宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

情報収集衛星光学5号機の打ち上げに成功 H-IIAロケット

2015年04月28日 | 地球の観測
三菱重工とJAXAが、
情報収集衛星光学5号機を搭載したH-IIAロケットの打ち上げに成功しました。

H-IIAは今回が28機目の打ち上げ。

6号機の失敗後、7号機からは22機連続での成功で、
昨年10月から約2か月おきに4機という、
ひじょうに短い間隔での連続成功にもなったんですねー


ロケットは種子島宇宙センターから離昇。

ただ、情報収集衛星の打ち上げなので、
事前に飛行プロファイルなどは公表されず、
打ち上げの中継も行われませんでした。

JAXAから打ち上げ成功の発表はあったのですが、衛星の分離時刻も公表は無し。

太陽同期軌道への打ち上げだったので、
おそらく離昇からおよそ16分後あたりで分離されたものと思われます。

また、アメリア戦略軍が運用する宇宙監視ネットワークが、今回の打ち上げで、3つの物体が軌道に乗ったことを確認しています。

1つは光学5号機、もう1つはH-IIAの第2段と考えられ、
3つ目の物体は何らかのデブリだと思われるのですが、詳細は不明なんですねー


情報収集衛星5号機は、三菱電機が製造を担当した衛星です。

運用は内閣衛星情報センターが行い、
日本の安全保障や、災害時の状況把握に活用するので、
地表の撮影を行うことを目的にしています。

情報収集衛星には、
電子光学センサー(高性能なデジタルカメラ)で、地表を撮影する“光学衛星”と、
合成開口レーダーを使って地表を撮影する“レーダー衛星”の2種類があります。

“光学衛星”は、“レーダー衛星”より地上の物体を細かく見分けられるのが特徴。
ただ、撮影したい地域が夜だったり、上空に雲がかかっていたりすると、
撮影できないんですねー

一方で“レーダー衛星”は、物体を見分ける能力は“光学衛星”より劣るのですが、
夜間や天候が悪くても撮影することが出来るという特徴があります。


情報収集衛星の寸法や性能などは、これまで明らかにされたことはなく、
今回打ち上げられた光学5号も同様でした。

ただ、搭載している電子光学センサーの分解能は、
地表を非常に細かく見ることが出来る性能を持っているようです。

その性能は、最大分解能30センチから40センチ。

これはアメリカの民間企業ディジタルグローブ社が運用する、
商業用の地球観測衛星“ワールドヴェブ3”に匹敵する数値なんですねー

情報収集衛星は、
1998年の北朝鮮によるテポドンの発射実験を契機に導入が決定。

光学衛星2機とレーダー衛星2機の4機を1セットとして、
運用することを目指して構築が始まりました。

この4機で1セット体制により、
地球上のある地点を、1日に最低1回撮影することが可能になります。

2003年3月に光学1号機とレーダー1号機が同時に打ち上げられたのですが、
同年11月の光学2号機とレーダー2号機が、ロケットの打ち上げ失敗で失われることに…

以来、打ち上げは2機同時ではなく、
実運用機に関しては1機ずつ打ち上げられることになり、
2006年に光学2号機が、2007年にはレーダー2号機が、
それぞれ改めて打ち上げられます。

でも、レーダー1号機と2号機は共に、
故障によって設計寿命より早く運用を終えたそうです。

その後、2009年に光学3号機が、また2011年に光学4号機とレーダー3号機、
そして2013年レーダー4号機が打ち上げられ、
当初の予定から約10年遅れで、ようやく4機体制が揃うことになりました。

これらの衛星は、
第1世代の光学、レーダーの1号、2号機よりも性能は向上しているそうです。

またこれら以外に、将来的に打ち上げられる衛星の技術実証機として、
2007年のレーダー2号機と一緒に“光学3号機実証衛星”が、
また2013年のレーダー4号機と一緒に“光学5号機実証衛星”が、
それぞれ打ち上げられています。

今回内地上げられた光学5号機には、
この光学5号機実証衛星の成果が、盛り込まれているはずなんですねー

現在運用されているのは光学3号機と光学4号機、レーダー3号機とレーダー4号機、
そして、光学5号機実証衛星、レーダー予備機の5機。
そこに今回打ち上げられた光学5号機が加わることになります。

ただ、光学3号機は設計寿命を越えた運用、
さらに、光学5号機実証衛星も近々設計寿命を越えるので、
どこまで運用が続けられるのかは微妙なようです。


H-IIAロケットは昨年10月の“ひまわり8号”の打ち上げから、
12月の“はやぶさ2”、2月の情報収集衛星レーダー予備機と、
約2か月おきという、H-IIAにとってはひじょうに短い間隔での打ち上げを続けています。

次のH-IIAの打ち上げ日時はまだ決まっていませんが、
2015年中にはカナダ テルスター社の通信衛星“テススター12V”と、
X線天文衛星“ASTRO-H”が打ち上げられるそうです。