当ブログのカテゴリー「歴史技術科学」の連載記事の関連で、19世紀の日本及び欧米の科学史・技術史・教育史に関する資料を集めて読んでいますが、たまたま某図書館で、明治の工部大学校に関する章を持つ本を見つけました。岩波講座『現代工学の基礎』より、村上陽一郎著『工学の歴史《技術連関系I》』です。
本書の構成は、次のようになっています。
なかなか歯ごたえのある内容ですが、とくに私が知らずにいて、今回あらためて認識したのは、1877(明治10)年の雑誌「ネイチャー」に掲載された、"Engineering Education in Japan" という短信の内容です。
これは、16歳から20歳まで実地の訓練ばかりで理論のない英国の技術教育と、理論ばかりで実地の訓練に欠けているフランスの技術教育の欠点を指摘し、ダイアーらが中心になって推進している、理論と実地とを兼ね備えた日本の工部大学校における系統的な教育を評価するものです。
C.W.C.という署名のある筆者が誰なのかは不明ですが、英国のような歴史に由来する桎梏を持たない、明治の日本のような国だから可能な大胆な挑戦をしている、工部大学校における教育の世界的な意味を指摘するものです。欧米からの日本への影響という面だけではなく、日本が欧米に与えた影響もあった、という指摘は、初めてでした。もちろん、影響の大きさ・広さ・深さの点で、欧米からのほうが圧倒的だったのは間違いないところでしょうが。
本書の構成は、次のようになっています。
序章 技術,工学,科学
1 技術の特殊な形態
2 工学教育と工学者の制度
フランスの場合/ドイツ語圏の場合/イギリスの事情/
アメリカの場合
3 日本の工学の歴史
幕末から維新へ/工学寮と工部大学校/工学の他の流れ
4 初期工学者の系譜
アメリカ電気工学の場合/イギリスの初期工学者/大陸の人々/
日本における初期工学者たち
終章 結語
なかなか歯ごたえのある内容ですが、とくに私が知らずにいて、今回あらためて認識したのは、1877(明治10)年の雑誌「ネイチャー」に掲載された、"Engineering Education in Japan" という短信の内容です。
これは、16歳から20歳まで実地の訓練ばかりで理論のない英国の技術教育と、理論ばかりで実地の訓練に欠けているフランスの技術教育の欠点を指摘し、ダイアーらが中心になって推進している、理論と実地とを兼ね備えた日本の工部大学校における系統的な教育を評価するものです。
C.W.C.という署名のある筆者が誰なのかは不明ですが、英国のような歴史に由来する桎梏を持たない、明治の日本のような国だから可能な大胆な挑戦をしている、工部大学校における教育の世界的な意味を指摘するものです。欧米からの日本への影響という面だけではなく、日本が欧米に与えた影響もあった、という指摘は、初めてでした。もちろん、影響の大きさ・広さ・深さの点で、欧米からのほうが圧倒的だったのは間違いないところでしょうが。