暖かい春の陽気に誘われ街に出た。
今日は桃の節句、熊本の繁華街、下通りの舗道には沢山のお雛さまが鎮座ましましていた。7段飾りの豪華なお雛様が10基以上はあるだろう。
お飾りの菱餅や桃の花なども色鮮やか。すがすがしい春の雰囲気が漂っている。
通りには“肥後のひなまつり”の桃太郎旗が10数本、風になびいて通り過ぎる人の顔をなでている。
平成11年のひな祭りは私にとって忘れることのできない日だった。ひな祭りを待たずに亡くなった母の葬儀の日。享年93歳。その日は雲1つない青空の見える暖かい日だった。
火葬場で最後の別れをしたのだが、花瓶に一枝、桃の花がさしてあったのが強烈な印象となって残っている。
今年はお雛様が例年以上に売れているという。本来、お雛様はその年に生まれた女の子の成長と幸せを願う飾り物だが、最近は、主にアラフォー世代以上の女性が自分自身のために購入するのがブームだという。
時代を反映するのか豪華な7段飾りよりも、マンションの部屋にも飾れる小さなお雛様に人気があるそうだ。
93歳まで生きた母も女性。お節句を待っていたのではなかろうか。お雛様が欲しかったのではなかろうか。街に並べられた雛飾りを見るうちに、形破りかもしれないが、葬儀の場にお雛様、どんなものだろうとふと思った。