宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

火星のサンプルから、生命活動に重要な硝酸塩の証拠

2015年04月25日 | 宇宙 space
NASAの火星探査車“キュリオシティ”が採取したサンプルから、
地球上の生物にとって重要な、硝酸塩が存在する証拠が得られたんですねー

これで、火星がかつて生命に適した環境だったという証拠が、
また1つ見つかったことになります。
火星探査車“キュリオシティ”

硝酸塩の証拠が見つかったのは“キュリオシティ”が着陸した近辺。

ロックネストと呼ばれる場所で風成堆積物を、
ジョンクラインとカンバーランドという場所では泥岩の堆積物を採取し、
分析器で過熱して発生した気体を分析したところ、検出されたのが酸化窒素でした。

硝酸塩を熱すると分解して、酸化窒素ができることが地上の実験で知られています。
この酸化窒素が硝酸塩由来だと考えられるんですねー

“キュリオシティ”本体による汚染を差し引くと、
酸化窒素の由来になる硝酸塩は、ロックネストのサンプルで110~300ppm、
ジョンクラインのものは70~260ppm、カンバーランドにいたっては330~1100ppmに相当する高い含有率になります。

硝酸塩に含まれる窒素は、
アミノ酸や核酸塩基を構成する生命にとって重要な成分になります。

2つの窒素原子が固く結びついた大気中の窒素分子は分離が困難ですが、
窒素原子3個の酸素とゆるく結びついた硝酸塩は、
はるかに分解しやすく窒素を取り込むのに適しているんですねー

地球上の硝酸塩のほとんどは生命活動により作られますが、
火星の場合、隕石の衝突や落雷などの熱衝撃で生成されると考えられています。

硝酸塩の生成が、
現在の火星で行われているのか? 
それとも今と違った環境の過去においてのみ行われていたのか?
知りたくなりますね。

初めてとらえた、“0歳児”の星の急加熱

2015年04月24日 | 宇宙 space
最初期段階の恒星が急激に高温になるようすを、
赤外線のアウトバーストとして、初めてとらえることが出来たんですねー

これは、恒星が取り込む物質が急増したことで発生したようです。
原始星“HOPS 383”急増光のようす。

オリオン座の方向1400光年彼方の星雲“NGC 1977”の近辺。

ここで、生まれたばかりの星“HOPS 383”が、
赤外線で急増光(アウトバースト)するようすがとらえられたんですねー

NASAの赤外線天文衛星“スピッツァー”などの観測データでは、
まず、2004年から2006年にかけての増光が見つかります。

そして、2008年には波長24μmの赤外線で35倍の明るさに…
その後、2012年になっても明るさは衰えませんでした。

恒星はガスの塊が重力で収縮することで生まれます。

でも、一人前の星の活動である核融合を始める前に、
まず収縮と物質降着のエネルギーで輝き始めるることになります。

これが原始星“星の赤ちゃん”なんですねー

原始星の輝きは周囲の濃いガスやチリでさえぎられるのですが、
原始星の熱であたためられたチリが発する赤外線なら見ることができます。

“HOPS 383”は、
わずか15万年しか続かない恒星の最初期段階にある“クラス0”の原始星で、
この段階でのアウトバーストがとらえられるのは初めてのことになります。

不安定になったチリとガスの円盤から、
恒星に取り込まれる物質が急増したことで、
“HOPS 383”の長期間にわたるアウトバーストは起こったようです。

物質が集中して注がれた箇所が高熱になり、
恒星と円盤両方が急激に熱せられたのかもしれませんね。
“NGC 1977”はオリオン座大星雲(M42)のすぐ上(北)。


太陽系の回転速度分かったようです。

2015年04月23日 | 宇宙 space
国立天文台VERAの観測から、
銀河の中での太陽系の回転速度が、精密に測定されました。
銀河系円盤面上での太陽系と大質量星形成領域の位置。

VERAは遠距離間の望遠鏡ネットワークで、
天体の距離と運動を高精度に測定するプロジェクトです。

今回の研究では、このVERAを用いて、
水分子で増幅されたマイクロ波放射“水メーザー”を観測しているんですねー

そして、天の川銀河の中を太陽系が回転する速度が、
より精密に観測されることになります。

研究では、
重い星が生まれる領域“IRAS 20143+3634”(はくちょう座)での“水メーザー”放射を、
2008年12月から2010年12月にかけて複数回観測。
この領域までの距離“8870光年”や固有運動を算出しています。

また、この領域が銀河の中を回転する速度(km/秒)は、
(27.3±1.6)×銀河中心からの距離(キロパーセク)と算出されました。

この数値は、国際天文学連合での従来値よりも約1割大きいんだとか…

さらに、この領域と同じ円周上を周回している太陽系も、
同じ速度で回転していると見なすことが出来るんですねー

太陽系の回転半径を8.5キロパーセクとすると、
その回転速度は秒速232キロになるようですよ。
大質量星形成領域“IRAS 20143+3634”周辺の星図。


国際ガンマ線天文台に大口径望遠鏡設置へ

2015年04月22日 | 宇宙 space
東京大学の宇宙線研究所が、
東大西洋のカナリア諸島ラパルマにある国際宇宙ガンマ線天文台“CTA”に、
大口径望遠鏡が設置すると発表しました。

これにより、宇宙ガンマ線の高精度観測が可能になるんですねー

目的は、宇宙線の起源や、ブラックホール周辺のさまざまな物理現象、
ガンマ線バーストの解明、暗黒物質の検出。

今年9月から、日本が中核を担う大口径望遠鏡の1号基の建設・設置に着手し、
2016年11月には、この1号基が完成し観測を始めるそうです。
“CTA”の完成予想図。
中央に大口径望遠鏡が設置され、その周辺には中口径、小口径望遠鏡を設置。
10ギガ電子ボルトから100テラ電子ボルト領域の宇宙ガンマ線を観測する。

現在、地上にあるテラ電子ボルトガンマ線観測装置が、
次々に新天体からのガンマ線を報告していて、
宇宙は私たちの想像をはるかに超える、
高エネルギー現象に満ちていることが分かってきました。

“テラ電子ボルトガンマ線天文学”は、いまや発展期に移りつつあり、
それを担うのが次世代のテラ電子ボルトガンマ線天文台の“CTA”なんですねー

“CTA”は、世界で唯一の大規模なテラ電子ボルトガンマ線望遠鏡として、
現在の装置の10倍の感度と、優れた角度分解能を達成し、
1000を超す高エネルギー天体の観測に挑戦することになります。

観測するテラ電子ボルトガンマ線は、
人間の目で見える可視光より12ケタ、1兆倍も高いエネルギーの光子で、
日本・アメリカ・ヨーロッパの研究者らが検討し、望遠鏡を開発してきました。

大中小の多数のチェレンコフ望遠鏡群からなり、
南半球(チリが有力)と北半球に1か所ずつ設置され全天を観測。

23メートルの大口径望遠鏡は、
南北の“CTA”大規模アレイの中央部に、それぞれ4基設置され、
宇宙から飛来するガンマ線を観測する“CTA”の主役になります。
“CTA”大口径望遠鏡(口径23メートルの主鏡)。

東京大学宇宙線研究所を中心とする日本のグループが、
この大口径望遠鏡の開発を主導。

23メートル口径の大きな主鏡で、
大気中に突入してきたガンマ線が引き起こす空気シャワーから、
より多くのチェレンコフ光を観測します。

これまでガンマ線では、
誕生してから66億年たった宇宙しか見ることが出来ませんでした。

でも“CTA”では、宇宙誕生後16億年の若い宇宙が見える見込みなんですねー


“CTA”の全体の費用は約300億円で、
日本が約15%を分担し2020年に完成の予定。

日本のグループは、
大口径望遠鏡のうち、総面積400平方メートルの高精度、高反射率の分割鏡、
その分割鏡を制御するアクチュエーターシステム、
高量子効率の光センサーからなるカメラ部を担当してきました。

そして、大口径望遠鏡1号基が、
カナリア諸島ラパルマにあるロケ・ムチャチョス天文台に設置されることが、
このほど正式に決まったということです。

航法衛星“GPS IIF-9”の打ち上げに成功 デルタIVロケット

2015年04月21日 | 宇宙 space
ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)社が、
航法衛星“GPS IIF-9”を搭載したデルタIVロケットの打ち上げに成功しました。

ロケットはフロリダ州のケープ・カナベラル空軍ステーションから離昇。
順調に飛行して約3時間14分後に衛星を分離し、所定の軌道へ投入されたんですねー

“GPS IIF-9”は、カーナビやスマートフォンなどでおなじみの、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)を構成する衛星です。

“GPS IIF-9”はGPSの衛星としては第4世代に当たり、前世代機と比べ、搭載されている原子時計の正確さが上がっているんですねー

なので、測位もより正確にできるようになっています。

今回打ち上げられたのは、その第4世代の9号機になり、今後も順次、旧世代機からの入れ替えが進められていく予定です。

製造はボーイング社、運用はアメリカ空軍が担当します。

打ち上げ時の質量は1630キロで、高度2万0200キロ、傾斜角が55.0度の円軌道を周回。
設計寿命は15年が予定されています。


一方、衛星を打ち上げたデルタIVロケットもボーイング社が開発。

ボーイング社とロッキード・マーティン社によって設立された、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社によって運用されています。

デルタIVは、ブースターの本数やフェアリングの大きさを変えることで、多種多様な衛星の打ち上げに対応が可能なロケットです。

その中でも、第1段機体を3基束ねたデルタIVヘビーと呼ばれる構成は、現在世界で運用されているロケットの中で、最も強力な打ち上げ能力を持つんですねー

デルタIVロケットの打ち上げは、今回で29機目。

2004年にデルタIVヘビー構成の機体が、
衛星を予定よりも低い軌道に投入してしまったこと以外は、安定した打ち上げを続けています。

今回の打ち上げで使われたのは、
直径4メートルの衛星フェアリングと第2段を持ち、2基の固体ロケット・モーターを装備してる、ミディアム+(4.2)と呼ばれる構成だそうです。