すがる望遠鏡には一度に広い天域を撮影できるデジタルカメラ、超広視野主焦点カメラ“ハイパー・シュプリーム・カム(Hyper Suprime-Cam:HSC)”が搭載されています。
この“HSC”を用いた渦巻銀河“M81”周囲の広域観測により、若い星の集団が銀河の周りに広く分布している様子などがとらえられたんですねー
若い星々は、隣の銀河との強い重力相互作用によって引き離されたガスの中で生まれ、“M81”の周りを漂っていると考えられています。
大型銀河と衛星銀河
おおぐま座の北斗七星の近くにある美しい渦巻銀河が“M81”です。
地球から約1200万光年と近いところにあるので、大きく見え、天文ファンの人気が高く、研究者にとっても格好の観測対象になっています。
“M81”を大型望遠鏡や宇宙望遠鏡で撮影すると、銀河の周囲を取り巻くハロー構造に含まれる星を1つ1つ分解することができます。
今回の研究では、直径1.5度(満月3個分)の広い視野を誇るすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“HSC”を使用し、“M81”のハローと周囲の衛星銀河を包括的に調べる“M81銀河考古学”プロジェクトをスタートさせています。
“HSC”を使って、天の川銀河やアンドロメダ座大銀河が含まれる“局部銀河群”以外の銀河群に属する大型銀河を観測するのは初めてのこと。
2015年1月には、“M81”とそれに付随する“M82”や“NGC 3077”など、衛星銀河の詳細な姿をとらえることに成功しています。
銀河の重力相互作用
研究では、画像中の個々の星を色と光度で分類し、若い主系列星と年老いた赤色巨星それぞれの“分布図”を作成。
すると、年齢が1億年未満の若い主系列星の空間分布図では、“M81”や“M82”、“NGC 3077”それぞれの銀河の外側に、多くの若い星の集団があることが初めて明らかになります。
さらに、“M81”と“NGC 3077”をつなぐ“恒星ストリーム”も見つかることに…
どの集団も明るさの分布が等しく、中性水素ガスの分布とほぼ同じ場所にあるんですねー
なので、この空間分布は約2億年前に起こったとされる3つの銀河の重力相互作用によって“M81”から大量のガス塊が引きちぎられ、そのガスの中で星の集団が同時多発的に生まれて出来たと考えられます。
一方、10億年以上昔に生まれた赤色巨星は、3つの銀河のハローが重なり合うように広範囲になめらかに分布していることが分かります。
“M82”のハローの外側にある星は、他の2銀河のハローよりも平均的に重元素が少ないことも分かることに。
また、若い星の分布図では見えていなかった、別の3つの矮小銀河(IKN、BK5N、KDG61)が確認でき、これらの矮小銀河には古い星しか存在しないことも分かりました。
銀河考古学
天の川銀河や“M81”のような大きな銀河は、小さな銀河が重力相互作用で合体することで大きく成長していったと考えられています。
大きな銀河の周りには、取り込まれずに生き残った衛星銀河や、衛星銀河が大型銀河の潮汐力で引きちぎられて星が帯状に分布した“恒星ストリーム”などが、多く存在すると予測されていて、実際に天の川銀河や230万光年彼方のアンドロメダ座大銀河の周辺からは見つかってきています。
こうした衛星銀河や“恒星ストリーム”、銀河周辺の複雑なハロー構造を観測し、星の年齢や成分を調べて、大きな銀河本体の歴史をひも解く“銀河考古学”研究が、
発展してきています。
でも、地球からおよそ500万光年以上の距離ある“局部銀河群”の外では、これまで観測が困難でした。
それは銀河を星に分解するには、大型望遠鏡の高解像度と大集光力を欠かすことが出来ないからです。
ただ、大型望遠鏡のカメラは視野に限りがあり、大きな銀河の周辺構造全体をくまなく精密に調べることは非常に難しいことに…
っと言うわけで、大口径のすばる望遠鏡に超広視野主焦点カメラ“HSC”が搭載されたことは、“銀河考古学”にはなくてはならない組み合わせになるんですねー
“HSC”の完成によって、天の川銀河、アンドロメダ座大銀河に続く3例目の“銀河考古学”として、初めて“M81”周辺部の構造を広範囲にわたって詳しく調べることが出来ました。
すばる望遠鏡“戦略枠プログラム”で進行中のHSC広視野サーベイを用いた天の川銀河の研究と合わせて、大型銀河の過去の形成過程にどれだけ迫れるのかが楽しみですね。
こちらの記事もどうぞ ⇒ 理論予測と異なる? アンドロメダ座大銀河のダークマター分布
この“HSC”を用いた渦巻銀河“M81”周囲の広域観測により、若い星の集団が銀河の周りに広く分布している様子などがとらえられたんですねー
若い星々は、隣の銀河との強い重力相互作用によって引き離されたガスの中で生まれ、“M81”の周りを漂っていると考えられています。
大型銀河と衛星銀河
おおぐま座の北斗七星の近くにある美しい渦巻銀河が“M81”です。
地球から約1200万光年と近いところにあるので、大きく見え、天文ファンの人気が高く、研究者にとっても格好の観測対象になっています。
“M81”を大型望遠鏡や宇宙望遠鏡で撮影すると、銀河の周囲を取り巻くハロー構造に含まれる星を1つ1つ分解することができます。
今回の研究では、直径1.5度(満月3個分)の広い視野を誇るすばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“HSC”を使用し、“M81”のハローと周囲の衛星銀河を包括的に調べる“M81銀河考古学”プロジェクトをスタートさせています。
“HSC”を使って、天の川銀河やアンドロメダ座大銀河が含まれる“局部銀河群”以外の銀河群に属する大型銀河を観測するのは初めてのこと。
2015年1月には、“M81”とそれに付随する“M82”や“NGC 3077”など、衛星銀河の詳細な姿をとらえることに成功しています。
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“HSC”が映し出した“M81”(中央)、“M82”(上)、“NGC 3077”(左)の疑似カラー画像。視野の直径は約1.5度。 |
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“M81”付近の拡大(左)、“M81”の渦巻腕の拡大(中)、解析で使った処理済み天体画像を合成したカラー画像(右)。 |
銀河の重力相互作用
研究では、画像中の個々の星を色と光度で分類し、若い主系列星と年老いた赤色巨星それぞれの“分布図”を作成。
すると、年齢が1億年未満の若い主系列星の空間分布図では、“M81”や“M82”、“NGC 3077”それぞれの銀河の外側に、多くの若い星の集団があることが初めて明らかになります。
さらに、“M81”と“NGC 3077”をつなぐ“恒星ストリーム”も見つかることに…
どの集団も明るさの分布が等しく、中性水素ガスの分布とほぼ同じ場所にあるんですねー
なので、この空間分布は約2億年前に起こったとされる3つの銀河の重力相互作用によって“M81”から大量のガス塊が引きちぎられ、そのガスの中で星の集団が同時多発的に生まれて出来たと考えられます。
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M81”、“M82”、“NGC 3077”の周りの主系列星(左)と赤色巨星(右)の空間分布図。(左)黄色いほど明るく、青いほど暗い星を示す。(右)各点の色が1つ1つの赤色巨星の重元素量に対応。 青色はより重元素の少ない星、黄色はより重元素の多い星。実線は可視光で見える銀河の一般的な半径に相当する「R25半径」を示す。 |
“M82”のハローの外側にある星は、他の2銀河のハローよりも平均的に重元素が少ないことも分かることに。
また、若い星の分布図では見えていなかった、別の3つの矮小銀河(IKN、BK5N、KDG61)が確認でき、これらの矮小銀河には古い星しか存在しないことも分かりました。
銀河考古学
天の川銀河や“M81”のような大きな銀河は、小さな銀河が重力相互作用で合体することで大きく成長していったと考えられています。
大きな銀河の周りには、取り込まれずに生き残った衛星銀河や、衛星銀河が大型銀河の潮汐力で引きちぎられて星が帯状に分布した“恒星ストリーム”などが、多く存在すると予測されていて、実際に天の川銀河や230万光年彼方のアンドロメダ座大銀河の周辺からは見つかってきています。
こうした衛星銀河や“恒星ストリーム”、銀河周辺の複雑なハロー構造を観測し、星の年齢や成分を調べて、大きな銀河本体の歴史をひも解く“銀河考古学”研究が、
発展してきています。
でも、地球からおよそ500万光年以上の距離ある“局部銀河群”の外では、これまで観測が困難でした。
それは銀河を星に分解するには、大型望遠鏡の高解像度と大集光力を欠かすことが出来ないからです。
ただ、大型望遠鏡のカメラは視野に限りがあり、大きな銀河の周辺構造全体をくまなく精密に調べることは非常に難しいことに…
っと言うわけで、大口径のすばる望遠鏡に超広視野主焦点カメラ“HSC”が搭載されたことは、“銀河考古学”にはなくてはならない組み合わせになるんですねー
“HSC”の完成によって、天の川銀河、アンドロメダ座大銀河に続く3例目の“銀河考古学”として、初めて“M81”周辺部の構造を広範囲にわたって詳しく調べることが出来ました。
すばる望遠鏡“戦略枠プログラム”で進行中のHSC広視野サーベイを用いた天の川銀河の研究と合わせて、大型銀河の過去の形成過程にどれだけ迫れるのかが楽しみですね。
こちらの記事もどうぞ ⇒ 理論予測と異なる? アンドロメダ座大銀河のダークマター分布