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星美学園短期大学日伊総合研究所第12回公開講演会「ルネサンスとは何か」に行ってきました(2015.7.16)
星美学園短期大学日伊総合研究所の公開講演会には毎年行っておりますが 今年はNHKラジオ「24人の美女」の講師の池上英洋先生(東京造形大学准教授)とあり 会場には大勢の方が詰めかけ(今年から事前予約制を取りました) また会場でもばったりたくさんの方にお会いできて この場で知り合いになった方々と皆で終了後早速お茶しました♪
また今年は星美学園創設者ドン・ボスコ生誕200周年の年でもあります 開催中のミラノ万博でもこちらの卒業生の方々がアテンダントとして活躍されてらっしゃるそうで素晴らしいですね
講演会では ルネサンスはなぜ始まったか 社会と美術との関係 そしてなぜ終わったか について見てゆきました
講演はまず シエナのカンポ広場の写真から始まりました このシエナの大聖堂と フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラ(当時困難とされたがブルネレスキによってかけられた)を巡ってのいきさつや シエナとフィレンツェとの闘いの歴史にも触れました
プロ・ルネサンス期は14世紀にほぼ相当する中世末期で その後のルネサンス時代は15世紀から16世紀初め 120年間程続いたのですが 1520年 つまりラファエロ・サンツィオが亡くなった年で区切られているのですね
ラファエロの死とともにルネサンスが終焉したこと ダ・ビンチが宮廷画家になる夢はフランスでしか叶ええなかったこと (彼はイタリアではなくフランスで亡くなっています) 感慨深いものがあります
中世は 教会と君主と騎士階級(貴族)が支配していましたが 商人が台頭してゆき 大ギルド(arte,同業組合)によって都市が運営され 自治都市国家(コムーネ/comune)が成立してゆきました
ギルドは価格カルテルだけでなく その職業に就こうとする人に対する許認可システムでもあり またルネサンス時代の芸術パトロンでもありました
「外国人には利子を付けて貸してもよいが 同胞には利子を付けて貸してはならない」とのきまりにより 自然とユダヤ人の人口が少ないため高利貸しのイメージが作られていってしまったと 先日「ボッティチェリとルネサンス展」や「ルーブル美術館展」などでも公開された「高利貸し」の絵と共にわかりやすくご説明いただきました
また コジモ・デ・メディチの時代のフィレンツェ共和国では 9人委員会という意志決定機関がありましたが なんと2ヶ月で改選されていたそうで 目まぐるしいですね
また 先生のNHKラジオ講座「描かれた24人の美女(24 bellezze nell'arte)」第7課にも出てきたマザッチォ(Masaccio)の「楽園追放(Cacciata dall'Eden)」も紹介されました
このマザッチォの絵はとても激しい感情が現れていますが ルネサンスの時代は 「空間性」「人体把握」そして「感情表現」の3要素が生まれたことが示されました (ラジオ講座聞いておいてよかった~)
ルネサンス(Renaissance/再生、復興を意味するフランス語)はイタリア語では rinascere(再び生まれる)の名詞形のrinascimentoですが 古代ギリシャと共和政ローマの理想化であり 古代再評価運動でもあったわけです
ルネサンス以前の中世を 停滞した時代 暗黒時代とみなす見方もあります
(14世紀後半から16世紀にかけて イタリアを中心に興った文学、思想、芸術の運動、古典古代のの学芸復興と人間性の回復などに特色がみられ、近代文明の黎明期にあたる/伊和辞典)
そして やはり先日の展覧会でも見た「大天使ラファエルとトビアス」の絵が紹介され 大天使ラファエルが 高利貸しの息子が目の見えない父に代わって取り立てに旅立つ際の付き添いとなった時の様々なエピソードが紹介されました
当時は高利貸しのイメージを払しょくするために「両替商」 「為替商」が生まれ 100フィオリーニ(フィレンツェの通貨)を貸して110ドゥカーティ(ヴェネツィアの通貨)で返してもらい 為替変動を利用して収益をあげてゆく方法が取られ 為替手形も生まれました
さていよいよ なぜそのルネサンスが終わったかについて 「航海図」(1457)を見ながらご説明いただきました
大航海時代に スペインやポルトガルが世界に出てゆき 地中海の中心に位置する地理的優位性があったイタリアの経済は衰退してゆき やがてメディチ家が没落してゆきますが それを当時のメディチ家の納税額と年収との比較でもって またトスカーナの銀行の数が減少したことでもって明らかにされました
共和制の放棄と 宗教改革 教皇庁批判の版画が広まったことや あのサヴォナローラが預言者としてこの時代の芸術家たちに影響を与えるも やがて破門され処刑されたこと(1498) また傭兵制度のデメリットにより戦争が長引き 1500年にフランス軍によりミラノが占領され やがてイタリアからフランスに中心が移ってゆきますが 宗教改革 1492年の新大陸発見 1519年のダビンチの死そして1520年のラファエロの死でもって ルネサンスが終焉するという この壮大な歴史の流れにしばし身を置きました
先生ご自身がイタリア各地で写された 聖遺物(拝むことにより煉獄から早く天国に行かれるとされた)や建物の写真もご紹介いただき 大変に充実した密度の濃い2時間の講演でした
また NHKラジオ講座では収録から放送までタイムラグがありますが 講演ではとってもタイムリーな話題もあり思わず苦笑い(;'∀')
先だって美術館や講演会等で色々見たり聞いてきたことが少し役立ちましたが 個々の画家の作品を楽しんで見るだけでなく 歴史の流れの中でルネサンスの全体像を理解してゆけば いつかはパズルがはまるのかなと思いつつ この講演もまた その大きな助けになったと感じています
終了後にはサインまでいただき お話もできて 実に充実した講演会でした
素晴らしい公開講演会を開催してくださいました 星美学園短期大学日伊総合研究所の皆さま 本当にありがとうございました
このテーマがよくわかる池上先生の一冊は 「ルネサンス 歴史と芸術の物語」(光文社新書)
* * *
また秋には 日伊総合研究所主催の イタリア美術等の公開講座もあります:
10/3(土) 「ミケランジェロの芸術」 10/24(土)「ルネサンスの異教文化」 11/14(土)「イタリア食文化の旅」 2016/1/23(土)「アッシジのフランチェスコ」
すべて午後2~4時 2,500円(4講座すべてを取る場合8,000円)
詳しくは こちら
公開講演会の 開催のお知らせは こちら
日伊総合研究所のリポートは こちら
帰りは赤羽駅まで坂を下るのは楽ですが 行きは坂を登るのはきついですね~ でもいい眺めです♪
掲載を許可いただきました 星美学園短期大学日伊総合研究所様に心よりお礼申し上げます
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星美学園短期大学日伊総合研究所の公開講演会には毎年行っておりますが 今年はNHKラジオ「24人の美女」の講師の池上英洋先生(東京造形大学准教授)とあり 会場には大勢の方が詰めかけ(今年から事前予約制を取りました) また会場でもばったりたくさんの方にお会いできて この場で知り合いになった方々と皆で終了後早速お茶しました♪
また今年は星美学園創設者ドン・ボスコ生誕200周年の年でもあります 開催中のミラノ万博でもこちらの卒業生の方々がアテンダントとして活躍されてらっしゃるそうで素晴らしいですね
講演会では ルネサンスはなぜ始まったか 社会と美術との関係 そしてなぜ終わったか について見てゆきました
講演はまず シエナのカンポ広場の写真から始まりました このシエナの大聖堂と フィレンツェのサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラ(当時困難とされたがブルネレスキによってかけられた)を巡ってのいきさつや シエナとフィレンツェとの闘いの歴史にも触れました
プロ・ルネサンス期は14世紀にほぼ相当する中世末期で その後のルネサンス時代は15世紀から16世紀初め 120年間程続いたのですが 1520年 つまりラファエロ・サンツィオが亡くなった年で区切られているのですね
ラファエロの死とともにルネサンスが終焉したこと ダ・ビンチが宮廷画家になる夢はフランスでしか叶ええなかったこと (彼はイタリアではなくフランスで亡くなっています) 感慨深いものがあります
中世は 教会と君主と騎士階級(貴族)が支配していましたが 商人が台頭してゆき 大ギルド(arte,同業組合)によって都市が運営され 自治都市国家(コムーネ/comune)が成立してゆきました
ギルドは価格カルテルだけでなく その職業に就こうとする人に対する許認可システムでもあり またルネサンス時代の芸術パトロンでもありました
「外国人には利子を付けて貸してもよいが 同胞には利子を付けて貸してはならない」とのきまりにより 自然とユダヤ人の人口が少ないため高利貸しのイメージが作られていってしまったと 先日「ボッティチェリとルネサンス展」や「ルーブル美術館展」などでも公開された「高利貸し」の絵と共にわかりやすくご説明いただきました
また コジモ・デ・メディチの時代のフィレンツェ共和国では 9人委員会という意志決定機関がありましたが なんと2ヶ月で改選されていたそうで 目まぐるしいですね
また 先生のNHKラジオ講座「描かれた24人の美女(24 bellezze nell'arte)」第7課にも出てきたマザッチォ(Masaccio)の「楽園追放(Cacciata dall'Eden)」も紹介されました
このマザッチォの絵はとても激しい感情が現れていますが ルネサンスの時代は 「空間性」「人体把握」そして「感情表現」の3要素が生まれたことが示されました (ラジオ講座聞いておいてよかった~)
ルネサンス(Renaissance/再生、復興を意味するフランス語)はイタリア語では rinascere(再び生まれる)の名詞形のrinascimentoですが 古代ギリシャと共和政ローマの理想化であり 古代再評価運動でもあったわけです
ルネサンス以前の中世を 停滞した時代 暗黒時代とみなす見方もあります
(14世紀後半から16世紀にかけて イタリアを中心に興った文学、思想、芸術の運動、古典古代のの学芸復興と人間性の回復などに特色がみられ、近代文明の黎明期にあたる/伊和辞典)
そして やはり先日の展覧会でも見た「大天使ラファエルとトビアス」の絵が紹介され 大天使ラファエルが 高利貸しの息子が目の見えない父に代わって取り立てに旅立つ際の付き添いとなった時の様々なエピソードが紹介されました
当時は高利貸しのイメージを払しょくするために「両替商」 「為替商」が生まれ 100フィオリーニ(フィレンツェの通貨)を貸して110ドゥカーティ(ヴェネツィアの通貨)で返してもらい 為替変動を利用して収益をあげてゆく方法が取られ 為替手形も生まれました
さていよいよ なぜそのルネサンスが終わったかについて 「航海図」(1457)を見ながらご説明いただきました
大航海時代に スペインやポルトガルが世界に出てゆき 地中海の中心に位置する地理的優位性があったイタリアの経済は衰退してゆき やがてメディチ家が没落してゆきますが それを当時のメディチ家の納税額と年収との比較でもって またトスカーナの銀行の数が減少したことでもって明らかにされました
共和制の放棄と 宗教改革 教皇庁批判の版画が広まったことや あのサヴォナローラが預言者としてこの時代の芸術家たちに影響を与えるも やがて破門され処刑されたこと(1498) また傭兵制度のデメリットにより戦争が長引き 1500年にフランス軍によりミラノが占領され やがてイタリアからフランスに中心が移ってゆきますが 宗教改革 1492年の新大陸発見 1519年のダビンチの死そして1520年のラファエロの死でもって ルネサンスが終焉するという この壮大な歴史の流れにしばし身を置きました
先生ご自身がイタリア各地で写された 聖遺物(拝むことにより煉獄から早く天国に行かれるとされた)や建物の写真もご紹介いただき 大変に充実した密度の濃い2時間の講演でした
また NHKラジオ講座では収録から放送までタイムラグがありますが 講演ではとってもタイムリーな話題もあり思わず苦笑い(;'∀')
先だって美術館や講演会等で色々見たり聞いてきたことが少し役立ちましたが 個々の画家の作品を楽しんで見るだけでなく 歴史の流れの中でルネサンスの全体像を理解してゆけば いつかはパズルがはまるのかなと思いつつ この講演もまた その大きな助けになったと感じています
終了後にはサインまでいただき お話もできて 実に充実した講演会でした
素晴らしい公開講演会を開催してくださいました 星美学園短期大学日伊総合研究所の皆さま 本当にありがとうございました
このテーマがよくわかる池上先生の一冊は 「ルネサンス 歴史と芸術の物語」(光文社新書)
* * *
また秋には 日伊総合研究所主催の イタリア美術等の公開講座もあります:
10/3(土) 「ミケランジェロの芸術」 10/24(土)「ルネサンスの異教文化」 11/14(土)「イタリア食文化の旅」 2016/1/23(土)「アッシジのフランチェスコ」
すべて午後2~4時 2,500円(4講座すべてを取る場合8,000円)
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帰りは赤羽駅まで坂を下るのは楽ですが 行きは坂を登るのはきついですね~ でもいい眺めです♪
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