すでに3月の活動を終えて帰京致しました。まずは取り急ぎ2月の活動報告書を作りましたのでご高覧賜れば幸甚でございます~
〔活動報告書〕
【趣旨】
東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志「能楽の心と癒しプロジェクト」の4名(※注1)は、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、すでに2011年8月15日、9月26日~30日、12月24日~2012年1月1日の3度に渡り岩手県釜石市、宮城県石巻市および気仙沼市にて能楽を披露する活動を行って参りましたが、このたび記録写真撮影のための写真家1名(※注2)とともに去る2月10日より4日間に渡り宮城県内の3都市の計12カ所にて4回の仮設住宅および仮設商店街での能楽の上演、1回のチャリティ公演および1回のワークショップを行いました(※注3)。とくに大崎市でのプラネタリウム公演の催しをコーディネートしてくださった小林わかば氏も同行、大崎に限らずプロジェクトの活動に参加してくださいました。またプラネタリウム公演ではピアニスト・山本実樹子さんをスペシャルゲストとしてお招き致しました。
※注1 プロジェクトメンバーは八田達弥(シテ方・観世流)、寺井宏明(笛方・森田流)、大蔵千太郎(狂言方・大蔵流)、小梶直人(同)の4名。ただしスケジュールの都合により狂言方2名は大崎市のチャリティ公演のみの出演。
※注2 今回の訪問に同行してくださった写真家Y氏(匿名を希望しております)もスケジュールの都合により一部公演のみの参加となりました。
※注3 今回の上演場所は①・南町紫市場(仮設商店街)内「カドッコ」②気仙沼市・大谷公民館(大谷仮設住宅の集会所として機能)③気仙沼市・波路上地区・地福寺④石巻市・大橋仮設住宅・集会所1⑤大崎市・パレットおおさき・プラネタリウム館⑥石巻市・立町復興ふれあい商店街(仮設住宅)。
【活動記録】
2月10日(金)
八田・寺井の2名が早朝に東京を出発、大崎市・パレットおおさきにて12日に予定されている公演の打合せおよび会場設営を一部進め、それより気仙沼市に移動。
気仙沼市・南町紫商店街内「カドッコ」にて児童ミュージカル劇団「うを座」劇団員対象のワークショップを行う。
2月11日(土)
八田・寺井、気仙沼市大谷公民館(本吉町)にて大谷仮設住民さん対象に「能楽の心と癒やしをあなたに」と題して能『菊慈童』の一部を上演
午後、気仙沼市階上地区の地福寺にて津波襲来時刻に合わせて独謡一管『江口』を手向ける。「能楽の心と癒やしをあなたに」として能『菊慈童』の一部を公演。終演後は石巻に移動、明友館に宿泊。
この日、大蔵・小梶と小林わかば氏、パレットおおさきにて会場設営を続行。
2月12日(日)
八田・寺井は石巻市大橋仮設団地 集会所1にて「能楽の心と癒やしをあなたに」として能『菊慈童』の一部や能楽ワークショップを上演。小林氏も石巻に来訪、大橋仮設公演に参加して解説や写真撮影を担当。
その後一同は大崎市に移動、大蔵・小梶、ゲストの山本実樹子氏、写真家のY氏もパレットおおさきに到着。
夕刻、パレットおおさきプラネタリウム館にて「星と能楽の夕べ」と題して狂言『神鳴』、能『羽衣』の一部のほか山本氏によるピアノ演奏も上演。小林氏は天文解説を勤める。
終演後、八田・寺井・Y氏は石巻に戻り、大蔵・小梶は大崎市泊。山本、小林氏は帰京。
2月13日(月)
八田・寺井、石巻市の仮設商店街「石巻復興ふれあい商店街」にて「能楽の心と癒しをあなたに」と題して能『菊慈童』の一部を上演。この公演は石巻市商工会のコーディネートによる。また曹洞宗庄内青年部の炊き出し活動とのコラボ公演である。
終演後夕方に石巻を出発して帰京。
【収入・支出】
プロジェクトの活動はすべて募金によって行われております。募金にはプロジェクトのボランティア活動資金として使わせて頂くもの(以下「ボラ」)と、被災地への直接支援を目的にプロジェクトに寄せられた義援金(以下「ギエ」)に分けられます。今回の活動にあたって「ボラ」は前回活動繰越金(117,424円)および銀行口座への新規の募金(13,000円)の総額 130,424円となり、「ギエ」は前回の活動繰越金のみ 15,338円でした。
そのほか今回の活動中に「パレットおおさき」のチャリティ公演「星と能楽の夕べ」におきましてお客さまより多額(58,613円)の募金を頂戴しました。これは使途についての募金者の目的が明確になっておりません。この取り扱いについてプロジェクトのメンバーと協議し、「ボラ」「ギエ」にほぼ同額に近い金額にて二分する事と致しました。これについて、今後被災地への関心が薄れてくると同時に我々プロジェクトの活動資金も困窮が予想され、我々の活動も大きく考えれば被災地への支援ですから、使途の指定のない募金も全額「ボラ」扱いでよいのではないか、という意見も出ました。しかし会場を提供してくださった「パレットおおさき」では本来物品の販売は許可されても、使途が明確でない直接活動資金の募金を呼び掛ける事は許可されないところ、今回の我々プロジェクトの活動に理解を示して頂き、また活動報告・決算報告をネットにて公にしている事を評価頂き、「ボラ」としての募金も認めて頂きました。このご英断に報いるため、全額を「ボラ」として頂くのではなく、「ギエ」との折半とする事と致しました。
一方「パレットおおさき」でお客さまから頂戴した募金を「ボラ」「ギエ」に完全に二等分にしなかったのには次の理由があります。①本プロジェクトにおいて集められた「ギエ」=義援金の寄贈先は被災地現地にて活動を続けるボランティア団体とし、具体的にはこれまでプロジェクトのメンバーが現地活動を行うにあたりお世話になっている「チーム神戸」と「明友館」に限定しております。ところが震災から1年を迎えた現在、それぞれの団体は現地活動から撤退、あるいは縮小する事をすでに取り決めております。②従って、今後の「ギエ」については、それを現地被災者のために純然たる用途で用いられる団体を他に探す必要があります。③一方これまで当プロジェクトに寄せられた「ギエ」は上記2団体への寄付として取り扱う事を明示して参りました。④このため、3月11日の震災1周年の日を境に、それまでに当プロジェクトに寄せられた「ギエ」全額を上記2団体に寄付する事で清算し、この日より後に当プロジェクトに寄せられる「ギエ」は別の然るべき支援団体を見つけてから、そこに寄付することと致しました。⑤現状では「ギエ」は前回活動繰越金の15,338円であり、今回の「パレットおおさき」チャリティ公演に寄せられた募金 58,613円を完全に二分して(その場合 29,306円5分)、これに加算し、さらにこれを2団体に等分する事は煩雑を極める。⑥そこでパレットおおさきでの募金を等分(29,306円5分)に分け、これまでのギエ募金額(15,338)と併せたギエ金額(44,644円5分)のうち端数(644円5分)をボラに繰り入れた。これによりギエはこれまでの募金と今回のパレットおおさき募金を合わせて 44,000円となり、これを2団体に等分に寄付した。
頂いた募金の使途につきましては別紙「決算報告書」にて改めてその内訳を明示致しますが、今回の活動終了時で残額 109,770円(内訳:ボラ 109,770円 ギエ 0円)となっております。これらは今回の活動繰越金として次回活動の資金として有効に使わせて頂きます。関係者各位に対し、厚く御礼申し上げます。
これに対してプロジェクトの訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。現在被災地支援対策として白河以北の高速道路について無料化措置が取られていますが、さらに引き続き石巻市災害ボランティアセンターから発給される「災害派遣等従事車両証明書」の認定を受けることで東京~白河間の高速道路料金も免除されております。しかしいずれも3月31日をもって制度の廃止が決まっており、今後の活動には困難が予想されております。
宿泊につきましても今回は関係者のご厚意により石巻市および東松島市の個人宅に寄宿させて頂きました。また参加者のすべての食費はそれぞれ個人的に支出する方針を堅持しております。
これにより今回の支出の内容は公演プログラムの印刷費、記録用ビデオテープ、などの事務雑費のほかはもっぱら交通費(ガソリン代)に限られることとなりました。また今回は「パレットおおさき」チャリティ公演の企画からコーディネート、さらには星空解説や石巻・大橋仮設団地公演にまで実演参加してくださった小林わかば氏の旅費(宿泊費)・交通費(新幹線代)はプロジェクトから支出することに致しました。氏はプロジェクトのメンバーではありませんが、今回の活動の企画から参加し、実演も行った貢献が多大なこと、また氏への支出がこれまでプロジェクトにお寄せ頂いた皆様の募金からの支出ではなく、「パレットおおさき」でお客さまから頂戴した募金からの支出と考えることもできるため、かような判断とさせて頂きました。
今回の活動費の支出合計は「チーム神戸」および「明友館」への寄付金44,000円を含めて94,608円となりました。また活動とは直接関係ありませんが、銀行預金の利息として 3円の収入が発生しております。
これらの結果、収支差額として109,770円の残金(「ギエ」は清算されたため「ボラ」のみの残金となります)出ました。これは次回の訪問の活動資金として活用させて頂きます。現状では来る3月31日をもってボランティアセンターから発給されていた「災害派遣等従事車両証明書」の廃止が宣言されており、今後の活動には資金的に困難な状況が予測されます。引き続きまして活動支援をお願い申し上げる次第です。
「ギエ」につきましては、今後も引き続き募金を募りますが、金額がまとまってから、また現地で活動されている信頼すべき支援団体を見つけてからそこに寄付する予定でございます。
【成果と感想・今後の展望】
プロジェクトとして4回目となる今回の支援活動では、石巻市・気仙沼市の以前から活動を続けている町での活動を充実させたほか、とくに宮城県大崎市「パレットおおさき」でのチャリティ公演が印象的でした。津波被害こそなかったものの、地震被害があり、また沿岸の被災者を多く受け入れている「被災地」でのチャリティ公演は初めての経験です。結果は150名の定員が満員となり、募金も58,613円という多額に上りました。単純計算でもお客さまお一人につき390円が寄付された事になり、さらに家族連れ、お子さんの参加も歓迎という館の方針を考えれば、1家族単位ではもっと多額の募金を下さった事になります。およそ東京や他県では考えられない数字で、被災地に向けられる宮城県民の感情を痛感するとともに、我々プロジェクトの活動の重要性も再認識致しました。また公演内容そのものも、プラネタリウムでの演能は初めての経験で、ピアノの山本実樹子氏の演奏もあり、芸術面でも大きな成果を挙げられたものと考えております。
気仙沼市では、現地の児童ミュージカル劇団「うを座」の団員の子どもたちに2度目のワークショップが実現しました。元気な子どもたちの笑顔はいつもながら我々の活動に大きな励みとなっております。今回の活動がまず「うを座」の子どもたちとのふれあいから始められた事は我々の志気を大いに高めてくれました。さらに「うを座」の千田基嗣さんの尽力により、はじめて気仙沼の仮設住宅での上演が実現致しました。本吉町の大谷海岸そばの大谷仮設住宅がそれで、同日に行われた波路上地区の地福寺とともに激甚災害地です。どちらも八田はb6月から復興状況を見ている土地での上演は感無量のものがありました。わけても地福寺では大震災のちょうど11ヶ月目のその日その時刻に当たりました。これまでの活動でも11日に現地にいた事は1度もありませんで、この日はちょうど津波の襲来時刻15:26が公演準備時間に当たっていたため、急遽 紋付を着て震災犠牲者のために地福寺で作られたご位牌の前で 独謡一管『江口』を手向けさせて頂き、それより公演とさせて頂きました。地福寺の片山住職は復興のためのイベントなども数多く手がけておられ、我々プロジェクトの活動にも深い理解を頂くことができ、終演後は大変な歓迎をしてくださいました。また大谷仮設でも住民さんの手作りの「ナイロンたわし」を販売するプロジェクトがあり、少しずつではありますが、前へ進んで行く気力に大変感動致しました。
大崎市「パレットおおさき」でのチャリティ公演につきましては上記でも多くご報告致しましたが、我々のみならず館としても、また職員個人としても大崎市民や沿岸被災地域のための活動を数多く行っておられます。とくに「パレットおおさき」では「絆プロジェクト」として市民のために家族の結束を高めるため、家族で星空を見る催しを開いたり、様々な活動を行っておられます。我々プロジェクトとも、今後とも共同して企画を進めて行く予定であります。
石巻では大橋仮設団地と、これまた初めて石巻市の仮設商店街での公演が実現しました。大橋仮設では大勢の住民さんが集まってくださり、楽しい時間を過ごすことができました。わけても小林わかばさんが解説として出演、写真撮影なども勤めてくださり大活躍。また、仮設住宅での上演の方法もようやく一つの形を成したのはこの場所での公演だったと思います。仮設商店街である石巻立町復興ふれあい商店街での公演は、店舗が小さいため屋外での上演となりました。こちらは湊小学校避難所時代からご一緒に活動している曹洞宗庄内青年会のみなさんが7人もお出で下さり、炊き出しボランティアに精を出されました。あとで聞いたところでは、やはり熱心で柔和なその活動ぶりが大変好評だったそうです。また商店街を応援しておられる石巻商工会のみなさんとも大変懇意になり、さらには商店のみなさまからも大変お喜び頂くことができました。こちらでは大変に強い絆が生まれたと感じております。どれも地元の方々との信頼関係が生まれたからこそ実現できた事と感謝しております。
報道につきましては今回の活動では気仙沼・大谷仮設住宅での公演が「三陸新報」紙によって報道頂いたほか、気仙沼・地福寺公演と石巻立町復興ふれあい商店街公演が事前に予告記事や広告として掲載され、さらに石巻立町商店街の公演についてはその後「」紙においてお客さまからの感想文が寄稿されました。地元のみなさまに次第に受け入れられている実感を思い、感無量です。
しかしながら、当地の現状は必ずしも楽観を許さないのは前回と同じ感想で、むしろ状況はより悪くなっているように思います。被災者の収入の問題、仮設での孤独の問題、食料支援などボランティアの減少や受け入れ態勢の削減化、世間の被災地への関心が薄れてゆく予想。3月11日を過ぎて被災地がどう動いていくのか。今後も支援を続けていけるよう努力を重ねてゆく所存です。どうぞ今後も変わらぬお力添えを賜りますよう伏してお願い申し上げます。
平成24年3月5日
「能楽の心と癒しプロジェクト」
代表 八田 達弥
(住所)
(電話)
【新聞報道・広告記事】
三陸新報<2012.02.08>
三陸新報<2012.02.08>
石巻かほく<2012.02.12>
河北新報<2012.02.20>
能楽の心と癒しプロジェクト
宮城県訪問活動(2012年2月10日~13日)
宮城県訪問活動(2012年2月10日~13日)
〔活動報告書〕
【趣旨】
東日本大震災被災地支援を目指す在京能楽師有志「能楽の心と癒しプロジェクト」の4名(※注1)は、能楽の持つ邪気退散、寿福招来の精神を被災地に伝えるべく、すでに2011年8月15日、9月26日~30日、12月24日~2012年1月1日の3度に渡り岩手県釜石市、宮城県石巻市および気仙沼市にて能楽を披露する活動を行って参りましたが、このたび記録写真撮影のための写真家1名(※注2)とともに去る2月10日より4日間に渡り宮城県内の3都市の計12カ所にて4回の仮設住宅および仮設商店街での能楽の上演、1回のチャリティ公演および1回のワークショップを行いました(※注3)。とくに大崎市でのプラネタリウム公演の催しをコーディネートしてくださった小林わかば氏も同行、大崎に限らずプロジェクトの活動に参加してくださいました。またプラネタリウム公演ではピアニスト・山本実樹子さんをスペシャルゲストとしてお招き致しました。
※注1 プロジェクトメンバーは八田達弥(シテ方・観世流)、寺井宏明(笛方・森田流)、大蔵千太郎(狂言方・大蔵流)、小梶直人(同)の4名。ただしスケジュールの都合により狂言方2名は大崎市のチャリティ公演のみの出演。
※注2 今回の訪問に同行してくださった写真家Y氏(匿名を希望しております)もスケジュールの都合により一部公演のみの参加となりました。
※注3 今回の上演場所は①・南町紫市場(仮設商店街)内「カドッコ」②気仙沼市・大谷公民館(大谷仮設住宅の集会所として機能)③気仙沼市・波路上地区・地福寺④石巻市・大橋仮設住宅・集会所1⑤大崎市・パレットおおさき・プラネタリウム館⑥石巻市・立町復興ふれあい商店街(仮設住宅)。
【活動記録】
2月10日(金)
八田・寺井の2名が早朝に東京を出発、大崎市・パレットおおさきにて12日に予定されている公演の打合せおよび会場設営を一部進め、それより気仙沼市に移動。
気仙沼市・南町紫商店街内「カドッコ」にて児童ミュージカル劇団「うを座」劇団員対象のワークショップを行う。
2月11日(土)
八田・寺井、気仙沼市大谷公民館(本吉町)にて大谷仮設住民さん対象に「能楽の心と癒やしをあなたに」と題して能『菊慈童』の一部を上演
午後、気仙沼市階上地区の地福寺にて津波襲来時刻に合わせて独謡一管『江口』を手向ける。「能楽の心と癒やしをあなたに」として能『菊慈童』の一部を公演。終演後は石巻に移動、明友館に宿泊。
この日、大蔵・小梶と小林わかば氏、パレットおおさきにて会場設営を続行。
2月12日(日)
八田・寺井は石巻市大橋仮設団地 集会所1にて「能楽の心と癒やしをあなたに」として能『菊慈童』の一部や能楽ワークショップを上演。小林氏も石巻に来訪、大橋仮設公演に参加して解説や写真撮影を担当。
その後一同は大崎市に移動、大蔵・小梶、ゲストの山本実樹子氏、写真家のY氏もパレットおおさきに到着。
夕刻、パレットおおさきプラネタリウム館にて「星と能楽の夕べ」と題して狂言『神鳴』、能『羽衣』の一部のほか山本氏によるピアノ演奏も上演。小林氏は天文解説を勤める。
終演後、八田・寺井・Y氏は石巻に戻り、大蔵・小梶は大崎市泊。山本、小林氏は帰京。
2月13日(月)
八田・寺井、石巻市の仮設商店街「石巻復興ふれあい商店街」にて「能楽の心と癒しをあなたに」と題して能『菊慈童』の一部を上演。この公演は石巻市商工会のコーディネートによる。また曹洞宗庄内青年部の炊き出し活動とのコラボ公演である。
終演後夕方に石巻を出発して帰京。
【収入・支出】
プロジェクトの活動はすべて募金によって行われております。募金にはプロジェクトのボランティア活動資金として使わせて頂くもの(以下「ボラ」)と、被災地への直接支援を目的にプロジェクトに寄せられた義援金(以下「ギエ」)に分けられます。今回の活動にあたって「ボラ」は前回活動繰越金(117,424円)および銀行口座への新規の募金(13,000円)の総額 130,424円となり、「ギエ」は前回の活動繰越金のみ 15,338円でした。
そのほか今回の活動中に「パレットおおさき」のチャリティ公演「星と能楽の夕べ」におきましてお客さまより多額(58,613円)の募金を頂戴しました。これは使途についての募金者の目的が明確になっておりません。この取り扱いについてプロジェクトのメンバーと協議し、「ボラ」「ギエ」にほぼ同額に近い金額にて二分する事と致しました。これについて、今後被災地への関心が薄れてくると同時に我々プロジェクトの活動資金も困窮が予想され、我々の活動も大きく考えれば被災地への支援ですから、使途の指定のない募金も全額「ボラ」扱いでよいのではないか、という意見も出ました。しかし会場を提供してくださった「パレットおおさき」では本来物品の販売は許可されても、使途が明確でない直接活動資金の募金を呼び掛ける事は許可されないところ、今回の我々プロジェクトの活動に理解を示して頂き、また活動報告・決算報告をネットにて公にしている事を評価頂き、「ボラ」としての募金も認めて頂きました。このご英断に報いるため、全額を「ボラ」として頂くのではなく、「ギエ」との折半とする事と致しました。
一方「パレットおおさき」でお客さまから頂戴した募金を「ボラ」「ギエ」に完全に二等分にしなかったのには次の理由があります。①本プロジェクトにおいて集められた「ギエ」=義援金の寄贈先は被災地現地にて活動を続けるボランティア団体とし、具体的にはこれまでプロジェクトのメンバーが現地活動を行うにあたりお世話になっている「チーム神戸」と「明友館」に限定しております。ところが震災から1年を迎えた現在、それぞれの団体は現地活動から撤退、あるいは縮小する事をすでに取り決めております。②従って、今後の「ギエ」については、それを現地被災者のために純然たる用途で用いられる団体を他に探す必要があります。③一方これまで当プロジェクトに寄せられた「ギエ」は上記2団体への寄付として取り扱う事を明示して参りました。④このため、3月11日の震災1周年の日を境に、それまでに当プロジェクトに寄せられた「ギエ」全額を上記2団体に寄付する事で清算し、この日より後に当プロジェクトに寄せられる「ギエ」は別の然るべき支援団体を見つけてから、そこに寄付することと致しました。⑤現状では「ギエ」は前回活動繰越金の15,338円であり、今回の「パレットおおさき」チャリティ公演に寄せられた募金 58,613円を完全に二分して(その場合 29,306円5分)、これに加算し、さらにこれを2団体に等分する事は煩雑を極める。⑥そこでパレットおおさきでの募金を等分(29,306円5分)に分け、これまでのギエ募金額(15,338)と併せたギエ金額(44,644円5分)のうち端数(644円5分)をボラに繰り入れた。これによりギエはこれまでの募金と今回のパレットおおさき募金を合わせて 44,000円となり、これを2団体に等分に寄付した。
頂いた募金の使途につきましては別紙「決算報告書」にて改めてその内訳を明示致しますが、今回の活動終了時で残額 109,770円(内訳:ボラ 109,770円 ギエ 0円)となっております。これらは今回の活動繰越金として次回活動の資金として有効に使わせて頂きます。関係者各位に対し、厚く御礼申し上げます。
これに対してプロジェクトの訪問公演の支出につきましては節約を旨としております。現在被災地支援対策として白河以北の高速道路について無料化措置が取られていますが、さらに引き続き石巻市災害ボランティアセンターから発給される「災害派遣等従事車両証明書」の認定を受けることで東京~白河間の高速道路料金も免除されております。しかしいずれも3月31日をもって制度の廃止が決まっており、今後の活動には困難が予想されております。
宿泊につきましても今回は関係者のご厚意により石巻市および東松島市の個人宅に寄宿させて頂きました。また参加者のすべての食費はそれぞれ個人的に支出する方針を堅持しております。
これにより今回の支出の内容は公演プログラムの印刷費、記録用ビデオテープ、などの事務雑費のほかはもっぱら交通費(ガソリン代)に限られることとなりました。また今回は「パレットおおさき」チャリティ公演の企画からコーディネート、さらには星空解説や石巻・大橋仮設団地公演にまで実演参加してくださった小林わかば氏の旅費(宿泊費)・交通費(新幹線代)はプロジェクトから支出することに致しました。氏はプロジェクトのメンバーではありませんが、今回の活動の企画から参加し、実演も行った貢献が多大なこと、また氏への支出がこれまでプロジェクトにお寄せ頂いた皆様の募金からの支出ではなく、「パレットおおさき」でお客さまから頂戴した募金からの支出と考えることもできるため、かような判断とさせて頂きました。
今回の活動費の支出合計は「チーム神戸」および「明友館」への寄付金44,000円を含めて94,608円となりました。また活動とは直接関係ありませんが、銀行預金の利息として 3円の収入が発生しております。
これらの結果、収支差額として109,770円の残金(「ギエ」は清算されたため「ボラ」のみの残金となります)出ました。これは次回の訪問の活動資金として活用させて頂きます。現状では来る3月31日をもってボランティアセンターから発給されていた「災害派遣等従事車両証明書」の廃止が宣言されており、今後の活動には資金的に困難な状況が予測されます。引き続きまして活動支援をお願い申し上げる次第です。
「ギエ」につきましては、今後も引き続き募金を募りますが、金額がまとまってから、また現地で活動されている信頼すべき支援団体を見つけてからそこに寄付する予定でございます。
【成果と感想・今後の展望】
プロジェクトとして4回目となる今回の支援活動では、石巻市・気仙沼市の以前から活動を続けている町での活動を充実させたほか、とくに宮城県大崎市「パレットおおさき」でのチャリティ公演が印象的でした。津波被害こそなかったものの、地震被害があり、また沿岸の被災者を多く受け入れている「被災地」でのチャリティ公演は初めての経験です。結果は150名の定員が満員となり、募金も58,613円という多額に上りました。単純計算でもお客さまお一人につき390円が寄付された事になり、さらに家族連れ、お子さんの参加も歓迎という館の方針を考えれば、1家族単位ではもっと多額の募金を下さった事になります。およそ東京や他県では考えられない数字で、被災地に向けられる宮城県民の感情を痛感するとともに、我々プロジェクトの活動の重要性も再認識致しました。また公演内容そのものも、プラネタリウムでの演能は初めての経験で、ピアノの山本実樹子氏の演奏もあり、芸術面でも大きな成果を挙げられたものと考えております。
気仙沼市では、現地の児童ミュージカル劇団「うを座」の団員の子どもたちに2度目のワークショップが実現しました。元気な子どもたちの笑顔はいつもながら我々の活動に大きな励みとなっております。今回の活動がまず「うを座」の子どもたちとのふれあいから始められた事は我々の志気を大いに高めてくれました。さらに「うを座」の千田基嗣さんの尽力により、はじめて気仙沼の仮設住宅での上演が実現致しました。本吉町の大谷海岸そばの大谷仮設住宅がそれで、同日に行われた波路上地区の地福寺とともに激甚災害地です。どちらも八田はb6月から復興状況を見ている土地での上演は感無量のものがありました。わけても地福寺では大震災のちょうど11ヶ月目のその日その時刻に当たりました。これまでの活動でも11日に現地にいた事は1度もありませんで、この日はちょうど津波の襲来時刻15:26が公演準備時間に当たっていたため、急遽 紋付を着て震災犠牲者のために地福寺で作られたご位牌の前で 独謡一管『江口』を手向けさせて頂き、それより公演とさせて頂きました。地福寺の片山住職は復興のためのイベントなども数多く手がけておられ、我々プロジェクトの活動にも深い理解を頂くことができ、終演後は大変な歓迎をしてくださいました。また大谷仮設でも住民さんの手作りの「ナイロンたわし」を販売するプロジェクトがあり、少しずつではありますが、前へ進んで行く気力に大変感動致しました。
大崎市「パレットおおさき」でのチャリティ公演につきましては上記でも多くご報告致しましたが、我々のみならず館としても、また職員個人としても大崎市民や沿岸被災地域のための活動を数多く行っておられます。とくに「パレットおおさき」では「絆プロジェクト」として市民のために家族の結束を高めるため、家族で星空を見る催しを開いたり、様々な活動を行っておられます。我々プロジェクトとも、今後とも共同して企画を進めて行く予定であります。
石巻では大橋仮設団地と、これまた初めて石巻市の仮設商店街での公演が実現しました。大橋仮設では大勢の住民さんが集まってくださり、楽しい時間を過ごすことができました。わけても小林わかばさんが解説として出演、写真撮影なども勤めてくださり大活躍。また、仮設住宅での上演の方法もようやく一つの形を成したのはこの場所での公演だったと思います。仮設商店街である石巻立町復興ふれあい商店街での公演は、店舗が小さいため屋外での上演となりました。こちらは湊小学校避難所時代からご一緒に活動している曹洞宗庄内青年会のみなさんが7人もお出で下さり、炊き出しボランティアに精を出されました。あとで聞いたところでは、やはり熱心で柔和なその活動ぶりが大変好評だったそうです。また商店街を応援しておられる石巻商工会のみなさんとも大変懇意になり、さらには商店のみなさまからも大変お喜び頂くことができました。こちらでは大変に強い絆が生まれたと感じております。どれも地元の方々との信頼関係が生まれたからこそ実現できた事と感謝しております。
報道につきましては今回の活動では気仙沼・大谷仮設住宅での公演が「三陸新報」紙によって報道頂いたほか、気仙沼・地福寺公演と石巻立町復興ふれあい商店街公演が事前に予告記事や広告として掲載され、さらに石巻立町商店街の公演についてはその後「」紙においてお客さまからの感想文が寄稿されました。地元のみなさまに次第に受け入れられている実感を思い、感無量です。
しかしながら、当地の現状は必ずしも楽観を許さないのは前回と同じ感想で、むしろ状況はより悪くなっているように思います。被災者の収入の問題、仮設での孤独の問題、食料支援などボランティアの減少や受け入れ態勢の削減化、世間の被災地への関心が薄れてゆく予想。3月11日を過ぎて被災地がどう動いていくのか。今後も支援を続けていけるよう努力を重ねてゆく所存です。どうぞ今後も変わらぬお力添えを賜りますよう伏してお願い申し上げます。
平成24年3月5日
「能楽の心と癒しプロジェクト」
代表 八田 達弥
(住所)
(電話)
【新聞報道・広告記事】
三陸新報<2012.02.08>
三陸新報<2012.02.08>
石巻かほく<2012.02.12>
河北新報<2012.02.20>