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エンケラドスの地下には衛星全体に広がる海がある!?

2015年09月28日 | 土星の探査
表面を氷の地殻で覆われた土星の衛星エンケラドス。

今回、探査機“カッシーニ”の観測により、
この地殻の下に、全球的な規模の海が広がっていることが、
分かってきたんですねー
エンケラドスの直径は500キロ。氷の外殻の下には全球を覆う海があり、
南極の“タイガーストラップ(虎縞)”と呼ばれる地形(画像左側)から、
海水が噴出しているのが確認されている。
こうした海は、地球外生命体探査の重要な候補になる。


大きくふらついているエンケラドス

土星の衛星エンケラドスの南極からは、水蒸気や氷が間欠的に噴き出しているので、
氷の地殻の下に水が存在することが分かっています。

これまで、その水は南極付近に部分的に存在すると推測されていました。

今回の研究では、
NASAの探査機“カッシーニ”が撮影したエンケラドスの画像7年分を人力で分析。

クレーターなど地形の位置について慎重に地図を作成し、
エンケラドスの動きを正確に測定しています。

そして発見したのが、
エンケラドスが土星の周りを公転しながら、わずかにふらついていることでした。

このふらつきは非常に小さなものなんですが、
表面から核まで完全に固体であるような衛星のふらつきとしては、
大きすぎるんですねー

表面と核が強固につながっていたら、
核がおもりになるので、ふらつきは観測よりずっと小さくなるはずです。

今回の観測結果をうまく説明するには、
表面と核の間に、全体を覆う液体の層があると考える必要があるようです。

そう、エンケラドスの外殻は、全球を覆う液体に浮いている状態なんですね。
“エンケラドス”の海。“カッシーニ”が撮影した画像7年分以上を分析した結果、
エンケラドスの氷の外殻と岩石からなる核の間に、全球を覆う液体の海があることが分かった。


地球外生命の探査

エンケラドスには間欠泉があり、
宇宙空間に向かって塩水と有機分子を噴き出しています。

この現象をプルームといい、2005年にカッシーニが初めて発見して以来、
エンケラドスは「宇宙生物学者が行ってみたい場所ランキング」の上位にあるんですねー

それは、宇宙生物学者が探しているのが、
化学物質を豊富に含み、長い年月にわたって存在していると考えられる、
液体の水からなる海だからです。

そう、そこに生命が誕生しているかもしれないんですねー

ところが、エンケラドスについては、プルームこそ確認されているものの、
それが長い年月にわたって存在している海に由来している証拠は、
ほとんど得られていませんでした。

初期の理論では、
「おそらく衝突によって形成された局所的な小さい海がある」と、
考えられていました。

でも、そのような海は新しすぎて、生命が誕生しているとは考えにくくなります。

今回の研究結果のように、
エンケラドスの海が全球を覆っているのなら、
海は、長期にわたって安定的に存在することができるので、
微生物が誕生している可能性が出てきます。

全球を覆うほどの海を、
一時的な現象として説明するのは困難なので、
生命が誕生している可能性にとって、プラスの材料になるということです。


謎の多い天体

エンケラドスの他にも、
氷の外殻の下に海の層がある天体は、いくつか知られています。

たとえば、木星の衛星エウロパやガニメデは、
木星や他の巨大衛星の重力の影響で発生する熱により、
内部の海が液体の状態を保っていられることが分かっています。

一方、土星のエンケラドスはと言うと、未知の部分が多いんですねー

海の深さや、海が液体でいられるための熱の発生要因、
そして南極の氷の外殻だけが、間欠泉が噴出するほど薄くなっている理由も、
分かっていません。

南半球の海底だけが活動しているとか、
土星の重力による潮汐作用で、これまで考えられていた以上の熱が発生している、
という説が考えられます。

エンケラドスの海と、その下の惑星物理学的活動をめぐるこの謎は、
氷の外殻によって覆い隠されているということですね。


“カッシーニ”の今後の探査計画

“カッシーニ”による衛星への接近通過“フライバイ”は、
あと数回で終わりを迎えることになります。

そのなかで注目されるのが、
地質学的に活発な活動を見せているエンケラドスです。

エンケラドスには、
今年の10月14日と28日、さらに12月19日にフライバイを行う予定で、
10月28日のフライバイでは、エンケラドスの上空49キロまで接近。

表面のひび割れから間欠泉のように噴出する、
氷の粒子や水蒸気の中へ飛び込むように飛行するんですねー

これにより、エンケラドスの地下で何が起こっているのか?
を調べることになっています。

その後“カッシーニ”は、大きな衛星を遠くから数回観測し、
ダフニエ、テレスト、エビメテウス、アイガイオンなど、
いびつな形をした小衛星20個あまりを撮影。

そして2017年、
“グランドフィナーレ”と呼ばれる最後の1年間では、
土星の本体とその環の間を何度か繰り返し飛行する予定です。

そして、最後には土星に突入する予定になっているので、
今後も新たな情報をもたらしてくれるはずです。


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100億年前の宇宙に発見! 突然星を作らなくなった“マエストロ”銀河

2015年09月28日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡による大規模な輝線銀河の探査から、
100億年前の宇宙に「星の生成がとまりつつある」大質量銀河が発見されました。

多数の超新星爆発によって起こる銀河嵐が原因で、
星生成が止まることがあります。

今回の発見は、その銀河嵐を示唆するもので、
銀河進化の全体像を理解するうえで大きな成果になるそうです。


星を作るのを止めつつある銀河

多くの楕円銀河や、
天の川銀河のような大型の渦巻銀河などの大質量銀河では、
100億年以上前に誕生した古い星々が大半を占めています。

宇宙年齢が30億歳の頃までは、
銀河で活発な星生成が行われていたことが観測から明らかになっていて、
大質量銀河もそうだと考えられています。

でも、約100億年前に突然星を作らなくなったんですねー

この“星生成抑制問題”を解決するには、
星を作るのを「止めつつある」銀河を見つけ、
何が起こっているかを、明らかにする必要があります。


矛盾した性質を持つ“マエストロ銀河”

今回の研究では、
すばる望遠鏡を用いた撮像サーベイ観測で銀河を探査しています。

多数のフィルターを用いて、
奥行き方向16億光年にもわたる広範囲を探査した結果、
不思議な性質を示す銀河を見つけます。

“マエストロ銀河”と名付けられた、これら6個の大質量銀河には、
ライマンα輝線が異常に強いという特徴がありました。

ライマンα輝線は、銀河で作られた大質量星からの紫外線で、
電離した水素ガスが放つスペクトル線です。

ただ“マエストロ銀河”では、
比較的古い年齢の星の割合が高く大質量星が少ないとう、
矛盾した性質も見られています。
星生成を止めつつある“マエストロ銀河”の例。
青は電離ガス(ライマンα輝線)、緑は若い星、赤は古い星からの光を表す。
図中の横棒は10万光年。


超新星爆発と銀河嵐

この性質は、“マエストロ銀河”が「活発な星生成が止まった直後」か、
「星生成は続いているが、星生成率が急激に減少している最中」である、
可能性を示唆するもの。

その期間は数千万年程度とみられ、
銀河の歴史においては一瞬ともいえる短いフェーズをとらえた、
非常に重要な発見なんですねー

“マエストロ銀河”で星生成が終りかけているということは、
それまでに誕生した多数の大質量星が、
既に超新星爆発を起こしたと考えることができます。

多数の超新星爆発によって、銀河本体から風が吹き出すように逃げる、
“スーパーウインド(銀河嵐)”と呼ばれる現象が起こり、
銀河中のガスが外に押し出されることになります。

この衝撃で水素ガスが電離され強いライマンα輝線が放射され、
一方で星の材料となるガスが失われ、星生成が止まると考えれば、
矛盾したように見える性質も、上手く説明できます。

この解釈は、
ライマンα輝線が“マエストロ銀河”を取り巻くように拡がっている、
という観測結果とも一致しています。
銀河が“星生成銀河”から“マエストロ銀河”を経て、
“パッシブ銀河(星生成をしていない銀河)”へ進化する様子。


大質量銀河の進化過程

大質量銀河では、生まれてから10億年ほど活発な星生成を行い、
誕生した大質量星が寿命を迎えると、超新星爆発で銀河風が発生します。

この銀河風により、ガスが銀河外に噴出されて星生成が止まり(マエストロ銀河)、
その後には小質量の星が残り、現在の宇宙で観測される楕円銀河などになる、
という進化が、今回の研究から見えてきましたね。