30年前のことですが、長崎の離島、壱岐で家族一緒に1年を過しました。きょうのNHKのど自慢はその壱岐市からでした。、最初に映し出された壱岐の風景を見て懐かしさで胸が一杯になりました。
壱岐は玄界灘に浮かぶ夢の浮島。博多から74キロ、船で2時間30分の距離にあります。また、島の一部が今話題の玄海原発から30キロ圏内になっています。当時博多港からフェリーが日3便、空の便が1便ありました。今はジェットホイルの高速船で約30分で行くことが出来ます。
壱岐には高い山はなく直径10キロ位の円形の平たい島です。人口は約4万人、自動車なら約20分位で全島どこへでも行きつくことが出来ます。
島の東側は白砂青松の地、白い砂浜と濃いブルーの海が幻想的な世界を作り出しています。西側は対照的に断崖絶壁が連なり、白い大きな波が岩をかみたくましい限りです。
壱岐は歴史の島でもあります。遠い卑弥呼の時代、中国の史書、魏志倭人伝に「一支(いき)国」とあり、元寇の役では全島が蒙古軍に蹂躪(じゅうりん)された悲劇の島でもあります。
壱岐に転勤を命ぜられたときは驚きました。初めての離島勤務、愕然としたものです。不安でなりませんでした。 だが、着任してみると素晴らしい島の自然と環境にすぐに溶け込み、楽しい想い出を沢山戴くことが出来ました。
島の人達は私たち転勤族のことを”旅の人”と呼び、島の人々の生活の中に私たち”旅の人を”を温かく自然に包み込んでくれました。暇を見ては釣りに出かけました。島の人達と一緒に凧揚げ大会にも参加することが出来ました。
その年の6月には、辰の島(無人島)海水浴場の海開きに招待されました。余興として釣り大会があったのですが、素人の自分が2位に入り盾を頂きました。その釣り大会のルールは竹竿(既成の釣竿ではありません)1本と釣り針1ヶ、餌は自分で探し、1時間の釣果を競うものでした。まぐれでしょうが8匹の”がらかぶ”が釣れました。
夏になって各地から海水浴目当ての観光客が押し寄せ島は賑います。白砂の海は何とも言えない雰囲気を醸し出します。“うちの奥さま”と一緒に二人乗りのカヌーを漕いで、近くの無人島にも上陸しました。
今回”NHKのど自慢」の会場”となった壱岐文化会館も思い出の場所です。
その壇上で女優の松坂慶子さんに花束をお渡ししました。古い話で申し訳ありませんが、着任してすぐのこと壱岐で映画のロケが始まりました。その時、少しだけお手伝いをさせていただいたのですが、そのお礼だったのでしょうか。特別映写会の会場で花束を贈る役が回ってきたのです。映画は高木しのぶさん原作の小説”波光きらめく果て”でした。
”旅の人”と優しくしていただいた島の人達ともすっかり仲良くなり、壱岐がとても気に入りました。もっと居たかったのですが1年で壱岐を去ることとなりました。転勤族の悲しさと寂しさ、少し心残りがしたものです。新鮮なウニやぶりなど魚介類を肴に芳醇な壱岐の麦焼酎を夫婦でたしなんだその1年。
今日の”NHkのど自慢”は昨日のことのように壱岐の生活を思い出させてくれました。