ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

あけましておめでとうございます~

2013-01-03 09:42:52 | 能楽
あれよあれよと1年が過ぎた感じですね~。遅ればせながら本年もご多幸を祈りあげ、お付き合いのほどよろしくお願い申し上げます~m(__)m

昨年の大晦日~元日は石巻の仮設住宅ですごし、住民さんと紅白歌合戦を楽しみましたが、今年は師家の恒例行事、兵庫県の丹波篠山の春日神社で「翁」を奉納する「翁神事」に参加して参りました。

丹波地方は師匠家の室町時代の故郷でありまして、現在は師家は東京に本拠地を構えてはおられますが、毎年元朝にはこちら、丹波篠山の春日神社に建てられている能舞台(近年重要文化財の指定を受けました)で「翁」を奉納しております。年始にご先祖様にご挨拶をし、新しい年のご加護をお願いする、もう30年以上続いている恒例の行事です。

ぬえも時折出勤させて頂きますが、問題はその上演時刻でして。。ちょうど除夜の鐘が鳴っている頃、年が改まった直後の0時過ぎにこの「翁神事」は始まります。初詣客でごった返す境内の、野ざらしの舞台。。寒いったら!

でも、今年は暖かかった。よかった~。ぬえは今回は後見の役を仰せつかっていたのですが、ご承知の通り「翁」は舞台上でシテが翁面を顔に掛けます。この面紐を結ぶのが後見の重要な仕事でして、手がかじかんでうまく結ぶことが出来ず、上演中にシテの面紐がゆるんできたら。。後見の謹慎はまぬがれまい。

。。いや、長い能の歴史の中ではそういう大事件も一度は起こった可能性がありますが、ぬえには考えたくない事故です。この事故を防ぐため、ぬえは家人を相手に自宅で何度も面紐を結ぶ稽古を重ねていました。気持ちの弛むことのない年末でしたね~。面紐を結ぶことなど通常の公演でも慣れているじゃずですが、「翁」の面紐の結び方は特殊で、上演中にはしっかり結ばれているのは勿論ですが、上演後はシテがご自分で面紐をほどいて面を外されるので、その時は はらりと面紐がほどけなければならない。後見は気を遣う役割なのです。

お陰様をもちまして、また暖かい気候にも助けられて、ぬえは粗相もなく無事に後見の大役を終えることができました!

そうしてトップ画像がその時の上演風景。
そうして、こちらは緊張しながら師匠の面紐を結ぶ ぬえ。



これらの画像は、この日わざわざ神戸からお越しになり翁神事をご覧になった「チーム神戸」の金田真須美さんが撮影され、終演直後に ぬえに送ってくださったものです。

ご存じの通り「チーム神戸」は阪神淡路大震災のあとに同じような災害が起きた場合に救援活動を行うために備えて結成されたボランティア団体で、いまだに石巻に半ば常駐して支援活動を行っておられます。ぬえももう1年6ヶ月に渡ってお世話になりっぱなしですが、たまたま正月は神戸でお過ごしというスケジュールを伺ったので、ものは試しとこの丹波篠山の翁神事にお誘い致しました。意外や一発OKでお越しになるとのこと!

この日は宵のうちに ぬえたちの待機場所になっていた「能楽資料館」をご案内させて頂きましたが、その後深夜まで時間を潰して頂いて、翁神事をご覧になって。。そうして画像を ぬえの携帯に送信頂きました。終演後後片づけも終わって、さて夜通し運転で東京に帰ろうとするその楽屋でみんなでこの画像を見て「をを~っ!」と喜んで、さて出発。東京に帰り着いたのは元日の朝8時頃ですかね。まずまず無事に帰り着いてようやく初仕事を終えました。年の初めに良い仕事ができてまずは安堵しております。

ぬえは今年も1月から東北支援活動を始めますが、「チーム神戸」は1月17日に神戸で阪神淡路大震災の追悼行事が行われるため、今月は石巻ではお会いできません。それでも石巻ではなく丹波篠山でお久しぶりにお目に掛かれたのは幸いでもあり、とっても珍しいことですね~

翌日正月2日は師家で謡初めがあり、これで年始の恒例行事は完了、ぬえも本日3日から短い正月休みになります。稽古の始動は6日の木曜から。それから稽古能、申合があって師家の月例公演の初会。。と続きます。

本年は春に東京で大きな役がある ぬえ。伊豆の子ども能に、東北支援活動に、今年も邁進して参ります~