(平和登校での3年生学年合唱「HEIWAの鐘」)
3月8日には、「日本対台湾」の試合が、東京ドームで行われました。じつは台湾の野球は、日本が台湾を植民地にしていた時代に伝えられました。そして、日本人が台湾野球の発展に協力してきたという歴史があります。
ですから、台湾の選手にとって、日本のプロ野球選手は目標であり、WBCで日本に勝つことは夢でした。約1世紀にわたり台湾チームは日本に「追いつき、追い越せ」を目標にしてきました。
その前に立ちはだかる日本。その名勝負は夜11時半を超えても決着がつかず、いつしか敵とか味方関係なしに、球場を一つにし、東京ドームにはウェーブが起こりました。
さて試合は台湾がリードしていました。台湾の勝利目前の9回2アウトで日本は同点に追いつきました。延長10回表、ついに逆転し、日本が勝ちました。
試合後、大喜びしている日本選手のそばで、ベンチを飛び出した台湾の選手たち。
彼らは、負けてがっかりするどころか、マウンドに集まり360度円陣を組みました。そしてスタンドの全方向の日本人の観客に深々と頭を下げました。その謙虚な態度に、観客からは惜しみない拍手が送られました。
いったい何が起こったのでしょうか。じつは、この試合の2日目に、ある一人の日本人がツイッターにこのようにつぶやいていました。
「3月8日の台湾戦を見に行かれるみなさんへ。2年前の東日本大震災で台湾は大きな支援をしてくれました。だからお礼のプラカードを書いて球場へ持っていこうよ!」
そうなのです。震災の時、台湾は世界で最も多い200億円を超える義捐金と400トンを超える支援物資を送ってくれました。さらに震災の翌日には世界のどこよりも早く救助隊を派遣してくれたのでした。
そんな台湾にお礼をしようという呼びかけに多くの観客が応えました。ドームのスタンドには感謝のメッセージや台湾をたたえる国旗があふれたのでした。
台湾の選手たちは、スタンドを見て驚きました。「これほどまでに、日本人は私たちに感謝してくれている」。試合を生中継する台湾のテレビカメラは、スタンドの映像を台湾全土に流しました。だから、試合は日本と台湾の友好を深める名勝負となったのでした。
このようないきさつで、試合後、台湾の選手たちは日本人の観客に深々と頭を下げたのです。「お礼に対してはお礼で応える」。このようにお互いを尊重し合う関係が、日本と台湾の間で築くことができたのでした。
全校生徒のみなさん、私たちは、平和を考えるとき、その対極にある戦争を思い浮かべることが多いです。そして戦争に反対することで、平和を求めようとします。
しかし、WBCでの出来事のような、国と国の友好関係でも、平和の尊さ、平和を守ることの大切さを知ることができるのです。このことを覚えておいてください。 (以上)
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この講話では、戦争に反対して、国と国の友好関係という視点で平和を希求する生徒になってほしいという台湾と日本のつながりを伝えました。
与えて恩を願わず、受けて恩を忘れず。
つまり、他者に与えた恩は見返りを求めません。でも、他者から受けた恩は忘れてはならない。大隈重信の言葉です。いま、この言葉が鮮やかに色づき出します。
このような話があるとは知りませんでした。
運よく、「みんなのブログ」を見て、
この話を聞かせていただくことができました。
ありがとうございました。
よく似た話が、日本とトルコの間にもあります。トルコの軍艦が和歌山串本沖で1890年に台風で遭難したとき、串本の人たちが身をていして助けました。それ以来、トルコはいまでも親日です。「海難1890」という映画にもなりました。恩をわすれないことって大切だと、あらためて思います。