職は、メンタル面でストレスが高まりやすいから。
一般的にいって、メンタル面で休職に追い込まれた教師は少なからず、その直接のきっかけとして、同僚や校長・教頭との関係の悪化及び教師集団での孤立があります。
教師の場合、一般企業の労働者に比べると、「仕事や職業生活におけるストレスを相談できる相手」がいる人の割合が、約半分(45.9%)です。
一般企業の労働者の9割近く(89.0%)が「相談相手がいる」と答えたのに対して、教師のうち「相談相手がいる」と答えたのは半数にも満たない状況です。
とくに「上司・同僚に相談できる人がいる」と答えたのは、一般企業では6割以上(64.2%)いるのに対して、教師では14%しかいません。校長・教頭や同僚に相談できる相手がいないと感じている教師が約86%もいるということになります。(「教員のメンタルヘルス対策及び効果測定」東京都教職員互助会、ワエルリンクKK、2008年10月・平成14年労働者健康状況調査 厚生労働省より)
このような理由で、私は、助け合い、協力し合い、子どものことで相談しあえる職場環境づくりを重要視しているのです。
三中の現状は、教職員の職場満足度(教職員どうしの人間関係が居心地よく、満足できている度合い)が、一定程度高い状態にあると、私自身はみています。また、職場環境の大切さは折につけ教職員に話しています。
さらに、私自身が心がけ、実践していることもいくつかあります。
それは教職員から話しかけられたときは、どんなに忙しくても、どんな些細なことでも、まずは自分の手を止める、パソコンから目を離します。そして、顔をあげ、できるだけ相手の顔を見て話を聴くことです。
忙しいことが多い学校の現場ですが、忙しいのはどこも同じです。「忙しい」は、その字の通り、りっしんべんに亡くすと書きます。つまり自分の「心」を「亡」くすことです。
教職員の相談を自分にひきつけ、親身になって受けとめるようにするため、完璧ではないですが実行しています。
生徒と教師の関係でも同じです。
「あの、先生・・・」と生徒が声をかけてきたとき、作業をしながら「片手間」で生徒の話を聞くよりも、作業を中断して、書類から目を離して、生徒の方を向いてくれる先生に子どもは信頼感を寄せます。
「忙しくても、私のために時間をとってくれている」と感じる生徒は、先生のことが好きになるのです。
すべての人を大切にする学校こそが、公立学校の価値であると、私は思うのです。