大徳寺納豆というのは、名前は知っていたが食べたことはなかった。
甘納豆のように乾いていて、でも味はしょっぱい。知識はそれだけ。(美味しんぼより)
今年は、大好きな京都でも、回っていなかった所を歩いて撮影の旅をしているが、大徳寺は有名だけれどもあまり食指が動かなかった。
こちらも知識としては、
豊臣秀吉が織田信長の葬儀を行った。
山門に千利休の像が置かれて、それを口実に切腹を言い渡された。
位のところ。
お盆中にはどこに行こうかな、と思っていつもの「歩く地図」をあれこれひっくり返してたまたま大徳寺の欄を見ると、「高桐院には細川ガラシャの墓がある」との事。
そうだったんだ、では行かなくては。尊敬する女性の一人である。
そして、「そうだ、大徳寺納豆を買って来よう!」
相当ずれた理由二つだが…。
北大路駅からバスに乗ったら、結構な雨になった。
傘さして写真撮影は厳しいが、雨も雰囲気があってよいだろう。
お寺といっても、ここは「禅寺集合体」みたいな感じ、広い寺域に、いくつもの建物「塔頭」がある、という作り。塔頭も全部を公開している訳ではない。
行ったのは大仙院(国宝で写真は撮れず)、高桐院、竜源院の三つ。
禅寺というのは、石庭で有名な竜安寺もそうだが、シンプルの極み。色は緑のみ、あとはモノトーン。いっそ、「おしゃれ」といってしまいたいくらいのセンスの良さ。
大仙院、竜源院などの庭はそういう作りになっている。
私の行きたかった高桐院は、秋に訪れたらさぞ美しいだろう、と思われる。さびしげな庭にたくさんの青もみじ、苔も青々して、静かな良い庭だった。
細川忠興とガラシャ夫人の墓も実に質素で、千利休から贈られたという灯籠を使ったという小さなもので、ひっそりとした庭の片隅にあった。
雨が幸いして静かな時を過ごせた。こういうのも悪くないものだ。写真も面白いものが撮れたし、何と言っても人が少ない京都なんて珍しいのだから。
さて、あとは大徳寺納豆だ。
寺までの道には、鉄鉢料理(禅寺のお坊さんが食べるという精進料理)の店があるのでその一つに寄ってみる。
これは普通の精進料理セットで、鉄鉢料理は小さい丸い鉢にこまごま盛るもののようだ。これも相当こまごましてたけど…精進料理だから、肉類はないけれど結構揚げ物が多いので、カロリーはありそうな気がする。どれも小振りだからくどいことはないし、色々な味を楽しめてよかった。
近くの酒屋さんで大徳寺納豆を店の前で売っていたので購入。いかに体に良いか説明もしてくれる。
「ベンピが治った言うて喜ばれましてん」
ははあ…
お坊さんの大事なタンパク源だったというが、確かにベジタリアンは豆食べるもんね。
その上保存も相当長く出来るそう。ちょっと味見させて頂くと、しょっぱい…納豆というよりは味噌の味。
「だし巻に入れたら美味しいですよ」
なるほど、味付けに使えそう。そのまま食べるのはちょっと無理かな。
京阪で帰ることにして祇園あたりで「デザートでも欲しいかも?」と急に思い立つ。「都路里」は当然のことながらいつものように2階へ続く階段、歩道までぎっしり並んでいるから問題外。
ここもいつも入れないけど…鍵善に行ってみる。
「6時で閉店ですけどよろしいですか?」今は5時半。食べ物屋さんが6時閉店て???お菓子売ってるコーナーも???
老舗は余裕。
以前から食べたいと思っていた、ここの定番メニュー、葛きりはさすがに美味しかった!筒みたいなものをどーんと置かれ、開けてみると一番上が黒蜜の入れ物、外すと水に入った葛きり。涼しげで、夏に最高の和菓子デザートじゃないだろうか、見た目も。
関西に来たときには「葛」も謎の食べ物だったけれど、今ではすっかりお好みのひとつ。
ほんの数時間の、夏雨の京都散策の締めとして涼しいデザートというのもなかなか。
デジブック 『京都・雨の日。』