(蟋蟀が鳴く草むらに雑草の黄色い花!)
美、仁、柔は名護親方の「琉球いろは歌」の解説で上間氏が強調する概念である。美しき心である。誰の心にもある美への憧憬、美しい風景、自然、心、行い、音楽、絵画、物語、美人、美男などの外見だけではなく、根本にあるのは美しき心である。
この『日本を変えた男』の書とアメリカから送られてきた『Beauty』の書が重なった。
散文詩のように柔らかく書かれたエッセイ集を紐解くと、心が澄んでいくようで、読みながら動悸が高まることが、不思議に思える。一行一行が、精神を鼓舞している。新しい発見にも思えた。すでに無意識に認識していること、感じていることが優しく古今の名言も網羅しながら書かれている。
どんなに耐え難い状況に置かれても、世の中がカオスや汚濁、嘘ペテンに覆われていても、美は心の中に、自然の中に清らかな人々の表情の中に実在する。美しい対象を心に抱きなさい。などの優しいことばは、なぜかハットさせる。赤子にとっては母の顔や声が何にもまさる美だとJohnさんは書いている。たしかにそうに違いない。
読み始めたばかりだが、深夜、心が浄化されていく感覚があったのは事実だ。
名護親方が、美、仁、柔を提唱した背景をもっと深堀してみたい。上間氏の解説を超えたものがありそうだ。清ら、美らは外見を指すのではない、至誠通天の心をまた示唆している。
詩の中にカナブンに、死してなお美しいと書いた。美しい日本という、標語もあった。どうもナショナリズムの匂いがしていたが、普遍的に美について考えてみるいい機会になっている。