たのしい夢日記

京都奈良寺社巡り・思い出・読んだ本…日々のあれこれを写真と共に。

関西が舞台のお話。

2011-09-19 19:16:34 | 読んだ本について
大阪駅も変わったものだ。

私が初めて来た頃から、ずいぶん最近まで、大阪駅はやたら天井の低くて込み入ったところ、と言うイメージだった。

今年の春に改装が完成しこの大屋根や、時空の広場なんかが出来、すっかり現代的に生まれ変わった大阪駅、どことなく京都駅に感じが似ている。京都駅も古都の駅とは思えぬ斬新な建物だが、この「上に伸びてってる」様子は大阪駅も京都駅も共通。それは横には広げようがないからかもしれないが。







さて、先月帰省した折、自室の押し入れに入りこんで私がせっせとしたことの中に、昔読んだ本を取り出してまた読みたいのを取りのける、という作業があった。
アマゾンなんかで手に入れる事ができるものもあるが、せっかくまだあるものなら大阪に送ろう、と決めていたのだ。



田辺聖子さんの、このあたりの本はそうとう昔のものなので手に入れづらいのだが、なぜかここの所、新しく版を重ねているものもある。なんでも最近になって女性に人気が出てきたとか…30年位昔のものが多いのだが、今読んでみてもあまり違和感がないのが不思議。だからころ新版が出てきているのだろうが。
ちゃんと段ボールに入って傷んでもいないので私は「旧版」を持って帰ることにする。



「言い寄る」「私的生活」「苺をつぶしながら」この三部作はお気に入りだったので、こちら大阪で全部そろえた。

田辺さんの小説はみな、関西が舞台である。

北海道にいて読んでいた頃は、「関西ってこんなとこなんだ」という、どちらかといえば2次元的な感想を抱きながらの読み方であったが、関西に実際引っ越してきてからはそれが3次元的になり、「関西の雰囲気」が読んでいるあいだに実感として立ち上がってくる。

ちょっとしたことなのだが、たとえばヒロインが冬の寒い日、ミナミの戎橋で、彼氏と「あつっ」と言いながらたこ焼きを食べる場面
関西に来るまでは、外がぱりっ、中はトロトロのアツアツのたこ焼きなど知らなかったから、「そんなにたこ焼き熱い???」と思って読んでいたものだ。北海道でも今は関西風のたこ焼きが食べられるそうだけれど、昔は外側も中身も同じような感触のたこ焼きしかなかったからだ。
関西に来て少したって、たこ焼き食べて舌をやけどしそうになって初めて、冬にたこ焼きで暖をとるカップル、が理解できたというわけだ。
(そのたこ焼きはほんとうに熱かった。口の中に全部入れちゃったから出すわけにもいかず目を白黒させてたものだ)

そのほかにも、彼氏との待ち合わせが、川の流れるまち、というキャッチフレーズの、阪急三番街の喫茶店だったり…このあたりは、大阪駅の近く、転勤になる前はよく通っていたところなので感じがよくわかる。
(正直、雰囲気はよろしいが、この川がなければもっとレストランひとつひとつが広く取れるのに、というとこである)

田辺さんは食べ物の話をよく書かれる方、美味しいおでんが有名な「たこ梅」、うどんすきが絶品の「美々卯」なんかも出てきて、読んでいるだけで行きたくなってしまう。実際行ったことがあるところなので、美味しさがわかっているから尚更である。
関西と言ってもどちらかと言えば、おしゃれな神戸なんかはまた違う雰囲気だけれど、大阪の庶民的で気取らない感覚は田辺さんの小説で楽しめる部分のひとつだ。


湿気の多い気候で紫陽花が美しい、とかなめくじがでる、とかも…実際梅雨時に家の玄関でなめくじを見た時はまじまじ観察してしまった。北海道では見たことがなかったからだ。ホントにかたつむりの中身、という外見だったがぶきみである。
ヒロインが信州へ行ったときに、関西の、どこかおどろおどろしい木々とは全然違う、淡い緑の木々や白樺に感心する場面があるのだが、確かに、先日帰省した時に同じような事を感じた。信州と北海道は結構似ているので。


しかしながら、恋愛模様(このあたりはみな恋愛ものなので)の、特に20代、30代独身のヒロインの心の動きとか、なんかについては…さすがにこのトシでは、もうすでにピンとこない。そういえば昔はこんな感じ方もしたよな、程度の懐かしさを覚えるくらいである。
田辺さん自身、「以前のような恋愛もの書いて下さい、と言われるけれど、もうこの年齢ではキツイ」と書いておられた。

読む年齢によって感じ方が違うのは当然だろう。経験値も違っているのだから…しかし、昔はすっかりヒロインに感情移入しきって読んでいたものが、今では「懐かしい気持ちの動き」位になってしまっているのはまた、ちょっとした寂しさがある。
今ではたこ焼きとかうどんすきのほうに感情移入しているのだ





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お袋の味

2011-09-13 01:04:30 | 母の記憶
土曜日の夜には同居人と、よく近所の蕎麦屋や焼き鳥屋で晩御飯を食べることがある。

先週の土曜日は「わたみんち」で。ここの「蕎麦茶」がお酒の全く飲めない私にはちょうどいい。

旬の秋刀魚の炭焼き、焼き鳥など。そして居酒屋メニューは濃い、くどいものが結構多いから、大抵私は茄子の浅漬けを頼む。

そこで思い出した。私が茄子の浅漬け好きなのは、昔母が作っていたからだ。
母はキャベツや胡瓜、茄子の浅漬けを作って、袋に入れて店で売っていたのだ。むろん家でも食べた。居酒屋で出てくる長茄子のスライスしたものではなく、かなり小振りの茄子で、食べるときは半分に切った形で食べていた。

そこで思ったのが、いわゆる「お袋の味」だ。

作家の渡辺淳一が、母の作る美味しいイクラは、母が亡くなってしまってからはもう、味わえなくなってしまった、と言う事をエッセイに書いていたのだが、そういうのが「お袋の味」であろう。その人しか出せない味だ。
しかしながら、私が茄子の浅漬けが好き、と言うのはそれとはちょっと違うだろう。昔母が作ったものはもう味わえない、というような感じ方ではないからだ。

そういったものは…つまり、母でしか出せないような味のもので、今は食べれられないようなものは…あまりないようである。


「渡辺淳一の『母のイクラ』みたいな、お袋の味ってある?」と同居人に聞いてみる。

「自転車で魚を売りに来るおじさんがいたんだけど、その人が来るのが楽しみだった。父親が道楽で囲炉裏を作ったから、そこで鮎を焼いて食べた」

焼いて食べた魚はお袋の味とはいえないだろう。「懐かしい故郷の味覚」というものだろう。

「もつ煮を食べたな」

うんうん、それならお袋の味っぽい。

「俺が作ったんだ」

「じゃあ『俺の味』じゃあないの?」

「まあ、そうだなあ」

「あとは?」

「ゆで卵ダイエットと鶏肉ダイエットで、一緒にゆで卵とか鶏のムネ肉食べた」

…それは「お袋の味」から相当ずれているような…

「だからやっぱり、お袋の味ってないなあ」

ウチの母も、同居人の母親も、どちらも家が店や会社で、忙しい日々を送ってきた人たち、あまりじっくり料理に向き合う時間はなかったせいだろう。


さて、今日は中秋の名月。
中秋の名月はいつも満月なのかと思ったらそれは関係ないそう。今年はたまたま満月に当たったと言う事らしい。お月さまは真ん丸である。





白玉粉を買ってきて、お月見団子を作ってみた。ススキも飾る。
本当なら三方に山形に載せるものだろうけれど、そんなに作ったら食べきれない。というかあれは飾りだけなのか?

ウサギ型のものの周りを団子で囲い、なんだか寂しいのでベランダからゴーヤの花と若い葉をつんで飾ってみる。ウサギの目は紫蘇の葉だ。なかなかかわいらしく出来た。

団子を丸めながら思ったのは、「これを最後にしたのは母といっしょだったな」と言う事。別に月見に関係なくよく作っていたおやつだった。

まだ実家にいた時の事だから、学生時代かもっと前の子供の頃かもしれない。
一人暮らしの時に団子作って食べたりしないし、オーストラリアでやってたらびっくりだ。
大阪に来てからも作ったことはない。

子供の頃は白玉団子を丸めるのが楽しかったものだ。丸めて、親指でくぼみをつけて、できたものから鍋に放り込む。
「耳たぶくらいだよ」と母が教えてくれたその感触はよく覚えているものだ。
そうそう、こんな感じ。


今日は月見団子だから、真ん丸に仕上げる。
なんでまたくぼみをつけたんだろ?と今更ながらに思うが、おそらく、餡子でなく砂糖蜜で食べていたので、絡みやすくしたものなのだろう。さて、これは祖母がそうやっていたのだろうか?
母と二人でしていた時はなんの不思議もなかったのだけれど。

帰ってきた同居人も月見団子を見て喜び、テーブルに飾って、紫蘇の目のウサギを食べてみる、という。甘いものはあまり、それも和風のは食べない人なのだが珍しかったからだろう。

餡子は嫌うので、砂糖蜜を作って、「これならあんまり甘くないから」と勧める。

「昔はこうして母親と白玉団子を作って、餡子じゃなくて砂糖蜜で食べたんだよ」

「『お袋の味』か!?」

それもちょっと違うような…そうなのかな…


母はあの世で今日白玉団子を作って食べただろうか?くぼみのある団子を。
明るい月空を見ながら考える。雲はずいぶんあるけれど、雲のある方が月夜は良いものだ。

つい最近、知っている人がまた、そちらに行ってしまったけれど…月見団子でもてなしてあげてほしいな、などと思う。まだそちらの生活には慣れていらっしゃらないだろうから。





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