癌の手術直後、見舞いに来てくれた方から「大丈夫ですか?」と聞かれて困った。そんなことを聞く人は、割合に身近で悪気無く少し鈍感な人たちなのだが、患者自身がびっくり仰天・不安満載だから答えようがない。胃がん術後9年になるが、未だに癌体験の実感が波風氏に無い。だから、今同じことを聞かれても答えようが無い。中に未だに、顔を合わせる度に聞いてきて、もごもごしていると「俺には悪いところが無くてさあ」なんて笑顔でおっしゃる方がいて苦笑する。
術後、腸の接合部分の炎症で嘔吐が続き、1ヶ月で体重が20キロ減ったのが癌の記憶。毎日吐き続け自他ともに「だめかもしれない」と思う頃に「大丈夫ですか?」と言われなくなった。これで否応なく「あなたは癌です」を受け入れざるを得ないわけだが、癌の症状では無く術後の経過だから、癌そのものの苦痛は知らない。
昨年、相当に努力して減量し良い血糖値になったら、「癌が再発したらしい」と噂の種になっていたそうだ。世間というのはそんなものなのだろう。
この間、癌宣告された方々と話し、亡くなられた方も少なくない。それらの多くは、波風氏と同じく、「これは何かの間違いだ」という感じだった、癌の事実を受け入れられていないと思った。これが普通の人だと思う。死ぬかもしれない不安は並大抵ではない。中に、全て受け入れ静かに残りの生を大事にされた人もおられた。尊敬する。だから、大丈夫な人にも、ぜんぜん大丈夫じゃない人にも、「大丈夫ですか?」と尋ねることはあり得ない。
画像は家の前で拾った小石。麻紐で十文字に括った文様が面白い。キリキリと縛った感じ 。裏もやはり十文字
来月『読書カフェ』開催予定。今月22日(日)は『珈琲教室』。毎月1回ぐらいのリズムで波風イベント
「群れない、慣れない、頼らない」「絵とは自然の不思議や美しさをただ描き留めたい一心、その時の感動」。好きな画家、堀文子さん(日本画家、1918生、99歳)の言葉。