志情(しなさき)の海へ

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『嫌われ松子の一生』の脚本は、再考してみると作為的に思える。家族との関係性の描き方は納得させる。

2017-06-04 16:53:31 | 映画

          (アカギー)

原作の小説を読まなければデスね。映画は転落人生の松子の生き様を甥が追いかけて明らかにしていく筋書きで、ミュージカル仕立てゆえに見せた。中学の音楽教師が教え子の嘘ゆえに仕事を辞めざるを得なかった。

見ながら感動する場面は幾つもあり、その中で違和感を覚えたのが太宰文学に陶酔した作家の卵の男との同棲であり、DVであり、DVの果ての性であり、電車にはねられ殺される場面であり、その後の憔悴した松子に言い寄ったサラリーマン作家の男であり、その男が妻と家族を守るために彼女に手切れ金を渡す場面であり、それらは、既に何度もイメージされた場面かもしれないのだ。実際に愛人の女性と既婚者の男たちとの修羅は延々と続いているのだろう現実!音楽教師で長いこと愛人であったかつての先輩が今どうなっているのか、急に、不倫をしていたかの教師の美しい顔が浮かんできた。教師の退職後の生活は意外と優雅で安定しているのかもしれない。

教え子の嘘で人生が変動していく松子、最後は表道の人生を振り捨ててゴミの山のアパートに暮らし、何とか刑務所で知り合った元AV女優で社長として羽振りのいい友人の名刺を握り締めながら、かつて教えたことのある中学生の年頃の子供達に殺させるような筋書きだ。

最初から女性の転落を物語にする筋書きである。家族は障害があり寝たっきりの妹と、しっかり者の弟がいた。父母はいつも寝たっきりの妹に目が向いている。そうした家族から逃げた松子だった。落ちるところまで落とす作家の筋書きの中で、松子はソープランドで一時売れっ子になる。全身でサービスする仕事の過酷さと見入りの良さ、そこから、殺人、逃亡、自殺未遂、出会い、刑務所、元AV女優の女囚との出会い、出所。

嘘ゆえに平穏な(?)教師の仕事をやめる元になった青年(ヤクザで警察の内偵?)と出会う。彼はあこがれの女教師を陥れた張本人だった。二人の同棲、そしてー、ヤクザ稼業のたいへんさ、全身傷だらけでダメージを受けつつ刑務所の囚人になる運命の教え子(?)。出所した時、迎えに行った松子を見て、男は怖れて逃げた。そして松子は虚無の中に突き進む。愛が(?)、孤独を寂しさを充たす男たちが、姿を消していく。

悲劇調の転落人生物語に見えるが、明日とは希望であり、松子の心の高揚と絶望と機械的な人生も描かれる。音楽がミュージカルのテンポが楽しませる。彼女の人生を追想してみせる主体は甥のアーティスト志望の若者だ。黒いごみ袋がカラスになって飛んでいく映像など、見せる!シュールな松子の人生の幕切れ。53才の若さが哀れに見える。リリシズムが流れる。再会、再遭遇、円環構造のもつよさもある。しかし、なぜ彼女がそこまで一挙に人生を捨てる物語の結末に至らしめたのか、作為的すぎではないのか、と思えてもきた。

最近、4人に1人が貧困家庭だという(?)。元裕福な主婦の転落や、風俗(ソープ)で働く医学部の女子学生や、旧帝大の女性たちの物語もまたネット記事で飛び込んでくる時代である。沖縄では3人に1人が貧困層の子供というデーターが出ている。沖縄の貧困についても、優秀な(?)恵まれた方々の論評が並ぶ。母子家庭が多いという沖縄、東京でも大阪でも同じ現象が膨らんでいるのだろう。なぜ?

松子予備軍は果たして多いのだろうか?日本人女性の自殺率ランキングが世界的に10番以内に入っているのは事実のようだがー(平成28年度で3位)。ソープランドの元男性社長の話では、1時間で2~3万円稼ぐ女性たちは、自給1,000円の仕事から古巣に戻ってくるケースが高いという。そうした女性たちは50代~60代になったら、ある界隈で3,000円から5,000円でサービス業に取り組んだりしているのだという。生きている!

生きているっていいと言える人生で、生きてよかったと言いつつ飛び立てる明日だったらいいと思う。

 


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