電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

仲道郁代『ピアニストはおもしろい』を読む

2023年12月07日 06時00分42秒 | -ノンフィクション
果樹園の作業も終わり、読書の秋ならぬ読書の冬となっております。春秋社刊の単行本で、仲道郁代著『ピアニストはおもしろい』を読みました。仲道郁代さんの演奏は、2008年の5月に、山響第189回定期演奏会の中で飯森範親さんの指揮でショパンの「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」を聴いています。また、山響の新シーズンのラスト、2025年3月に鈴木秀美さんの指揮でベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番が予定されています。そんなこともあって、たまたま目についた本書を手に取り、読み終えたところです。

本書の構成は、次のようになっています。

第1章 ピアノの子[日本編]
第2章 ピアノの子[アメリカ編]
第3章 ピアノの子[ドイツ編]
第4章 子連れピアニストがゆく
第5章 ピアニストと賢者の意思
第6章 社会の中のピアニスト
第7章 ピアニストという生物がいる
第8章 いつも心にピアノ

この中で、ピアノという楽器に触れ、ピアニストになっていく過程での日本、アメリカ、ドイツの教育と環境の特徴が興味深くおもしろい。画一的な面はあるけれど基礎をキッチリ、システマティックにたたきこむ日本、それぞれの美点、持ち味を称賛し伸ばしていく多民族社会の米国、街の生活と環境の中に音楽の歴史が息づくドイツ。なるほど、こんなふうにしてピアニストは育ったのだなあと納得、でも子連れピアニストの生活は大変そうだし、ピアニストの母について歩く子どもも大変そう。

第5章、ピアニストから見た作曲家の本質、特色のところはとても興味深く、参考になりました。モーツァルト、ショパン、ドビュッシー、ベートーヴェン、そしてシューマン。高校生のある時期に、突然、シューマンのピアノ・ソナタ第1番の世界にハマったこと。そして見つけた「クライスレリアーナ」の世界。ちょっと不器用なシューマンの世界に共感するところは、なんだか私も遠い昔を思い出し(*1)そう(^o^)/

こんど、山響と共演する予定のベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番については、第6章255ページで

エドウィン・フィッシャーかどなたか大家が、この曲については「最初のソロを弾いた後、オーケストラの演奏の間ずーっと、自分がいかに下手に弾いたかを反芻させられるからとてもつらい」とどこかに書いておられた。(同感だ!)

とありますが、いやいや、古い歴史の残る山形で温泉に入り美味しいものを食べ、アットホームで前向きなオーケストラと包容力のある聴衆と共に演奏会に臨めば、きっと幸福な気分が味わえますって!



その点はボクが保証します、って李白も寝言で言ってます(^o^)/

(*1): シューマン「ピアノ・ソナタ第1番」を聴く〜「電網郊外散歩道」2007年12月
(*2): ピアノの調律が終わると響きが格段に良くなる〜「電網郊外散歩道」2023年10月



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2 コメント

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Unknown (azumino)
2023-12-07 09:53:50
こんにちは

仲道郁代さんは、今年(2023年)の10月群響定期で、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番を弾いていました。山響演奏会にも登場予定で、人気がありますね。

ご紹介の本ですが、内容がなかなか面白そうで、読んで見たくなりました。ご紹介ありがとうございます。
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azumino さん、 (narkejp)
2023-12-07 13:23:48
コメントありがとうございます。寒くなりましたね。当方、農作業があらかた終わり、冬支度に追われています。そんなわけでお天気が悪いと「読書の冬」になります。本書は、新シーズンのラストを飾るベートーヴェンの4番を楽しみにしている仲道郁代さんをお目当てに手にした本ですが、なかなか興味深く、またクスッと笑ってしまうほどの奮闘ぶりがおもしろかったです。ご本人は「シツレイネ!」と怒るのかもしれませんが、少しばかり共感と親愛の情を含めて、若い頃の仲道さんにはちょっとドジっ子を連想してしまいました(^o^)/
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