ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

愛媛県美術館に行ってきました!!

2015-01-08 19:41:00 | 対話型鑑賞



愛媛県美術館に行ってきました(*^^*)

安田靫彦と小倉遊亀展です。

安田靫彦の作品は古事記を題材にしたものや史実を描いたものが多く、筆致が端正なところが私は好きです。
小倉遊亀の作品では径を対話で使っているので親しみがあります。この二人が師弟関係にあったことを最近になって知りました。その師弟の展覧会が開かれることを知り、ぜひみたいと思っていたところ、親しくさせていただいている鈴木さんのいる愛媛県美術館でも巡回展があることがわかり、年明け早々に松山まで足を運びました(*^^*)
しかも、鈴木さんが中学生を対象にトークをするということで、期待も一気に高まりました(^^)v
実家のある岡山から高速バスに乗り、一路松山へと向かいました。岡山から3時間かからずに松山にバス1本で行けるのは魅力です。曇天の瀬戸大橋を渡って松山に着きました。松山には昨夏車で出かけているので、バスの窓から松山の街並みを復習しながら1泊するホテルに向かいました。
ホテルも鈴木さんの紹介で美術館に近いところで1時30分開始のトークに間に合うよう徒歩で向かいました。徒歩早歩きで5分ですね。美術館に着くと、鈴木さんはすでに中学生に鑑賞についての簡単なオリエンテーションを始めておられたので、荷物をロッカーに預けて仲間に加わりました。
中学生は美術館南館で開催されている愛媛の小中学生の特選作品展を見に来た美術部の生徒たちでした。1回目のトークは10人ばかりでしたが、複数の学校の生徒のようで、互いに気を使う空気が流れ、緊張している様子でした。しかし、そのような状況であることはすでにお見通しの鈴木さんは焦ることなく対話を進めて行きました。
このような状況では生徒が挙手して発言することはまずないので、鈴木さんは、優しく、目があった生徒に名前を聞きながら、名前を呼んで話を聞き出していました。ここで大事なのが、名前を聞き、名前を呼ぶことだと思います。そうすることで、ナビと鑑賞者にわずかですが親近感がわくと思います。その親近感が、鑑賞者に発言しやすい空気を生むと思うのです。中学生の緊張感はなかなかほぐれませんが、ポツポツと語る中身は充実していました。
みていた作品は、小倉遊亀の摺針峠という作品です。2双の屏風で、右側に僧侶と思わしき男性の姿、左に老婆のような人物が描かれています。
右の人物からみていきましたが、表情や着ているもの、身につけているものをみて、深く考えていました。「荷物を背負っているので旅の途中ではないか?」「着物の裾の広がり方から、かなり速足で歩いているのではないか?」「帽子(笠)を取って、左側の人をよく見ようとしている」などの意見をもとに、右側の人物の表情に注目し、目元や眉間の様子から、「怒っている」「にらんでいる」「いぶかしんでいる」などの発言が出ました。そして、その表情のもとになっているのは左側の人物との関係によるものではないかという意見が出てきたので、左の人物についてもみるように促されました。
ここで、すごいと思ったのは、左側の人物の周りが大きくぼわあっと丸く囲むように白くなっているのを生徒が見つけたことです。そして、その発言から、この人は生きている生身の人間ではなく、なにか霊的な存在なのではないかという解釈が行われたことです。私もこの作品の制作由来を知らなかったので、後から、滋賀にある摺針峠の伝説にもとづく作品であることがわかりましたが、何の情報も持たない生徒たちが、白く丸く囲まれた中にいる老婆を、何か近寄りがたい、荘厳な存在として感じたこと、それを意見として発言したことに感動しました。
最後に鈴木さんがこの作品のタイトルを明かし、興味のある人は「摺針峠」をインターネットで検索してみてくださいと話されました。このあと何人の生徒が検索したのかちょっと興味のある所ではあります。
この後、参加していた女生徒3名にインタビューをしてみました。
「この鑑賞法は初めて?」
3人とも「2回目です。」
「1回目はどこで?学校?」
3人とも「前に、この美術館であったワークショップで参加しました。」
「この鑑賞は楽しい?」
3人とも「はい。楽しいです。」
「でも、手を挙げて発言するのは、ちょっと、恥ずかしい?」
3人とも、うなずく。
「学校でも、やったことある?」
3人とも「ないです。」
「そう、ありがとう。」
といった感じでした。初めて参加した時に楽しかったから2回目の参加でも、当てられると、しっかり意見が言えていたのではないかと思いました。一人だけ挙手して発言した女子生徒がいたのも、よいことだと思いました。楽しいと感じる生徒がいるので、愛媛でも学校現場でこの対話型鑑賞が広まっていくといいと思いました。課題は島根も愛媛も一緒なのだと思いました。
2回目の鑑賞も1回目と同じ作品で行われました。参加生徒は男女半々くらいの割合で、やはり10名くらいでした。
同じ作品なのに、メンバーが違うと見方が変わります。それは当たり前のことなのだけど、違いを受け入れて、前のグループと比べずにナビするのはちょっと難しかったりします。また、ナビの対話の流れについての構想が強すぎると、対話の流れをみるより自分の構想に流れを持っていこうとしてしまうという危険性もあります。そういうデリケートな部分を踏まえながら、鑑賞者サイドに立ってナビできるかが、ナビの肝だと思います。そういった面において、2回目は、やや見方の流れを仕向けすぎた(ほんのちょっとなのですけど)感があったのではないかと感じました。確かに2双の屏風なので右側、左側とみて、両方を見るのがセオリーだと思うのですが、そこにこだわりすぎないことも大事だと思います。鑑賞者が屏風の左右の関係性を意識せずに双方について発言しているのなら、わざわざ、右・左と区切る必要はないでしょうし、逆に「この屏風は左右2枚に分かれているのですが、両方に描かれているものは別々のものではなく、関係があると考えてくれました。」などとパラフレーズして、左右の関係性を意識しながらみることを促す方法もあったのではないかと思いました。しかし、生徒は真剣に作品をみて、何かを考えていたからこそ、当てられた時に、ちゃんと自分の意見を言うことができたのだと思います。そして、願わくば、回数を重ねることで、仲間の意見をもとにしながら自分の意見を構築していくことができるようになるといいと思いました。そういう可能性をどの生徒も秘めていたので、1回で終わるのがとても残念な気がしました。

2回の対話型鑑賞を参観して思ったことは、やはり「情報」提供のタイミングです。鈴木さんは「教えない」ナビを徹底することを自分に課していると言われていました。確かに鑑賞者が自力で考えて、自分なりの解釈を構築することで「学び」の主体とするという考え方に共感しますし、それが何よりこの鑑賞法の優れたところであると捉えています。「積極的に教えることはしない」ことには同感です。しかし、思考が深まるための「情報」の提供はあったほうがよいと考えます。それは、鈴木さんも同様に考えておられて、やはり「情報」提供のタイミングの難しさを痛感しているようでした。参観者になって客観的に場の流れをみることができる時には、「今だ!!」というタイミングがわかるのですが、ナビをしながら、鑑賞者の発言をパラフレーズしたり、サマライズしたりしていると、一瞬のタイミングを逃してしまうことはしばしばです。そして、それ以上の絶妙のタイミングは二度と訪れないことも・・・。後悔先に立たずと言いますが、タイミングを逃した後悔は、まさに、悔やんでも悔やみきれないものです。そのことについては、鑑賞会後に、鈴木さんと話しても話し足りない話題でした。

鑑賞後のMTGに夢中になり、気が付けば閉館時間が迫っていました。コレクション室や、えひめこども美術展(小中学生の図工・美術作品展)もみたいと思っていたのですが、時間切れ!!明日の午前中に再来館することにしました。また、明日の午前中も中学生を対象に鈴木さんがトークをされるということなので、そちらにも参加して、帰路につこうと思いました。
鈴木さんの勤務が終わるのを待って、一緒に夕食を取ることになりました。鈴木さんのお気に入りのお好み焼き屋さんでした。大きなカウンターが鉄板台になっていて、マスターがお好み焼きやモダン焼きを焼いてくれるそうです。常連の鈴木さんは「お任せで!!」とマスターに丸投げし、マスターも「お任せね!!」と言って、サラダとお好み焼き1種、焼きそば1種とクレープのようなスイーツお好み焼きを〆に焼いてくださって、お腹はもうパンパンになりました。しかも超美味!!でも、美味しいものをみると理性を失ってしまう私は、料理の画像を撮ることも忘れてご馳走に食らいついていました・・・。(なんて賤しいのでしょう・・・。)画像がなくてごめんなさい。
美味しい食事を共にしながら、鈴木さんとたくさんお話をすることができたのも、遠路松山まで出かけての大きな収穫でした。昨秋、島根に来県してくださった時には自分の研究授業のことでもちきりで、満足なおもてなしもできず、お話も中途半端で、心残りだったので、今回、差し向かいで、オープンマインドで話ができたことで、点と点をつなぐ糸が、少しはワイヤーに近づいたのではないでしょうか???
アルコールも飲まずに鈴木さんは私をホテルまで車で送ってくださり、家路につかれました。明日のトークも楽しみに「おやすみなさい」と別れました。
こうして、松山の1日目は終わりました・・・。2日目にも乞うご期待!!!
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