波風立男氏の生活と意見

老人暮らしのトキドキ絵日記

第110回/自己肯定感

2016年06月12日 | 【保管】腹ペコ日記
自己肯定感
   「もっと自信を持ってください」―。教育実習で生徒から言われた言葉だ。しかも、同じことを複数の生徒から言われた。自分の自信のなさ、自己肯定感の低さは一体何に起因するのだろう。それを考えるときいつも思い出すのは「あなたは不器用な人間だから、一生懸命がんばってやっと一人前」という言葉。それを真に受け、「なんでも一生懸命取り組まなきゃいけない」と思い続けてきたような気もする。
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「一生懸命さ」は、とりわけ学校教育では評価される。通知表でも、一生懸命さがいつも評価されてきたので、自分の取柄はそこにある、そこにしかない、という気持ちが育ったような気もする。でも、その「一生懸命さ」は、「がんばらなくちゃ一人前になれない」という、自己肯定感とは真逆のものを原動力にしているので、なんだか息苦しかった。
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そんな経験からか、「ちゃんと一生懸命がんばる」ことを評価することにためらいがある。何のためにがんばっているのか、その「がんばれる」根っこに何があるのか、気になってしまうのだ。「ちゃんとがんばれることもひとつの能力だ」と、頭ではわかっているのだけれど。
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『近藤ようこ』を一気に読む。

2016年06月12日 | 読書

 「見晴らし丘にて」(ちくま文庫)を読む。普通の人の日常生活が、「こんなに面白い」ことなのかと笑う。笑う、は適切でないかもな。どんな「女のひと」もこういうドラマを持っているのか、なんて思う。そして男はこんなふうに映っているのか。それにしても、微妙な心の揺れを引き起こす『男女の仲』がドラマの起点、配役、主題。人間だからこその悲しさ可笑しさが切ない。上質な笑いが湧く。やっぱり「笑い」か。作者は1957生、今年還暦。前に通販生活で「つげ義春」の次に掲載された。同年代と感じる妙に気になる漫画家だった。今回、日本の漫画賞総なめの作家だと知る。

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 一ノ関圭で「1950年代生まれの女性漫画家」が気になり読んだ「見見晴らし丘にて」。定価1円(郵送料247円)のこの傑作を読んでいたら、教え子が一気に6冊貸してくれた。「ルーム生活 全3」、「移り気本気」、「五色の船」(初版14年 原作:津原泰水)、「説教 小栗判官」(初版15年)、前者2つは「見晴らし~」的、後者2つは説明不可の不可思議漫画で、なるほどこれが原点か、と思った。異端の歴史や風俗といった、抵抗できない数奇な運命を可視化できる作者が、日常生活の心の揺れを描いていたのだ。それにしても、すべてが今日に通用しているのが凄い。初級老人の立男とママヨは、それぞれが読みふけり、それぞれが笑い考え、それぞれで寝入る数日だった。 


『堪能』という読後感。ついでに買ったビッグコミックセレクション(09年 創刊40周年記念 名作短編集)に一ノ関圭「ほっぺたの時間」、再読し感嘆 公式裏ブログ「波風食堂、準備中です」も久しぶりに更新しました。               

 

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第109回/点検

2016年06月06日 | 【保管】腹ペコ日記

 点検

   今年に入ってから、自分の実践について語る機会に恵まれている。そんな中相方さんに言われたのが、「ペコさんの実践の語り方はドラマチックすぎる。他の先生たちと違う」ということ。要するに、他の先生方のカタリ派、実践や子どもと一定の距離を保っているように聞こえるのに対して、腹ペコは「まるで実践の中にいるように話している」らしい。それについて、相方さんは、「研究者なんだから、もっと客観的・分析的に」と思っているとのことだった。

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   どうも実践に巻き込まれているな、という実感はあるのだが、「客観的」になれない理由がいまいちよくわからない。挙げるとすれば、「子どもの土俵」にどんどん近づいていき、気づけば子どもとまったく同じ目線で考えたり話したりしてしまうということだろうか。

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   「教師は役者、授業は舞台」とも言うけれど、役者なんて腹ペコには一番向いていない職業だ。そんな実情も、実践を語る中で明らかになるのだから、こうして振り返るということは自己点検という意味でも大事だなとつくづく感じている。


 


土日に札幌出張あり、「凡師コラム」と「腹ペコラム」を今日UPしました。札幌の空き時間に、一日いても足りない東急ハンズと大丸藤井で、ヒノキ板材、時計パーツ、棚ぼた(雄雌)、オイルクレパス、額縁等購入し、出張成果はもちろん私的も素敵な1泊2日でした(波風立男)

 

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【その267】なんとなく幸せ

2016年06月06日 | 【保管】一寸凡師コラム
なんとなく幸せ
 NHKで放送されている「ふるカフェ系 ハルさんの休日」。古民家を再生したカフェを主人公が渡り歩くというドラマ。こだわりのカフェが毎回登場するが、建築様式や歴史の勉強にもなる。テーマソ ングは「なんとなく幸せ」。つじあやのさんによるカバーで、ウクレレによる弾き語り。古民家カフェの雰囲気にピッタリな歌。凡師家でもウクレレや電子ドラ ムを持ち出してプチコンサート。コードをパパッと調べて即興で。以外になんとかなってしまうあたりに凡師家一同びっくり。こんな時間も“なんとなく幸せ” なのだろう。
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50年生の女性漫画家

2016年06月03日 | 読書

 一ノ関圭「ランプの下」「茶箱広重」再読。「・白戸三平流の骨太い画法と狂いの無いデッサン力 ・奥いきのある文学性 ・魅力的な『おんな』どれも個性的 強さ弱さ 諦念 淫蕩さ」(「ランプの下」巻末 林望評)と「一読驚嘆 漫画でここまでやられて… 素材の面白さに頼るだけでなく、物語を構築する才能にも長けている」(「茶箱広重」巻末 高橋克彦評)に同感。

               

 「ランプの下」が76年(ビッグコミック)、「茶箱広重」が81年(前同)、「鼻紙写楽」が02年~で、この3冊がこの作者の全コミック。寡作に驚きつつ、時代考証の厳密さ、揺るぎない物語性、そして一コマ一コマが『美術作品』ならばそうであろうとも思う。貸本漫画の匂いする「ランプの下」、上手さ際立つ「茶箱広重」、白戸三平「カムイ伝」みたく読み終わってこれからが始まりと思ってしまうスケールの大きな「鼻紙写楽」。絵も筋も揺るがない「完全主義」に向かう凄さ。

                      

 女性漫画家の面々が浮かぶ。消費的漫画と一線画す作家たち。「しんきらり」のやまだ紫(48年生 09年没 享年60歳)、「百日紅」の杉浦日向子(58年生 05年没 享年46歳)、「見晴らしが丘にて」の近藤ようこ(57年生)、「絶対安全剃刀」の高野文子(57年生)、 吉田 秋生(56年生)。一ノ関圭(50年生)。50年代生まれの女性漫画家の面々、やるなあ。何度読んでも笑える「専務の犬」の高橋留美子57生、「ガラスの仮面」の美内すず江51生、「海街ダイァリー」の吉田 秋生56生。今回のブログ記念し古本一冊買う。定価1円、郵送料250円。悪くないが、何だかなあ。 


 公式裏ブログ「波風食堂、準備中です」更新しました。珍しく連続で。

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