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宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

傾いた軌道の小惑星は、小サイズの天体が少なめ

2013年11月15日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡による400個以上の小惑星観測から、
軌道が大きく傾いた小惑星は、小型のものが少ない傾向であることが分かりました。

どうやら、天体同志の衝突が高速で起こる環境ほど、大きな天体の方が小さいものに比べて生き残りやすいようです。

小惑星帯の天体の軌道。 多くは惑星とほぼ同じ面上にあるが、大きく傾いたものもある。

火星軌道と木星軌道の間に密集する小惑星の多くは、地球などの惑星と同様に、黄道面に沿った円形に近い軌道を持ちます。

でも、かつて木星ができたばかりのころ、その強い重力により多くの小天体の軌道が、黄道面から大きく傾き互いに高速で衝突していました。

小惑星の検出画像。 20分感覚で撮った2画像(左) から移動天体(右)を抽出する。

小惑星は衝突を繰り返すことで、「どのサイズの天体が、どれだけの数存在するか」っという分布が絶え間なく変化(衝突進化)してきました。
ある程度サイズの大きい天体の場合には、「大きければ大きいほど壊れにくい」という特性(強度特性)があり、これが衝突進化のプロセスに大きく影響します。

こうした強度特性と衝突進化の関連を探るため、すばる望遠鏡の主焦点カメラを用いた観測で、黄道面に対する傾きが大きい軌道(軌道傾斜角が大きい)を持つ小惑星441個を検出し、さらにそのサイズ分布が求められました。







観測された小惑星のサイズ分布。





その結果、黄道面近くの小惑星に比べて、軌道が傾いている小惑星には小さな天体が少ないことが、明らかになったんですねー

これは、軌道傾斜角が大きい小惑星で起こるような高速衝突において、「小さな天体は大きな天体よりも、破壊されやすい」という傾向がより顕著になるという小惑星の性質を示しています。

誕生間もない木星が、小惑星の軌道を乱すことで高速衝突が頻発した時代には、大きな小惑星は現在よりも破壊を逃れて、生き残りやすい環境だったと想像できます。

小惑星の強度特性が、衝突特性によって変化することが分かった今回の観測を皮切りに、今後さまざまな研究で衝突速度と強度特性の関係が明らかになっていくと期待されているんですねー

それにより、太陽やそれ以外の恒星の周囲における、小天体や惑星の形成進化の過程に迫ることができるようですよ。