箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

 一斉休校の影響ここにも

2020年10月07日 08時13分00秒 | 教育・子育てあれこれ
2月27日、学校の一斉休校要請が政府から発表されました。

それにより、2カ月の休校が全国で続き、その影響についてさまざまな報道がなされています。

学校にとっての影響は、授業の遅れ、学校行事の見直し、オンライン授業の必要性の高まりなどです。

児童生徒にとっては、不安やストレスを抱えていた。
保護者にとっては、親子関係が険悪になったなど、いろいろと報告されています。

ここで、もう一つ大きな影響を、私たちは知っておかなければなりません。

それは障害のある児童生徒、その保護者が一斉休校中に受けた影響です。

今回の全国一斉休業は、特別支援学校も休校要請がかけられました。

障害児がステイホームするというのは、想像以上の困難が生まれます。本人にとって酷ですし、保護者にとっても難しかったのです。

学校や特別支援学校以外に、障害児を預かる場所が「放課後等デイサービス」(以下「放課後等・・・」と表記)ですが、ここでの受け入れは困難を極めました。

この「放課後等・・・」は通常、午前中は活動の準備や会議をして、学校が終わるころ、学校へ子どもを迎えに行きます(軽度の子は自分で行ったりします)。

多くの「放課後等・・・」は非常勤職員やアルバイトの職員で支援の人員を確保しているのが現状です。

そして、さまざまな特性をもつ子の一人ひとりにあった放課後の過ごし方を提供していました。

しかし、一斉休校はそのルーティーンを大きく変えさせることになりました。

親の負担を軽減するため、多くの「放課後等・・・」が朝から子どもを預かることになりました。

厚生労働省は「放課後等・・・」が日中から子どもを預かるようにという通知を出しました。

ふだんなら、子どもの「放課後等・・・」利用は、障害の状況をみて月に何日利用するかを市町村が決めるという事前の手続きを通して、利用します。

しかし、厚労省は」それを一部省略していいという「柔軟な取扱い」を可能としたのでした。それで、現場は大きく混乱しました。

スタッフをどう確保するか、保護者と利用の日程の相談をする、家庭への送迎の問題など、調整にも時間がかかりました。

このようなたいへんさの内実が行政には把握できていなかったようです。

障害児にとってみれば、学校に登校して、下校時に「放課後等・・・」へ通い、帰宅するという日常が崩れました。

これにより生じる「日常」の変更がいかに本人にとって大きなとまどいになるか、これは教育・福祉関係者でないとわからないことです。

日常の崩れた子は、家庭で夜に家で騒いだり、食べすぎたりする子がいて、保護者もたいへんだったのです。

学校の教員も感染を避けるため、「放課後等・・・」には行きませんでした。

というよりも、平素から学校の教員が「放課後等…」に行くことは少ないという連携の問題があります。

感染の危機もあるなか、休校期間中、「放課後等・・・」は開所を行政から求められ続けました。

「放課後等・・・」は、障害のある児童生徒にとって、福祉的な居場所です。

インクルーシブ教育と言いながら、十分な制度整備ができていないという現実を、新型コロナウイルスは浮き彫りにしました。

行政からの適切な支援が強く求められます。以上のことを、全国一斉休校は問題提起したと言えます。