ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

JIN’S PROJECT活動報告会(その1)

2013-01-20 02:18:37 | 能楽の心と癒しプロジェクト
今日はボランティア団体「JIN’S PROJECT」の東京での報告会がありまして、ぬえも出席させて頂きました。

JIN’S PROJECTさんはリーダーの折尾仁さんという若者が率いる団体で、震災直後から東北地方の各地で多種の活動を精力的に続けておられます。ぬえとは、石巻の商工会の関係からお話しを頂いて、昨年の暮れに東京でのチャリティ・パーティにお招き頂いてからのご縁。仁さん、お若いのに行動力・交渉術に長けておられて、ぬえたちも見習わなければならない点がたくさんあります。

この日の報告会は目黒区の社協が行うボランティアセミナーのような地域社会活動の一環として開かれたようでした。JIN’S PROJECTさんが目黒区に事務所を持っているためなのでしょうが、ボランティア活動に積極的な支援をする目黒区の社協にまず拍手です。

で内容なんですが、かなり刺激的なものでした。仁さんが個人として震災の直後…それこそ1日とか2日後に友人を助けるために宮城県多賀城市に入ったときの話。。これは到底すべてを人に話せないとのことで、仁さんも言葉を詰まらせながら、かいつまんで、といった感じで話されました。これが仁さんたちのプロジェクトの原点になるのですね。

さてその次は仁さんたちのプロジェクトが活動を開始してから現地で起こった住民さんとのトラブル。。これも仁さんが個人的に体験した事ですが、この事件を劇仕立てで再現する、というもの。ボランティアに苦情を言い立てる住民さん役の役者さん。。まだお若い方のようでしたが、圧倒的な演技力で、今まさに我々がボランティアのリーダーとしてその場にいて投げつけられた住民さんの本音を聞いているようで。。それから いつの間にか他人の家の中に土足で上がり込むような無遠慮にボランティア自身が陥っていないか、自己満足に堕した活動になっていないか、こんな事を突きつけられる内容でした。

ぬえも比較的長く活動を続けていますが、やはりこのブログに書けないことは沢山あります。気になることもたくさんあったし、事件もいくつか遭遇してきたのですが、それは主に住民さんではなくてボランティアさんが起こした事だったりするんですよね。ぬえなどは時々しか現地には行けないですけれども、住み着くようにしてずっと住民さんに寄り添っておられるボラさんもたくさんおられます。それが、お会いするたびに ちょっとずつ変質している事に気づくこともあります。

また一方、ぬえなどが行う慰問ボランティアの活動も難しくて、ややもすると自己満足の迷宮に入り込んでしまいやすいのはこうした活動でありましょう。支援、なんてカッコいいことを言いながら、果たして本当に住民さんのためになっている活動なのか? ぬえも常に自問してはいますが。。今日もお客さまの意見の中に「正解はないのではないか」というのがありましたが、まさに ぬえの経験による実感もその通りで、ぬえたち「よそ者」が短時間現地にいても見えてこない住民さんの気持ちがそこにあることから意識をそらしてはいけませんね。それだからこそ ぬえも上演に際しては、それが終わってからの住民さんとの対話を大切にしてはいるのですが、それでもお役に立てた実感を持てたのは2~3回くらいでしょうか。

今回の報告会では、この劇のあとに質疑応答コーナーがありました。注目される意見や体験談もありましたが、劇の影響からか、話題はボランティアの「思いやり」の必要性について考える方向に進んでいったと思います。

(続く。すいません、今回は肖像権のような事も考慮したので画像はありません)