箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

溢れる情報のなかで

2022年07月03日 08時55分00秒 | 教育・子育てあれこれ

文科省が「教師のバトン」というツイッターのウェブサイトを立ち上げました。

近年の教員志望者の減少を受け、教職のよさを現場の教員から発信してもらい、広く知ってもらい、教師を目指す人を増やしたいというねらいでした。

しかし、寄せられる書き込みはその多くが、現役教師のたいへんさやグチ、管理職の悪口が並んでいます。

これでは、教師になるのをやめようとう学生がかえって増えることになるのではないでしょうか。

「教師のバトン」は、文科省の思惑が誤っていたということだと、わたしは思います。

そもそも、ネットにのせる情報やSNSへの書き込みは、マイナス的なものが多いからです。

実際に教職に就いて、たしかに忙しいけれども児童生徒へのかかわり、成長を見届ける喜びなどを感じている人がいても、打ち消されてしまいます。

その点で、文科省は教職の魅力を伝える手段を誤ったのです。


さて、今の若い世代のなかには、「コスパ」や「タイパ」を重視する人が多いと聞きます。

「コスパ」は、費用に対して得ることができる効果(コストパフォーマンス)であり、いわゆる「費用対効果」です。

「タイパ」とは、タイムパフォーマンスのことであり、時間をかけることに見合った効果です。

それに輪をかけるのが、ネット上に並ぶ洪水のような情報です。

この音楽がいいとか、この映画が素晴らしいとかという情報が豊富に溢れているので、情報が先に届きます。

すると、人は実際に体験してそのよさを感知するよりも、情報が作った既成事実が先になってしまい、感じることが後回しになりがちです。

また、子育てについて、子どもをもつとこれだけお金がかかるとか、成人するまで育てるのがたいへんとかいう情報に接します。

そうなると、それなら子どもをもつとしんどくなるし・・・、熟年離婚もあるのなら結婚もしなくていい。

コスパとタイパを重視する人なら、そう考えてしまっても無理のないことかもしれないと、わたしは思うのです。


音楽を聞くとき、わたしの若い頃はレコードでした。1枚のレコードを何回もすり切れるほど聞き、コスパを得てきたように思います。

それがCDにかわり、今や音楽もデジタルの ストリーミング再生になっていますが、ためにならないものは買わない、出すお金に見合う価値のないものには手をつけない。

時間も惜しいから、映画は倍速で見て楽しむ。

こんな時代です。



「失敗はしたくないよ。一度失敗すると立ち直ることができなさそう。

確実で安全な道を選んでいきたいね。」

そのように考えるのは、若い世代の責任ではないのです。

いまの社会のしくみが、そうさせていることを若い世代より年上の年齢層の人たちはわかって、少しでもみんなが生きやすいようにしていく役割があるのです。


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