タキソールが、紅豆杉から発見された歴史をもっともらしく書かれてる、
専門家、
研究家、HPなどを見かけますが、耳で聞いたマタ聴きか勘違いをそのままに掲載されてる危険性があります。
これは、
植物の成分から発見され、世界中の有機化学者が合成を競った有名なものです。
紅豆杉の有効性を云々するつもりはありませんが、間違った情報を提供することで、間違った判断をしかねないので、そこを、専門家として訂正していきたいと思います。
まずは、
タイヘイヨウイチイTaxus brevifoliaからタキソールが単離・発見されて、
ヨーロッパイチイ Taxus baccataから取れるバッカチンから、工業的にタキソールが合成される、というわけです。
セイヨウイチイ、ヨーロッパイチイ、タイヘイヨウイチイという和名と学名は、けっこう混乱しています。
タキソールの全合成法は、1994年にアメリカ化学会誌に最初に発表された。この成果は、複雑な構造を持つ化合物が合成可能であることを示した研究として注目された。
しかし、有機合成化学の最先端の研究室で、10ミリグラム程度を合成することがようやく可能になったレベルであり、コストがかかりすぎることから、全合成法も医薬品製造方法としては問題があった。その後、ヨーロッパイチイ(学名Taxus baccata)という潅木の葉から比較的大量に取れる中間原料(バッカチン)をもとに、
有機合成により数工程で生産する技術が開発され、
現在タキソールはこの技術で生産されている。
さらに、タキソールの全合成法の一部を改変することにより、
タキソールよりも優れた抗がん剤となる「新タキソール」ともいうべき化合物が合成され、
現在臨床試験中である。この化合物は今のところ、バッカチンを原料として合成することができない。このように、たとえ植物などの自然界に存在する化合物であっても、有機合成方法を確立することは、その後の
医薬化学研究等にとって極めて重要である。
Taxus baccataから取れるのは、
タキソールそのものではなく、タキソールを合成するために使用できる前駆体の
バッカチンです。
このバッカチンは、Taxus属の植物にはけっこう分布しているようです。
この輝かしい
歴史の経過は、
何冊の本にもなってます。
では、なぜ、以上のような間違いが、どうどうと研究者も巻き込んで行われるかと言いますと、植物学と生薬学とは違いますし、元の論文などをしっかり調べない事による勘違いがほとんどです。そして、その情報が、ネット上で、コピーが繰り返され、もっともらしい情報になっていきます。
私が確認したところでは、上記の間違いを指摘してるHPなどは、皆無でした。