尊厳死がテーマのイタリア映画DVD「眠れる美女(bella addormentata)」(2012年、マルコ・ヴェロッキオ監督)を見ました
愛すればこそ 生かそうとするのか それともー
イタリアの巨匠べロッキオが描いた 眠り続ける女をめぐる 三つの愛の物語
妻を看取った政治家と そんな父に不信感を持つ娘 昏睡する娘の目覚めを願う元女優 自殺願望のある女を救おうとする意志
この3組の物語を同時展開させ 生と死を見つめるまなざしを 丹念に追う...
大変スリリングな内容の問題作 実話に基づいた説得力のあるストーリーです
実在の事件と絡ませて 妻の延命措置を停止した経験を持つ国会議員と 延命停止に反対するその娘マリア
その彼女がそれと反対のデモ団体に所属する青年に恋をしてしまい...
伝説的な女優が 昏睡状態の娘の看病に専念するために輝かしいキャリアを捨てるも 家族を顧みないことによって息子と夫はやがて...
薬物中毒の女ロッサは自殺未遂を繰り返し 医師のパッリドがそれを阻止しようと試みるが...
この3つのストーリーが同時展開するというスリリングな作品です 中立ということはありえないとの監督の言葉は重いです
*エルアーナ事件... 交通事故で植物状態となってしまった少女エルアーナの両親は 延命措置の停止を求めて裁判を行う
2008年に最高裁がその訴えを認めるが カトリック信者や尊厳死反対の保守層からの支持を集めるベルルスコーニ首相は
彼女の延命措置を続行させる動きに出た
2013年 家族の介護を一年前に終えていた私はようやく このイタリア映画DVD「眠れる美女(bella addormentata)」(2012年、マルコ・ヴェロッキオ監督)を見ることができました
マルコ・ベロッキオ監督の作品で 監督の息子ピエール・ジョルジォ・ヴェロッキオが作品中にPallido(青白い)医師として出演しています
また 同監督の代表作「夜よ、こんにちは」(2002年、マルコ・ヴェロッキオ監督)に出ていたヒロイン役のマヤ・サンサが これまた強烈な役どころのダーク・ヒロインとして出演していますし また「ゴモラ(Gomorra)」「追憶のローマ la grande bellezza」に出演していた渋い演技で有名なトニ・セルヴィッロも メインテーマであるエルアーナの安楽死を阻止するための議員投票に 不治の病に苦しむ妻の依頼で安楽死に加担した過去のある議員役で出演し さらにその娘役では「ボローニャの夕暮れ」(2008)で 精神の病を抱えた娘役で出ていたアルバ・ロルヴァケルが出演しているとあり 見ながら あっこの人はどこで見た俳優だろうか...としばし悩むことしきりでした
この議員が頼る精神科医には老優ロベルト・ヘルリッカが演じていました そう この人は「夜よ、こんにちは」で殺害されるアルド・モーロ首相を演じた老優です(「赤鉛筆、青鉛筆」のフィオリート先生役でもありましたね) 枯れた老木のような魅力を放っていますね
この映画は尊厳死の是非が問われたエルアーナ事件として有名な実話に基づき作られたもので ベルルスコーニ首相の演説シーンは
当時のフィルムを使ったのだろうと思いますが なかなか説得力がありました
この3つのオムニバス形式で語られるエピソードはベロッキオ監督の創作ですが 特に私が気に入ったのは 修道女のような娘マリア(議員の娘で重病の母親の依頼で父親が尊厳死に手を貸したことにこだわりを持つ)が 尊厳死問題では反対の立場にいる青年ロベルトに その強烈な存在でもって二人の出会いのシーンを作り上げた弟の あっけに取れられるような行為によって衝撃的な出会いを果たし あっというまに燃え上がりそして別れる...そのストーリーの流れ
あるいはまた 聖女のようでありたい さもなくばエルアーナ同様 床に伏したままの愛娘ローザの看病生活を続け演じ切る自信がないという元大女優の母親(イザベル・ユペール) そして彼女からはもはや冷たい視線を投げられるだけの夫と息子も含めた ひとりの床に臥す娘をめぐって繰り広げられる家族の葛藤
あるいはまた 何度でも死のうと試みる とんでもなく捨て鉢な女ロッサ(マヤ・サンサ演じる)をそれでもなお懸命に救おうとする 側に付き添う若きパッリド医師(ヴェロッキオ監督の息子ピエール・ジョルジォ・ヴェロッキオ演じる) なかなかに惹かれる俳優ですが その3つのオムニバスが繰り広げるドラマの中でも特に それは 息を吹き返した直後に窓から飛び降りようとする女の頬を叩き諭す若き情熱的な医師Pallidoの「まだ痛みを感じるだろ 誰だって死のうとしている人を見たら助ける それだけだ」という強い言葉でした
そして捨て鉢なロッサはやがて 少しずつ変わって行きます (マヤ・サンサは「輝ける青春」にも出演していますが 大分感じが変わっていますね)
たとえどんな状態でも生きる価値があるのか 尊厳死の是非なども含めて 家族といろいろな話ができるきっかけとなった映画でした
人生の損得勘定ではない そこに生まれた運命を受け止める力を持つこと あるいは自分の職責 それも人の運命を左右する大きな権限を持つ職責に 自分のプライベートな問題がどれだけ影響するのかということも含めた 多くのことを考えさせてくれる作品でした
映画は こちら
また イタリアでは ひとりの男性の安楽死をきっかけに 2018年に尊厳死法が施行されたそうです
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愛すればこそ 生かそうとするのか それともー
イタリアの巨匠べロッキオが描いた 眠り続ける女をめぐる 三つの愛の物語
妻を看取った政治家と そんな父に不信感を持つ娘 昏睡する娘の目覚めを願う元女優 自殺願望のある女を救おうとする意志
この3組の物語を同時展開させ 生と死を見つめるまなざしを 丹念に追う...
大変スリリングな内容の問題作 実話に基づいた説得力のあるストーリーです
実在の事件と絡ませて 妻の延命措置を停止した経験を持つ国会議員と 延命停止に反対するその娘マリア
その彼女がそれと反対のデモ団体に所属する青年に恋をしてしまい...
伝説的な女優が 昏睡状態の娘の看病に専念するために輝かしいキャリアを捨てるも 家族を顧みないことによって息子と夫はやがて...
薬物中毒の女ロッサは自殺未遂を繰り返し 医師のパッリドがそれを阻止しようと試みるが...
この3つのストーリーが同時展開するというスリリングな作品です 中立ということはありえないとの監督の言葉は重いです
*エルアーナ事件... 交通事故で植物状態となってしまった少女エルアーナの両親は 延命措置の停止を求めて裁判を行う
2008年に最高裁がその訴えを認めるが カトリック信者や尊厳死反対の保守層からの支持を集めるベルルスコーニ首相は
彼女の延命措置を続行させる動きに出た
2013年 家族の介護を一年前に終えていた私はようやく このイタリア映画DVD「眠れる美女(bella addormentata)」(2012年、マルコ・ヴェロッキオ監督)を見ることができました
マルコ・ベロッキオ監督の作品で 監督の息子ピエール・ジョルジォ・ヴェロッキオが作品中にPallido(青白い)医師として出演しています
また 同監督の代表作「夜よ、こんにちは」(2002年、マルコ・ヴェロッキオ監督)に出ていたヒロイン役のマヤ・サンサが これまた強烈な役どころのダーク・ヒロインとして出演していますし また「ゴモラ(Gomorra)」「追憶のローマ la grande bellezza」に出演していた渋い演技で有名なトニ・セルヴィッロも メインテーマであるエルアーナの安楽死を阻止するための議員投票に 不治の病に苦しむ妻の依頼で安楽死に加担した過去のある議員役で出演し さらにその娘役では「ボローニャの夕暮れ」(2008)で 精神の病を抱えた娘役で出ていたアルバ・ロルヴァケルが出演しているとあり 見ながら あっこの人はどこで見た俳優だろうか...としばし悩むことしきりでした
この議員が頼る精神科医には老優ロベルト・ヘルリッカが演じていました そう この人は「夜よ、こんにちは」で殺害されるアルド・モーロ首相を演じた老優です(「赤鉛筆、青鉛筆」のフィオリート先生役でもありましたね) 枯れた老木のような魅力を放っていますね
この映画は尊厳死の是非が問われたエルアーナ事件として有名な実話に基づき作られたもので ベルルスコーニ首相の演説シーンは
当時のフィルムを使ったのだろうと思いますが なかなか説得力がありました
この3つのオムニバス形式で語られるエピソードはベロッキオ監督の創作ですが 特に私が気に入ったのは 修道女のような娘マリア(議員の娘で重病の母親の依頼で父親が尊厳死に手を貸したことにこだわりを持つ)が 尊厳死問題では反対の立場にいる青年ロベルトに その強烈な存在でもって二人の出会いのシーンを作り上げた弟の あっけに取れられるような行為によって衝撃的な出会いを果たし あっというまに燃え上がりそして別れる...そのストーリーの流れ
あるいはまた 聖女のようでありたい さもなくばエルアーナ同様 床に伏したままの愛娘ローザの看病生活を続け演じ切る自信がないという元大女優の母親(イザベル・ユペール) そして彼女からはもはや冷たい視線を投げられるだけの夫と息子も含めた ひとりの床に臥す娘をめぐって繰り広げられる家族の葛藤
あるいはまた 何度でも死のうと試みる とんでもなく捨て鉢な女ロッサ(マヤ・サンサ演じる)をそれでもなお懸命に救おうとする 側に付き添う若きパッリド医師(ヴェロッキオ監督の息子ピエール・ジョルジォ・ヴェロッキオ演じる) なかなかに惹かれる俳優ですが その3つのオムニバスが繰り広げるドラマの中でも特に それは 息を吹き返した直後に窓から飛び降りようとする女の頬を叩き諭す若き情熱的な医師Pallidoの「まだ痛みを感じるだろ 誰だって死のうとしている人を見たら助ける それだけだ」という強い言葉でした
そして捨て鉢なロッサはやがて 少しずつ変わって行きます (マヤ・サンサは「輝ける青春」にも出演していますが 大分感じが変わっていますね)
たとえどんな状態でも生きる価値があるのか 尊厳死の是非なども含めて 家族といろいろな話ができるきっかけとなった映画でした
人生の損得勘定ではない そこに生まれた運命を受け止める力を持つこと あるいは自分の職責 それも人の運命を左右する大きな権限を持つ職責に 自分のプライベートな問題がどれだけ影響するのかということも含めた 多くのことを考えさせてくれる作品でした
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また イタリアでは ひとりの男性の安楽死をきっかけに 2018年に尊厳死法が施行されたそうです
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