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ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

亀戸の夜能(3/25)

2012-03-28 08:21:22 | 能楽の心と癒しプロジェクト
行って参りました、亀戸の夜能。

開演は夜だったのですが、なぜか昼に会場に着いちゃった ぬえ。σ(^◇^;) 仕方ないので楽屋入りする前にグランドオープンが迫る東京スカイツリーの間近に行ってみました。はあぁ、大きいね~(←バカ丸出しコメント) じつはこの辺りは ぬえの母方の故郷なのでした。昔は下町の雰囲気にあふれていたけれど、いつの間にか様変わりですね。しかも「業平橋駅」はスカイツリーの開業に合わせて「とうきょうスカイツリー駅」に名称を変えるんですってね! ん~、『伊勢物語』由来の名前が消えてしまうのは惜しいなあ。

そしてようやく会場となった亀戸香取神社へ。あまり社域は広いわけではないけれど古く由緒正しい神社で、平将門の乱の際に追討使・俵藤太が戦勝祈願をし、その後も頼朝や家康の篤い崇敬を受けたとのこと。社殿や社務所は関東大震災や空襲の被害を受けた地域ですので鉄筋コンクリート造りですが、相当立派な建物でした。そうして本殿に対面するように建てられた神楽殿がこの日の上演会場です。これまた鉄筋コンクリート造りではありますが、入母屋風の屋根も備え、かなり雰囲気のよい建物でした。



この日は「亀戸フェスティバル」の中での公演で、江東区文化コミュニティ財団(亀戸文化センター)が主催者として全面的に公演のご後援を頂き、ぬえたち「能楽の心と癒やしプロジェクト」のチャリティ公演とさせて頂くことができました。神楽殿の前には ぬえらプロジェクトの活動内容を写真展示し(加藤昌人さん、シギー吉田さん、山口宏子に写真提供頂きました。クレジットもちゃんと入れておきましたよ~)、募金箱を設置させて頂きました。開演前にはじっと写真を見つめるお客さまもおられて、しばし被災地の現状や ぬえらが行っている活動について説明させて頂きました。

昼間はとても暖かかったのに、日が暮れるに従ってぐっと寒くなってきました。開演はメンバーのスケジュールに合わせて夕方6時半からと少し遅めの設定だったのですが、ここの前に他の催しに出演しているメンバーから上演時間が大幅に遅れている!と連絡が。。とりあえず装束は着けて、急遽解説を伸ばして対応したのですが、お客さまには寒い中お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした。m(__)m

師家の梅若紀長師の仕舞『融』、プロジェクトメンバーの小梶直人くんによる狂言『棒縛り』に続いてようやく ぬえの『羽衣・和合之舞』の上演。舞台は橋掛リもなく囃子方と地謡が座るとかなり狭くなってしまうので、全体にサラリと演じるように勤めることにしました。

ところでこの神楽殿ですが、舞台の外側にぐるりと一段下がって回廊のような部分があるのです。本来ならば高欄だけが舞台に取りつけられているのでしょうが、ここではその部分だけが一段下がっている。これは。。と思った ぬえはそこを使うことにしました。

キリの「七宝充満の宝を降らし」で舞台からその回廊に下りて、下居して扇を前へ出す例の型をやってみました。照明が当たらないのは承知の上ですが、お客さまから少し離れた舞台ですし、相当高さもあるのでお客さまからの距離はどうしても気になるので、このような型をすることでお客さまに少しでも近づいての演技ができます。



へへ、じつはこのアイデアが浮かんでも、最小限、それを知っていないと上演時に困る演者だけにそれを伝えておきました。そうして他の演者が到着する前に、装束が汚れないように入念に回廊部分を拭き掃除する準備も整えて。実際この型をやるとみなさんびっくりされたみたいですね。演者もそうで、まさかそこを下りるとは思わなかった、とか あそこを使えるならオレも下りればよかった、なんて言っている人も。(^^ゞ こういうのは新鮮味が重要なので、みんなで下りちゃうとワケがわかんなくなっちゃいます。ここは「秘すれば花」の心で。

でも実際には、上演時には面の眼の穴の中に照明の光が入って反射してしまって、正面に向くとほとんど何も見えない状態だったのです。こういうこと、仮設の舞台では時々ありますね。もう、高欄に下りる型をするかどうかはずっと迷いながら、下見で舞台を見た記憶とか、眼で見える情報をずうっと蓄積しながら、最後に決断して回廊に下りることにしました。一歩間違うと転落の危険もあるので、こういう場合は恐怖心との戦いでもあります。まあ、無事に型はできたのですが、もう少し思い切りよくやりたかったのですが。

舞台の上からは照明で目がくらみながらも大勢のお客さまが見えていることはよくわかりました。また脇正の方向には、通りがかりに広い道路の歩道で足を止めてご覧になっている方もありましたので、こちらにもアピールしながら演じるようには心がけておりました。

終演後、募金箱を開けてみると、なんと 65,000円の募金が寄せられていました。募金なのに切りの良い金額が不審ですが、これは集計時には端数があったのですがメンバーのひとりが重い小銭の山を紙幣に両替してくれたついでに切り良い金額になるように寄付を追加してくれたのでした。

改めまして、ご来場頂きましたお客さまに深謝申し上げます。開演が遅れ、また寒い中お待たせしてしまい大変申し訳ありませんでした。にも関わらず、たくさんの募金をして頂きました。併せまして御礼申し上げます。またチャリティ公演に賛同し出演してくださった能楽師の方々にも御礼申し上げます。プロジェクトの次回の活動はGW頃になるかと思いますが、高速道路の無料化措置も廃止となり、次第に活動も難しい状況になると予想されます。テレビ番組も3.11を過ぎてから震災の被災地の報道がめっきり減り、風化の恐れも出てきました。これからも変わらぬご支援をお願い申し上げます。m(__)m
コメント
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