ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

【緊急特集】 @Niftyがフォーラムを閉鎖予告(その2)

2006-07-25 23:10:14 | 能楽
かくして ぬえのネット生活(。。なんて言葉さえありませんでしたけれども)が始まりました。そして ぬえという現在のハンドル(いまはHNと表記した方が一般的なのかな?)もそのときに同時に生まれたのです。

みなさんも一度は経験があるでしょうが、会員制のサイトなどにオンラインで入会するとき、そのサイトやサービスに入会する、というところまでは心に決めていて接続するのですが、いざ入会手続きを進めていくと「IDを決めてください」「パスワードを設定してください」と突然言われて焦ったって事。。一度はありますよね?ネット初心者には避けて通れない厚い壁だと思います。ようやくそういうシステムにも慣れてきて、「ここに入会するには、またIDやパスワードを決めなければならないだろうな」と予想も立てられるようになってくると、今度は「そのIDはすでに他の人によって使われています。ほかのIDを設定してください」と言われてまたまた焦る、とか、自分が決めるパスワードのパターンがようやく出来上がったと思ったら「あなたのパスワードは◎△■×○です」と、サービスのシステムからあてがわれちゃったり。。

ぬえもニフティサーブに入会する時にそれとは知らずにイキナリ ハンドルの設定を求められておおいに焦りました。しかも入会時はオンライン接続したままなので、電話料金の加算にビビりながら設定にも頭を悩ませて。。ところがその当時 ぬえはたまたま師家の月例会の催しで能『鵺』を舞ったばかりで、それが自分でも割とうまく舞えた希有な例の能だったので、その曲名をそのままハンドルにする事にしました。もうこのハンドルとも10年のつき合いなんだが、意外やこれに決まったのはごくごく単純な動機からだったのです。

こうして当時は歌舞伎や文楽、落語などとも同居していた古典芸能の「会議室」“にっぽん座”に入会したのですが、ぬえはあまり考えずに自分が能楽師であること、まだ内弟子から独立したての新米であることは公言して入会しました。そしてハンドルという匿名性も面白いな、と思って、それ以上の情報は書き込みませんでした。その当時と現在とでは ぬえのスタンスは少し違うけれど、いろいろな記事や ぬえの発言をよく読めば ぬえが誰かはすぐに解るのだけれど、あえて自分からは実名や師匠の名前、所属する演能団体の名前は書き込まない、という、いまと全く同じ方法です。能楽師としてネット上で実名を出さないのは不利である事は、その当時はあまり考えませんでしたね。今では承知のうえでやっているのですが。。

「会議室」で発言を始めてみると、それまで ぬえが知らなかった世界がそこには開けていました。ネット社会で発言する人は立場の違いを超えて平等な立場、という、今ではあたりまえのような事が ぬえには新鮮でしたね。「アクティブ」(同じ会議室の常連会員)は、能の演出などでわからない事があれば ぬえに気軽に聞いてくれて、ぬえもそれに答えるのを楽しんでいました。その意味ではアクティブは ぬえをプロの能楽師として尊重もしてくれたのだけれど、いったん ぬえが言葉遣いを間違って偉そうな態度をとったりすると、たちまち非難されたものです。発信してゆく、という事の可能性も、難しさもこの「会議室」での書き込みから学ぶ事ができたし、ぬえに対して損得勘定や身びいきのない、能楽ファンの本音の声にナマで接する機会も、ここでしか求むべくもないものでした。

これは古典芸能が同居していた「会議室」“にっぽん座”から能狂言が独立して、専門の「会議室」“六百年らいぶ”となってからですが、東京在住のアクティブが多かったために、彼らと一緒に何度か東京で能の講座を催したこともあります。「セミナー六百年」というタイトルでしたな。能楽堂の楽屋ツアーをしたり、実際に能楽堂を借りて「舞台に上がってみる」という企画をしたり。。オフ会も数多かったし、なんというかアクティブ会員の結束が強かったことも ぬえには幸運だったと思います。