私が本格的に漢方の道に入りましたのが、昭和62年。薬屋2代目の私が家に戻ったときからでした。漢方の本は難解で、本を開いた瞬間に眠気が生じるくらいです。そんな時に出会った漢方の師匠が船橋市の並木靖先生で、剣の家元(鹿島神伝直心影流第十八代宗家)でもあります。私は剣道の竹刀を触った事もありませんでしたが、先生から剣の道の極意をお聴きし、人生の生き方、人としてのあるべき姿等、毎回勉強になりました。
その先生のお仲間とも親しくさせていただき、日本全国の漢方の大家ともご縁をいただきました。そのお一人に岡山県の下山由美子先生がいます。昨夜、下山先生と二人で会食をしましたが、その時に並木先生の思い出話に華が咲き、ついつい遅くまで・・・・。
並木先生は浅田宗伯先生の漢方の流れを汲み、下山先生は吉益東洞先生の漢方の流れを汲んでおります。その関係で、並木先生から吉益東洞の話を思い出しました。
池大雅の河豚の絵に吉益東洞が賛を書いた掛け軸の話です。
以下は、並木先生の著書「探りあてた健康法」からです。
毒は毒に毒して
ある処で、池大雅が描いた河豚(ふぐ)の画を見せられました。一見、岩のように見える河豚が描かれてありました。その河豚の画の上に書かれた賛は、これまた判読しにくい字でしたが、画の持ち主は、古書画鑑定の大家で、これを判読して下さったので、それを左に紹介します。
獣名而魚
毒之何神
毒毒耳毒
不毒於人
書いた人は当時日本一の名医と言われた漢方の大家・吉益東洞です。「獣名(ジュウメイ)ニシテ魚。毒ノ何ゾ神ナル。毒ハ毒耳(ニ)毒シテ、人ニ毒サズ」と読みます。意味を解読しますと、フグは河豚と書きますから、豚と言う獣(けもの)の名前を使いますが魚です。毒は人間の考えも及ばない猛毒です。しかし毒はそこに毒があるから毒として働くのであって、本来清らかな人間に対しては、毒としての働きはないという意味です。・・・・・
絵の上に画賛があり、調べたら吉益南涯先生の物の様で、それで上記の検索で情報を見てたのでした。
私は漢方といえば「葛根湯」の市販薬に時々お世話になっておりますが、その掛軸が縁で、ちょっぴり漢方にも興味が沸きました。
また、ブログ時折拝見させていただきます。失礼しました。