電網郊外散歩道

本と音楽を片手に、電網郊外を散歩する風情で身辺の出来事を記録。退職後は果樹園農業と野菜作りにも取り組んでいます。

映画「パブリック」を観る

2020年08月23日 06時02分33秒 | 映画TVドラマ
ようやく週末の休日にたどり着き、「川中島白桃」の出荷の準備で箱やモールドなどの在庫状況を確認点検し、午後から山形フォーラムに出かけ、映画「パブリック〜図書館の奇跡」(*1)を観てきました。

この映画は、米国オハイオ州シンシナティの公共図書館が舞台です。ただでさえ寒い時期に大寒波が襲来し、ホームレスの人たちの中には凍死者が出ているとき、寒さをしのごうと多くのホームレスが図書館にやってきて、一晩泊めてくれと頼みます。これが結果的には主人公の図書館員スチュアートを巻き込んで図書館を「占拠」する事態となってしまいます。市長選へ立候補を目指す検察官は強硬策を主張しますが、図書館側は穏健な解決を望みます。ところが事態は……というストーリーです。

うーむ、新型コロナウィルス禍の渦中とはいえ、いたって平穏無事な日本人的には、警官隊の突入を前にした緊迫感というのは理解されにくいでしょう。米国の日常、とくに大都会においては、「制圧」というのは暴力と流血を意味し、時には死者が出てしまう場合もあると聞きます。ましてや相手がホームレスであれば、容赦ない制圧が行われることは必至でしょう。であれば、多数の犠牲者の発生を回避したあの奇想天外な解決策は、決してお笑いのタネではなくて、本によって命を救われた経験を持つ図書館員の、起死回生の一手だった、ということでしょう。スタインベック「怒りの葡萄」の一節の暗唱は、詩的な名場面であるとともに、教養のないテレビ・レポーターには全く通じないという「分断のジレンマ」をも感じさせます。

題名の「パブリック」について。パブリックとは、この場合、公共と訳せば良いのでしょうか。トランプのアメリカにおいて、公共の場所や政策は該当するすべての人々を対象にするものでなければいけない、という原点を問うものなのかも。

(*1):映画「パブリック〜図書館の奇跡」公式サイト


コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 久しぶりにパスタを作った〜... | トップ | 川中島白桃の季節が来た〜業... »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
秀作です。 (こに)
2020-08-23 11:34:58
>警官隊の突入を前にした緊迫感
映画やドラマの話としか思えなくてピンときません。
そういえば邦題の”奇跡”にも穏便に済ませようとする日本人気質が出ていますね。

手柄をあげることしか考えていないリポーター。
アシスタントの東洋人の若者も少しは良識がありそうで期待しましたが、長いものには巻かれろだったのが残念でした。

返信する
こに さん、 (narkejp)
2020-08-23 19:25:14
コメントありがとうございます。こに さんの記事でこの映画のことを知り、このほどフォーラム山形で観ることができました。新型コロナウィルス禍以来、初めて映画館で観た映画でした。観客はごく少なかったのですが、内容はなかなか良かったです。たしかに、いわゆる「奇跡」ものではなくて、フェイクに抗し「公共」の役割を問う硬派な面もある映画だったと思います。
返信する

コメントを投稿

映画TVドラマ」カテゴリの最新記事