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NASAの地球観測衛星“SMAP” レーダー機器回復せず復旧を断念…

2015年09月11日 | 地球の観測
今年の7月に不具合が発生した、
地球観測衛星“SMAP”のレーダー観測機器ですが、
NASA・ジェット推進研究所(JPL)から復旧を断念することが、
発表されました。

ただ、もう1つの主要な観測機器である放射計は正常なので、
衛星の運用は今後も続けられることになります。

原因は電源の問題

この問題が発生したのは今年の7月7日。

“SMAP”に搭載されている観測機器の1つである、
合成開口レーダーに何らかの問題が発生し、動かせない状態に陥りました。

NASAのジェット推進研究所では対策チームを編成し、
問題の解決にあたっていたんですねー

そして、これまでに得られた衛星の状態を示す信号“テレメトリー”の分析で、
レーダーのパルスの出力を強くするための装置“HPA”の低電圧電源に、
問題がある可能性が高いことが分かります。

対策チームでは、地上にある予備の部品なども使い調査や試験を繰り返し、
そのデータから復旧が試みられるのですが、すべて失敗に終ることに…

考えられうるすべての手段を使い果たしたことから、
復旧は断念されることになります。


地球の水分を観測する衛星

“SMAP”は、NASAのジェット推進研究所が運用する地球観測衛星です。

今年の1月31日にデルタIIロケットにより打ち上げられ、地球全体の土壌に含まれる水分と、
凍結している箇所の融解具合を観測することを目的としています。

得られたデータは、
天気予報や気候変動の予測改善、洪水や干ばつなど災害の予防、
農業の生産性向上といったことに役立てられることになります。

そして“SMAP”は直径6メートルの傘のようなアンテナを持ち、
ユニークな姿をしているんですねー

このアンテナは、
合成開口レーダーと放射計、2種類の装置の目と耳として、
機能することになります。

合成開口レーダーとは、
電磁波を地上に向けて照射し、反射して衛星に返ってきた信号を分析する観測装置で、
放射計は地表から出る電磁波放射を計測する装置になります。

合成開口レーダーは壊れたものの、
もう1つの観測機器になる放射計は問題なく動いていて、
現在もデータを集め続けているんですねー

これまでに集められた土壌の水分データの最初のセットは、
9月末には公開される予定になっています。

またNASAでは、今回の問題に対する包括的なレビューを行い、
将来の他のミッションで、同様の問題が起こらないようにするそうです。
さらに別の調査チームも編成するとしています。


観測は始まったばかり

“SMAP”という名前は、
Soil Moisture Active Passive(土に含まれる水分を能動的、受動的に観測)の
頭文字から取られています。

もともとNASAで開発されていた“ESSPハイドロス”という衛星が、
基になっているんですねー

ただ“ESSPハイドロス”は、2005年にNASAの予算削減が原因で中止されることに…
その遺産を活用して組み立てられたのが“SMAP”になります。

打ち上げ時の質量は944キロで、
高度685キロ×685キロ、軌道傾斜角98.1度の太陽同期軌道で運用され、
8日ごとに同じ上空を通過しています。

予定されている設計寿命は3年。

レーダーを失ったことで、
計画されたデータ収集に、いくらかの影響は出てしまうのですが、
地球のシステムを理解するための貴重な科学成果を生み出してくれるはずです。


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