電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

小和田哲男『戦国の城』を読む

2021年12月07日 06時00分27秒 | -ノンフィクション
昔からなじんでいることでも、どこかに疑問が残ることがあります。例えば大河ドラマなどでの城攻めの場面、「水の手」を落とすことが転機になりますが、山の上の城で「水の手」ってどんなもので、どのあたりにあるのだろうかと不思議です。具体的な城の姿が意外に見えていないということでしょうか。

小和田哲男著『戦国の城』(学研新書)を読みました。構成は次のとおりとなっています。

序章 城とは何か
第1章 戦国の城とはどのようなものか
第2章 戦国の城の築城法
第3章 戦国の城の普請と作事
第4章 戦国の城はどう機能したか
第5章 戦国城下町の発展と惣構
第6章 戦国の城から近世の城へ

興味深い内容がたくさんありましたが、とくに序章の「城とは何か」が興味深いものがありました。堀を掘りめぐらし、掘った土を住居側に盛り上げた形が城の基本であるとした上で、高地性集落と環濠集落に起源を求めます。古くは弥生時代にまでさかのぼり、古代には東北地方の城柵の規模がどのくらいのものであったかを教えてくれます。




南北朝時代以降には、居館とその背後に山城を築き、いざという場合には山城に移って戦うという、いわば防衛拠点であって、平時の居住の場ではなかったらしい。当然、規模はあまり巨大にはなりません。戦国時代には多様な城が築かれますが、山城、平山城、平城という区分の意味と共に、本城と支城、曲輪の配置、濠や馬出の工夫、攻城戦と籠城戦、城下町の意味など、今まで漠然とわかったつもりでいた認識が整理されます。大阪城や江戸城など近世の城は、防衛拠点としての性格から統治の中心としての性格に移っていったこともよくわかります。

ところで「水の手」の件、水源から水を引いていた例もあるけれど、どうやら城の中に深さ数十mの井戸を掘っていたようです。このあたり、築城に関する土木技術もすごいけれど、山の上に井戸を掘り当てる水源探査の能力もすごいと感心します。単なる武力だけではなく、武士とその周辺の技術集団が一体となって戦国の世を戦っていたと考えるのが自然なのかもしれません。


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