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アトラスVロケット、磁気圏観測衛星“MMS”の打ち上げに成功

2015年04月06日 | 地球の観測
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社が、
磁気圏観測衛星“MMS”を搭載した、アトラスVロケットの打ち上げに成功したんですねー

ロケットは3月12日、ケープ・カナベラル空軍ステーションを離昇。
順調に飛行し、1時間30分後から4機の衛星が5分おきの間隔で分離され、軌道に投入されました。

“MMS”はNASAのゴダード宇宙飛行センターで開発。
4機の衛星で構成され、地球を取り巻く磁気圏を観測することを目指しています。

観測は4機の同型の衛星が、
正四面体を形作るような編隊で飛行して行われることになります。

1機あたりは平べったい八角柱のような形をしていて、搭載している観測機器などは同じなんですねー

直径は約3.4メートル、1機あたりの全高は約1.2メートルで、打ち上げ時の質量は1360キロ。
自ら回転することで姿勢を安定させる、スピン安定方式を採用しています。

軌道は大きく2種類が計画されていて、
まず最初の1年半の間は、近地点高度2550キロ、
遠地点高度7万0080キロの軌道を回り、
その後の半年間は、遠地点高度を15万2900キロまで上げて運用される予定です。


ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社は、
ロッキード・マーティン社とボーイング社の共同出資で設立された、
ロケット運用会社です。

なので、今回打ち上げに使われたアトラスVロケット(ロッキード・マーティン社開発)と、
デルタIVロケット(ボーイング社開発)とは共に、同社が運用しています。

アトラスVロケットは今回を含め、これまでに53機が打ち上げられていて、
2007年に一度、予定より低い軌道に衛星を投入してしまった以外は、
安定した成功を続けています。

今回の打ち上げに使われたのは、アトラスV 421と呼ばれる構成。

これは、フェアリングの直径が4メートル、固体ロケットブースターを2基装備し、
セントール上段にRL10エンジンが1基、ということを示しているんですねー

アトラスVロケットの第1段には、
ロシアのNPOエネルゴマシュ社が製造したRD-180エンジンが使われていて、
このエンジンを巡ってはアメリカ国内、またロシア側からも、
その使用や輸出に関して揉めている状況が続いています。

ロシアのロゴージン副主相は、
軍事衛星の打ち上げに、ロシア製エンジンの使用を禁止することも匂わせています。
なので今後、軍事衛星の打ち上げにアトラスVロケットが使えなくなる可能性も…

ただ、ロゴージン副主相の発言後もRD-180は定期的に輸出されているので、
差し迫った状況にはないのですが、
現在アメリカでは、国産代替エンジンを開発する動きが始まっています。


今回のアトラスVロケットの第2段には、RL10Aロケットエンジンが使用されました。

RL10はアメリカで50年以上使われ続けているロケットエンジンのシーリーズで、
これまで数多くの人工衛星や惑星探査機などを、打ち上げ続けてきた傑作エンジンでもあるんですねー

推進剤には液体水素と液体酸素が用いられ、複数回点火できる能力を持ち、
衛星をさまざまな軌道に、かつ正確に送り込むことができます。

また前回、前々回の打ち上げでは、RL10Aより新しいRL10C-1と呼ばれるエンジンが使用されています。

RL10C-1は、
デルタIVロケット向けに生産されたものの在庫が余ってしまったRL10Bエンジンを、
アトラスVロケットで使用できるように改造したモノ。

例えば炭素繊維強化炭素複合材料を使ったノズルや、燃焼室やインジェクターなどは、
RL10Bのものが使われています。

一方、ターボ・ポンプはRL10Aのものが用いられ、
また、RL10AにあってRL10Bにはない、
点火システムの冗長化や、推進剤の混合比率を制御するための電子機器の搭載といった、
改造も施されています。

RL10Cはいわば、RL10AとRL10Bを混ぜ合わせたようなエンジンで、
軌道上で運用できる時間も、従来の720秒から2000秒まで、3倍弱にまで向上しています。

なおアトラスVロケットには、第2段にエンジンを2基並べて搭載する“xx2”構成があります。

でも、RL10C-1はノズルの直径が大きいので、並べて搭載することが出来ないんですねー
なので、“xx2”構成のアトラスVロケットは、今後もRL10Aを使い続けることになります。

また、RL10C-1をさらにデルタIVロケット向けに改造したRL10C-2も開発中で、
数年のうちにデビューするそうですよ。