ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

結婚式への出演。行って参りました

2008-03-10 21:11:44 | 能楽

忙しい週末が終わって、ようやく東京に戻って参りました~
なんだかブログの原稿書くのも久しぶり。

週末にはSさんと みささんの華燭の典のお手伝いに伺って参りました。前回の記事にも書いたのですが、昨年末に みささんからこのブログへの書き込みを頂いて、そこから話が盛り上がって ぬえが挙式にお邪魔するようなことになったのです。昨秋に伊豆・湯が島で挙式のお手伝いをさせて頂いて以来の晴れの日への出演になったのですが、う~ん、前日は珍しく雨降りだったのに、当日はホントに見事に晴れにしちまいましたな~。いや、新郎新婦の努力の甲斐あって、天も味方してくれたんでしょう。だって、ぬえって。。雨男なんです。。(←前日に雨が降ったときには本当に心配した)

さて ぬえは今回、挙式(人前式)とご披露宴の両方に出演させて頂いたのですが、いや、我ながら良くできたと思います。やはり経験というのは重ねるべきで、はじめての挙式への参加だった昨秋よりも、もっと落ち着いて、雰囲気よく出来たのではないかと思います。花嫁さんの みささんは、前の週に打合せではじめてお目に掛かったときの印象では現代的で活発な感じに思いましたが、白無垢になるとあら不思議。とっても清楚で日本的な美人さん。挙式では色打掛を着られましたが、ほほ~~、こっちはグッと華やかで、みささんにはこういう装いの方がより似合うかな。新郎さんも意外に紋付が似合う方で、うん、やっぱり我々の中には日本人のDNAがちゃあんと培われているのねえ。

挙式では新郎新婦の入場を『高砂』の待謡でお迎えし、三々九度のときには 今回も『井筒』のクセを独吟で謡ってみました。恋の物語をしっとりと。。という感じを狙って謡ってみたのですが、やはり『井筒』はこの場面に良く合うと思います。

親族が堅めの盃を取り交わして、おひらきの場面では祝言舞『羽衣キリ』の披露をさせて頂きました。ちょっと会場が狭かったのでスペースを取るのに苦労はしましたが、舞の中ではグッと新郎新婦の方に進み出る工夫もしてみて、これはこれで成功だったのではないかと思います。でも ぬえ当人は進み出たところで「ホントに元の座に戻れるのかいな。。」と不安もありましたが、まあ、親族の前に置いてある盃を蹴り飛ばすような粗相もなく。。(;^_^A 無事に勤められてよかった よかった。

ご披露宴では、これまた初めての経験でしたが、新郎新婦の入場の先導役として、『老松』のキリを謡いながら静かに歩んで会場に入りました。うう~~緊張した。でも。。謡で入場というのも良いものなんですね~。謡は俗っぽくなく、荘重な感じになるし、声量はあるのにそれでいて静謐。まあそういう雰囲気が出るように考えながら謡うわけですが、三々九度にせよ、こういう儀式の場面には謡はやっぱり似合うと思う。そして今回は助演者の功績も大きかったと思います。もうすっと以前になりますが、ぬえが初めて外国でワークショップ公演を行ったとき。。スウェーデンでのその公演に同行してもらったFくんに、今回の挙式の助演をお願いしたのですが、謡がうまい上に、さきほどの『羽衣』の地謡にしても、この『老松』での入場にしても、能舞台ではない会場で、能の公演とはまったく違う雰囲気の中で、自分がどう振る舞い、どう謡うべきか、どうすれば最上の上演になるのかを、とっても良く考えて判断しながら謡ってくれていたようで、その柔軟な出演の仕方が絶大な効果を生んだのだと思います。

ご披露宴の会場は外からのぞき見るのは難しい構造だったので、ぬえはご披露宴で舞った祝言舞『高砂』のあとは、残念ながら楽しい余興も見ることはできなかったのですが、盛り上がったご披露宴でありました。ご披露宴会場の入口に能装束を飾っていた ぬえは おひらきになるまで待機しなければならなかったので、その間、会場となった旅館の温泉につからせて頂きました~。ふ~~い。

あ、そうそう。この装束の展示なのですが、当初は唐織と縫箔を展示しようと考えていたのですが、挙式の前日にふとアイデアがひらめいて。。唐織と狩衣を飾ることにしました。なぜって。。? だっていまは3月。「お内裏様とお雛様」をイメージしたのです。うん、これはうまいところに気がついた。

その翌日、日曜日はこの夏に伊豆で行われる「狩野川薪能」のために、出演する子どもたちと初顔合わせをするべく伊豆の国市へ参りました。あ~~、久しぶりに再会したあの子たち! この話は次回に書こうと思いますが、その夜は。。今回の挙式のコーディネーターとして大活躍したUさんと、伊豆の玄関口・三島で夜中まで大騒ぎしてしまいました~。お互いの健闘を讃え合って、今後も団結して協力していこう! と誓いを新たにした、感動的で実りのあるフィナーレをもって ぬえの中で今回の結婚式は完了できたのでした。

寿なれやこの契り 天長く地久しくて尽くることもあるまじ