居心地の悪さ
【2/13の続編】
廊下の曲がり角で「シェー」をやって、笑って逃げていく仲間たち。これが立男を生活委員に担ぎ出した後援会で、自分たちの仲間から一人ぐらいは学級役員に、という変な友情というか義侠心を発揮したのだ。勉強がからっきし駄目で、教室の後ろで日向ぼっこしながらたわいのない話で笑い転げてる仲間たち。共通点はそろって大人しく貧乏。黒板側は学級委員長の勢力で女子と仲良く、歌なんかも聞こえてた。学級の「与党」だ。
日向ぼっこグループは選挙戦で突然に「野党」になり、意外な善戦をした。立男の承諾無く「候補推薦」し、いつの間にやら集票活動していたのだ。反与党の勢力が思いの他多かった。黒板に「正」が並ぶ開票作業は、何だか興奮するもので、終盤にはワァとかオーとかの声が盛んに交差した。その渦中に立男がいた。落選した奴が、捨て台詞に「人気投票だ」なんて言った。この意味を隣の兄ちゃんが教えてくれて、正当な選挙では無いと言いたかったのがわかった。あの立男ちゃんの当選は「絶対にありえない話」として近所でも話題になっていたのだった。立男は、何だか悲しく、腹も立ち、いい知れない憂鬱な気分になっていた。線路に五寸釘を乗せて手裏剣を作るのも、腹が痛いと嘘をついて保健室で休むこともこれで終わりだなと思った。次の日にも仲間は「おめでとう」なんて言う。自分のことのように嬉しそうな顔だから、文句言気もせず、それが喜んでいる風に受け取られることにも腹が立ち、実に始末の悪いことだった。【続く】
画像は2月のカレンダー。完全手づくり製、イラストは猫柳。12ヶ月分を作り選んだイラストは、良く言えば「渋い」、悪く言えば「暗い」。青や黒を赤や緑のと差し替えたりした。「表面の明るさと内側が違うよね」とママヨさん。