電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

山形弦楽四重奏団第80回定期演奏会でボッケリーニ、ドホナーニ、モーツァルトを聴く

2021年07月19日 07時07分09秒 | -室内楽
連日猛暑が続く梅雨明け直後の日曜日、山形市の文翔館議場ホールで、山形弦楽四重奏団の第80回定期演奏会を聴きました。今回のプログラムは、

  1. ボッケリーニ 6つの小弦楽三重奏曲より ト長調 Op.47-2 G.108
  2. E.v.ドホナーニ 弦楽三重奏のためのセレナーデ ハ長調 Op.10
  3. W.A.モーツァルト オーボエ五重奏曲 変ロ長調 K.361 (370a) (セレナード第10番 「グラン・パルティータ」 -オーボエ五重奏版)
      ゲスト:柴田祐太(Ob)・田中知子(Va)(山形交響楽団)

というものです。



会場に入ってしばらくすると、最初に黒っぽいシャツに明るい色のネクタイ姿の茂木明人さんがご挨拶と曲目の紹介をします。感染対策ということでマスクをして話をしましたがやっぱり聞き取りにくい面があり、学校で子どもたちが同じようなことを感じているのだろうな、と妙なところで同情してしまいました。

第1曲め、ボッケリーニの弦楽三重奏曲。Wikipedia で「ボッケリーニ」を調べてみると(*1)、弦楽三重奏曲にもずいぶんたくさんの作品があり、2本のヴァイオリンとチェロの組み合わせのものなどもあるみたい。この曲は1793年に作曲され、1799年に出版されているそうで、ベートーヴェンのウィーン・デビューの直前の頃です。「逸話」を読むかぎり、貴族社会に適当に折り合いを付けながらも、わが道をゆくタイプの作曲家だったのかも。ステージ上は、左からヴァイオリンの中島光之さん、ヴィオラの倉田譲さん、チェロの茂木明人さんです。第1楽章:アンダンティーノ、落ち着いた穏やかな曲想ですが、なんとも魅力的。第2楽章:テンポ・ディ・メヌエット。

第2曲め、ドホナーニの弦楽三重奏のためのセレナード。エルンスト・フォン・ドホナーニは、19世紀末から20世紀後半に活動したハンガリー系の作曲家・ピアニストで、第二次大戦中にアメリカに亡命し、教育者として過ごした人だそうで、ジョージ・セルの後にクリーヴランド管を振った指揮者のクリストフ・フォン・ドホナーニの祖父にあたるようです。教え子の中には、ゲオルグ・ショルティだとかピアニストのゲザ・アンダ、アニー・フィッシャーなどがいるようです。当日のプログラム解説によれば、経歴の面でも好みの面でもブラームスの影響を強く受けているようで、コダーイやバルトークなどと同時代の人らしくハンガリー音楽を取り入れたりもしているようです。
今回のこの曲はぜんぶで5つの楽章からなり、かなり充実した作品です。第1楽章:アレグロ、ボッケリーニの後で聴くとずっと現代に近いと感じる、なかなかカッコイイ曲です。第2楽章:アダージョ・ノン・トロッポ、クワジ・アンダンテ。VnとVcのピツィカートの間、ヴィオラが風変わりな旋律を奏します。やがて三つの楽器が勢いづきますが、穏やかに静かに終わります。第3楽章:ヴァイオリンの速くせわしない動きに始まるスケルツォ、諧謔的な味も濃厚。第4楽章:Tema con variazioni(主題と変奏)、アンダンテ・コン・モト。暗めの緩徐楽章。第5楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ。それぞれの奏者が活発に腕前を披露して終わるようなフィナーレ。なかなか渋い、いい曲を知る、良い機会となりました。

ここで、15分の休憩です。



後半は、モーツァルト。もともとの曲「セレナード第10番」は「グラン・パルティータ」の愛称を持ち、オーボエ2、クラリネット2、バセットホルン2、ホルン4、ファゴット2、コントラバスにより演奏される曲だそうですが、コントラバスをコントラファゴットに代えて13管楽器のためのセレナードとして演奏されることも多いのだそうな。さらに、元来は7つの楽章からなる大きな曲ですので、オーボエ五重奏版として第4曲メヌエットと第5曲ロマンスを省略した5楽章形式での演奏とのことです。
ステージ上は、左からOb:柴田祐太、Vn:中島光之、1st-Vla:倉田譲、2nd-Vla:田中知子、Vc:茂木明人という配置です。
第1楽章:ラルゴ〜モルト・アレグロ、オーボエの音色がいいなあ。葦笛の究極の進化形かも。ObとVn、2本のVla、そしてVcという組み合わせを基本に、Vnと1st-Vlaが組んだり、VlaとVcが組んだり、いろいろな組み合わせでObと対話します。この自在な変化が楽しい。第2楽章:メヌエット〜トリオ。第3楽章:アダージョ、第4楽章:アンダンテ〜アダージョ〜アレグロ、第5楽章:モルト・アレグロ。一気に聴きました。管楽器だけのアンサンブルも魅力的ですが、このような弦楽器との組み合わせもステキです。息の長い、それでいて早口言葉のような表現も得意なオーボエの魅力が、快活で活発な弦楽器の響きの中で一層引き立つように感じます。

聴衆の大きな拍手の後で、倉田さんが次回の案内をしました。次回の第81回定期演奏会は、10月15日(金)、18時45分から、同じく文翔館議場ホールにて。山響の小松崎恭子さんを迎えて、モーツァルトの歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」のフルート四重奏版と、ボッケリーニの弦楽三重奏曲Op.47-3,G.109を予定しているとのこと。さっそく手帳にメモしました!

(*1): ボッケリーニ〜Wikipedia より



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