たのしい夢日記

京都奈良寺社巡り・思い出・読んだ本…日々のあれこれを写真と共に。

渡辺淳一さん

2014-05-06 23:43:55 | 読んだ本について
渡辺淳一さんが4月30日に亡くなった。

若い頃からよく読んでいた作家だったので、残念な事この上ない。書くものからして、いつまでも気は若く、元気で過ごしていかれると思っていたが、もう80歳にもなっていらしたのだ。

何から読み始めたのかは大体覚えている。「リラ冷えの街」や医学部でのエッセイなど、「北海道もの」からだ。もう30年から前、渡辺さんが書かれたものの多くが北海道ものなのだから、当然なのだが。
主人公は医学部の学生や医師が多く、でも内容はやはり「不倫」、若かった私には、ストーリーは面白かったが納得のいかない部分もあったように思う。

それからこのあたり、渡辺淳一と言えば「失楽園」「愛の流刑地」だろうけれど、それに続くタイプの「ひとひらの雪」あたり。「化身」はちょっとちがうかもしれないが私なりの捉え方としては似ている。女性に振り回される話系。「ひとひらの雪」では振り回されて終わっただけだけれど、「失楽園」では死んでしまって、段々エスカレートしていった、というのか。

渡辺さんはお医者さんのせいで、かえって女性を「恐ろしい」ものとみなす傾向が強いように思う。

初期のエッセイで、子宮破裂をした女性が、もうダメだ、と思っていたのに生き返った、という話を書いておられた事があり、印象に残っている。
「普通人間は血液の三分の一を無くすと死ぬ。男性ならまず間違いなく三分の一で死ぬけれど女性は死なない事がある」と言う事も書かれていて、お医者さんの冷静な目から見ても女性は恐ろしいものと思い、それに引きずられるのが醍醐味で面白い、とみておられる気がしていた。
「失楽園」はたいそう評判になったけれど、私はあまりピンとこなかった。破滅・破壊願望は、あまりない方なので。







こちら関西に暮らすようになってからは、このあたりを面白く読んだ。「化粧」は渡辺さんが初めて、「京言葉を自信をもって書けた」という作品だそうで、京都好きの私には読みどころ満載の作品。
先日御室の桜を見に行った帰り、嵐電の駅のホームで年配の女性二人が花見の場所の話をしていた。

「原谷が…そうやねん、昔は違ったけどなあ、なんか小説で書かれてから急に有名になって人が行くようになった。昔はそんなに人来なかったけどなあ」

ああ、「化粧」の出だしとラストのことだな、と私にはすぐわかった。原谷の桜を四姉妹が見に行くシーンだ。確かにその場面を読むと、着物姿と桜の美しいありさまを想像でき、行ってみたくなる。行ったことはないけれど。

「君も雛罌粟、われも雛罌粟」は主人公が堺出身の、私の大好きな与謝野晶子。以前に田辺聖子さんの書かれた与謝野晶子が主人公の小説を読んでいたが、ずいぶん感じが違って面白い。女性から見た晶子と男性から見た晶子の違いでもあろうか。
不思議に、渡辺さんの方が「らしい」晶子のように思った。
与謝野晶子の魅力は良く言われる「情念」より「生命力」と思うのだけれど、それが良く描かれている気がしたので。




これは面白いエッセイで、食いしん坊で料理好きの同居人もお気に入りの本。これを読んで「イクラの醤油漬け」を作りたいと何年も言っている。

随分と北海道の食べ物ひいきのエッセイになっているが、食べ物の記憶はソウルフードからなかなか離れられないもの。
無論私のソウルフードともかぶってくる。ジンギスカン、鮭、味噌ラーメンなど…小説の中でも、この人は美味しそうな料理の描写をするが、エッセイでもそう。

最近の小説はあまり私の趣味とは合わなくなってきているのだけれど、エッセイはどうなのか、探して読んでみようかな?などと考えている。
コメント
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