宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

銀河中心ブラックホールが大量の物質を吹き飛ばしていた

2015年04月27日 | 宇宙 space
銀河中心の巨大質量ブラックホールからの強い放射圧が、
銀河スケールでの大量の物質流出を引き起こす原因だったことが、
23.5光年彼方の銀河を観測することで分かってきました。
おおぐま座の銀河“IRAS F11119+3257”

天の川銀河の比較的近くにある銀河の中には、
1年間に太陽1000個分もの質量のガスやチリを、銀河の中心から宇宙空間へ放出しているものがあります。

そして、この大量の物質放出が、
どうして起こっているのかは長年の謎だったんですねー

今回の研究では、
23.5億光年彼方の銀河にある“活動銀河核風”と“銀河スケールでの物質放出”を観測し、
物質流出が銀河核風により起こっていることを示しています。

研究対象になった“おおぐま座”の銀河“IRAS F11119+3257”は、
“活動銀河核”を持つこと、また活発に星を生み出していることが知られています。

“活動銀河核”とは、銀河の中心にある超大質量ブラックホールが、
周囲にある大量の物質を飲み込むことによって、
その近辺からX線や可視光などの強い電磁波を放つ天体です。
超大質量ブラックホールの周辺では、
重力で集められた物質同士の摩擦で高温となり、
強烈な電磁波が放射される。
その放射圧によって物質が押し出され、
周囲の物質とぶつかったところで、
活発な星形成活動が起こっていると考えられる。

放射圧とは、可視光やX線などの電磁波が物を押す圧力です。

この研究では、“活動銀河核”からの電磁波による強力な放射圧が、
銀河中心から物質を押し出す“活動銀河核風”をX線天文衛星“すざく”で観測。

また、ヨーロッパ宇宙機関の赤外線天文衛星“ハーシェル”では、
銀河スケールでの物質の流出を観測しています。

その結果、“活動銀河核風”のエネルギーは、
物質流出を起こすのに十分であることが分かったんですねー

1つの銀河で“活動銀河核風”と物質流出の両方が観測されたのは今回が初めて。
これらに関連性があるという証拠も、初めて示されることになります。


銀河スケールの物質流出は“活動銀河核風”ではなく、
活発な星形成活動によって起こるという仮説もあります。

でも、星形成活動だけではエネルギーが足りず、観測結果を説明できませんでした。

観測対象となった銀河は、
2つの銀河同士が衝突して、1つの銀河になろうとしている最中のようです。

銀河同士の衝突が引き金となって、中心の巨大ブラックホールへ大量の物質が送り込まれ、
ブラックホールが活発になって巨大なエネルギーが放射。
その結果として、銀河スケールの物質流出が起こっているのだと考えられています。

シミュレーションによれば、
このような銀河は、やがて中心付近のガスやチリが散逸。

そして、埋もれていた“活動銀河核”の光が輝きだす“クエーサー”に進化するそうですよ。
銀河中心部で星間物質に埋もれた“活動銀河核”が、
“クエーサー”として輝くまでの進化(イメージ図)。