小さな靴が玄関においてある
満二歳になる英子の靴だ
忘れていったまま二ケ月が過ぎていて
英子の足にもう合わない
子供はそうして次々に
新しい靴にはきかえてゆく
おとなの 疲れた靴ばかりのならぶ玄関に
小さな靴はおいてある
花を飾るより ずっと明るい
(高田敏子「小さな靴」)
高田敏子さんは、孫の英子が忘れていった靴を詩の題材にしています。
日常のありふれた出来事で、わたしたちが見過ごしてしまいそうな事実を詩にされています。
ありふれたことを詩で表し、かつ「くたびれたおとなの靴」と、見事に対比させ、愛おしい孫への情をメッセージにしています。
また、孫という言葉を使用せず、「英子」としているのは、祖母にとって、ただただかわいい子ではなく、一人の独立した人格として認めているのかもしれません。
わたしたちがありふれたことを、当たり前のこととせず、当たり前のことの中にどのような本質を見るか。このことを考えさせられる詩であると、わたしは思います。