波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

父の歌

2015年01月22日 | 日記・エッセイ・コラム

  実家から持ってきた古いものを整理していたら文集が出てきた。奥付に、昭和27年5月1日、労働組合文化部の発行とある。発行責任者に父の名がある。当時の製本事情のせいか、母が繰り返し手にしたせいか表紙は随分傷んでいる。中はガリ版刷りで版画作品のように今でも美しい。

 詩や短歌が載っている。巻頭言に「…とかく労働組合の文化運動とは階級闘争的イズムにまで進展するをもって真に働くものの文化活動であるがごとき考え方はイズムにとらわれた公式論であって、芸術的な立場からの公平な理論では無い…働く者の文化運動とは、生活を潤いづけて、生活に楽しい面を肉付けすることである」と発行責任者の言葉。当時25歳、この4年後、病に倒れる父が残した言葉だ。

 初めての子ども(立男のことだが)誕生の喜びの歌が12首並ぶ。
   薄氷やひとりたのしき父となる
 春雪や産屋のあかりうからの燭
 謀るに似て啓蟄の夜を嬰児の傍に…

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【その198】 あたふた

2015年01月18日 | 【保管】一寸凡師コラム

    あたふた
 
 長男が自由研究をまとめている。テーマはズバリ「冬休みの家族旅行」。写真を貼りながらコメントを。『2500㎞(車の総走行距離)も走ったのだから、さぞかし思い出もいっぱいだろう』と考えるのは親の勝手な思いだろうか。(ちなみに、長男が書いた「冬休みの思い出ベスト3」の第1位は、凡師が食堂でうどんの器を落っことして、あたふたしたことだった。)いずれにせよ完成が楽しみ。
 さて、年末に新調した目覚まし時計。鳥のさえずりで起こしてくれるというところに惹かれ購入。『これで朝の目覚めも快適に!』と思ったが、ピーヒョロロという音が意外に大きく、あまり心地よくない。結局、毎朝あたふたしながら目覚ましを止めている。
「冬休みの思い出」第2位に書かれる前に、素早く且つスマートに目覚ましを止める術を身につけたい。

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第37号/自立と共生

2015年01月17日 | 【保管】腹ペコ日記

         自立と共生

 内田樹さんの文章が好きで、ほとんどの本を買って読んでいる。その本の中でも、タイトルに惹かれたのは『ひとりでは生きられないのも芸のうち』。本が出た当時、あるいは今も、「即戦力」など何でもひとりでできる人が求められる風潮があったこともあって、いいタイトルだなぁと思ったのだった。
                                    ・・・
  久しぶりに読み直してみる中で、羽海野チカ『三月のライオン』の桐山くんを思い出した。桐山くんは何でも一人でできちゃう「ハイスペックな」高校生。担任の先生が桐山くんにこう語りかける場面がある。「一人じゃどうにもならなくなったら 誰かに頼れ でないと実は 誰も お前にも 頼れないんだ」。この物語は、桐山くんがそうして誰かに頼ったり、そして頼られたりするようになりながら成長する姿を描いている。内田さんは本の中で、自立とは「その人なしでは生きてゆけない人」の数を増やすことによって達成される」と書いていて、『ライオン』は桐山くんの「自立」と「共生」の物語ともいえるんだなぁと思った。

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「富士日記(前)」読む

2015年01月15日 | 読書

 無人島に1冊だけ持って行く本と言われたら、「富士日記」(武田百合子著:中公文庫)か内田百の随筆かどちらかだろう。決意して読む必要が無く、どこから読んでも大丈夫で、どこで止めても罪悪感湧かない。だが開くと、ハッとして、笑ってしまって、考えたりする。読まなくても別に困らず、続んだから偉いとも思わない。
 からりとした文体で、日常が書いてあるのは別の本でも十分。だが、この本で無くちゃならない何かが富士日記にある。人のでも自分のでも、日記というのは小説と比べると読後感が薄い。ドラマにする意図や仕掛けを持たないからだが、それは何度でも読める、何度読んでも尽きないことにつながる。但し、そういう日記だからだ。無人島では読み飽きない本が必携。

 生きることは面白いよ。それを書くのも楽しいよ。但しそれは、日常生活とらえる感覚が非凡な場合ですよ、を強烈に教えてくれる一冊。私たちは誰でも生きるために自分以外の誰かと接触して生活しているが、筆者はこの生活の要所要所に反応しそれを驚くような言葉で表わす。夫武田泰淳が亡くなるまでの富士での生活日記、この前半の明るさは、後半どうなっていくのだろう。

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「Sunny」2~5

2015年01月14日 | 読書

  漫画家、松本大洋(1967年生)のSunny」。漫画の可能性、可能性追求の持続力に驚かされる。90年の「ZERO」から始まり、「花男」「鉄コン筋クリート」「ピンポン」「日本の兄姉」をリアルタイムで読んできた。60年代のCOMやガロの故永島慎二を彷彿。描線、白黒比率、アングルの新鮮さ。文学的な主題に驚く。画(絵ではなく)の好き嫌いあるかもしれないが、コマ割の線1本に対しても並外れた表現力(その太さと手作り感)に凄みが。
 本書の舞台が児童養護施設(民間経営)に驚き、そのリアルさ、詩的感覚に圧倒される。映像と言葉の記憶をこんな表現に昇華できる力技に驚嘆。要所要所のカラー頁が、静かに死生観問う絵本「かないくん」につながる。つげ義春や高野文子などのj次元に入るだろう。貧乏しても古本屋には売らない本。

 「てつがくのライオン」(中学国語教科書に掲載)の作者、工藤直子氏が実母と知っていたが、本作が作者の体験にもとづき「デビュー当時からずっとあたためていた作品」(帯コピー)に驚く。昨年春1読み、今回2以降購入。


 「つながりを煽られるこどもたち ネット依存といじめ問題を考える」(土井隆義著:岩波ブックレット)と松本作品を同時進行で。大人と独立した子ども世界を思う「つながる図書館 コミニティの核をめざす試み」(猪谷千香著:ちくま新書)読む。開けば良い、便利なら良いの上から改革でなく、市民による下からの改革支持したい。佐賀県知事選の結果に県民の良識感じて。

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