実家から持ってきた古いものを整理していたら文集が出てきた。奥付に、昭和27年5月1日、労働組合文化部の発行とある。発行責任者に父の名がある。当時の製本事情のせいか、母が繰り返し手にしたせいか表紙は随分傷んでいる。中はガリ版刷りで版画作品のように今でも美しい。
詩や短歌が載っている。巻頭言に「…とかく労働組合の文化運動とは階級闘争的イズムにまで進展するをもって真に働くものの文化活動であるがごとき考え方はイズムにとらわれた公式論であって、芸術的な立場からの公平な理論では無い…働く者の文化運動とは、生活を潤いづけて、生活に楽しい面を肉付けすることである」と発行責任者の言葉。当時25歳、この4年後、病に倒れる父が残した言葉だ。
初めての子ども(立男のことだが)誕生の喜びの歌が12首並ぶ。
薄氷やひとりたのしき父となる
春雪や産屋のあかりうからの燭
謀るに似て啓蟄の夜を嬰児の傍に…