ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

【緊急特集】 @Niftyがフォーラムを閉鎖予告(その3)

2006-07-27 23:04:22 | 能楽
そんなこんなで ぬえとしてネットの世界で発信する場を見つけて、ぬえには損得のない関係の、純粋な能楽ファンとしての友人も出来ました。そしてそのように本当に能を愛している人の中には、じつに数多くの能を見ていて、批評眼もかなり確かな人もありました。じつによいところを見ている。そういう方は ぬえの能を見て評価も助言も、そしてある時は批判もして下さいました。ぬえにとっては励ましにもなり、奮起するキッカケも頂いたものです。

内弟子時代に小鼓の穂高光晴先生という人生の師を得、その稽古場で同じく修行中の身だった能楽師の親友もできた ぬえは、本当に幸せな修行時代を送れたと思います。そして内弟子から卒業したところで、ネット上で信頼できる友人たちと知り合う事ができました。役者というものは、自分が今どのような位置にいるのか~能楽師として進歩を続けているのか、停滞しているのか、それとも。。~を知るのは本当に難しい。現在はともかく(泣)、少なくとも若い時期に、いつも自分を批判してくれる友人たちが能楽界の内外にいつも居てくれた事は ぬえにとって幸運だったと思います。

前述のように ぬえは何気なくこのハンドルを選んだわけですが、その後「ぬえ」というハンドルが、いかに自分自身をよく表しているかに思い至るようになりました。よその世界から飛び込んできた ぬえは、能楽界の中ではまさしく得体の知れない「鵺」のような存在でしょう。舞台の上でも、そして見所からも、いつまでも「誰だ?コイツ」と言われ続ける宿命であったりする ぬえ。子方の経験がない ぬえには、能楽師の子弟が生まれながらに舞台と密着した生活を歩んできた、その経験値の差に愕然とした時期もあり、ずっと彼らに追いつこうともがいていた時期もあります。。でもその後にいろいろな経験を経て、今の ぬえは、楽屋から舞台に上がった彼らと違って「見所から舞台に上がった役者」という自負も持っていたりします。いつか、「ぬえ」が「鵺」でなくなる日が来ることを信じて。。(でも、もしそうなっても「ぬえ」と名乗る事は止めないだろうな。。)

話題が飛びましたが。。(~~;)

ぬえがこのハンドルを今でも使っている理由は、彼らニフティで知り合った友人たち~本名ではなく、「ぬえ」としての自分の舞台を応援してくれた友人たちへの恩を忘れないためであったりします。

というのも、いまから数年前に ぬえが初めて自分の主宰会を持ち、そこで『道成寺』を披いたとき。。この友人たちみんなが応援してくれたのです。あれは驚くべき事だった。なんせ、「ぬえが『道成寺』をやるそうだ」となったとたん、みなさんがいろいろな形で ぬえの公演への協力を申し出てくださったのです。それまで知らなかったアクティブの才能が一気に開花した、という感じでした。公演チラシのデザインは山口県の方が作ってくれ、印刷は滋賀県の友人が引き受けて下さいました。その他宣伝やら稽古場や小道具の提供やら。。これらすべてが ぬえの『道成寺』の披キのお祝いとしてプレゼントされたのです。

ぬえもよく考えて、考えて、そしてついに自分の主宰会の名前を「ぬえの会」としました。この珍妙な会名には能楽師の仲間はみんな首を傾げるし、彼らネットの友人たちも驚いたようでしたが。。ぬえが恩義を感じている「しるし」なのです。

かくして『道成寺』は無事に終えることができました。文字通り生命を賭けちゃったけど。。そしてその後、1週間を掛けて、この山口や滋賀、京都、福岡の友人たちに直接会ってお礼を申し上げるために各地を旅行しました。ぬえの役者としての節目にあたって、本当によい思い出です。

その後ニフティサーブのパソコン通信のサービスが終了して「ウェブ会議室」というものにサービスが移行したのですが、まだブロードバンド環境が現在のように整っていない時代で、ぬえを含めてアクティブは通信環境が追いつかず、ほとんどの会員は「ウェブ会議室」へは移行できない状態になりました。ぬえもあれからネットでの発言はまったくしていませんで、今年の正月にようやくこのブログから発信を再開した、というような経緯になります。

このたび@ニフティから「ウェブ会議室」を閉鎖する、とアナウンスがあって、いろいろな事を思い出しました。楽しかったなあ。パソコン通信という場を ぬえに与えてくれたニフティには感謝はしているし、あの「会議室」というサービスは一種のサロンとして、大げさに言えばある程度文化の牽引をしてきたと言えるとも思うけれど。。その後のサービスの改変で、パソコン通信で得た友人たちとは引き離されてしまう結果になったし。。愛憎相半ばする、というのがニフティに対する偽らざる ぬえの感情と言うべきかな。。

あ、そうそう、この当時のアクティブ同士がこの秋にめでたくゴールインする事になりました。ぬえも結婚式にご招待を受けて、広島まで『高砂』を舞いに行きまする!