あろうことか、風邪?インフル?敢え無くダウン。
長時間床に就いていたため?腰が痛くて腰が痛くて。
ただ、そのお陰で、本が読めます。
半分ほど読んでいたアルセーニエフ著「デルスウ・ウザーラ」、初版が1965年だから?やけに活字が小さくて眼鏡を変えたいと思いながらも、深い感慨の中で読み終えました。
確か、書いたはずと思って調べてみると、元旦のブログにこの本を注文したと書いていました。
あなたは私 私はあなた
後で、デルスウ・ウザーラのことを教えてくれた方の出所は、清水義久著「あなたは私 私はあなた」だとこの本を読みながら分かったのですが、そこには下記の言葉が紹介されていました。
アルセーニエフはデルスに聞く。
「こんな吹雪の中にひとりで獲物を待って何日もじっとしていられるなんて、信じられない。どうしてできるんだ? こんな氷と雪に閉ざされた世界にたったひとりで暮らしていて気が狂わないのかい?」
デルスは答えた。
「この世界は生命に満ち溢れている。あらゆる命が輝いている。空気の中にあったり、水たまりの中にあったり、氷の上にもあったりする。おれは一瞬たりともそいつらの命から切り離されたことはないよ。あんたたち文明人は、この世界でたったひとりになれるというすごい技を発見したんだね。ひとつの命だけを切り離すという技はどうやったらできるんだい」
世界のクロサワへ
作者のアルセーニエフが沿海州の地図作成のため、この地方を探検する中で知り合ったのが原住民(ゴリド族)のデルスウ・ウザーラ。
この話は、黒澤明がソ連との合作で映画化され、アカデミー賞外国映画賞とモスクワ国際映画祭最優秀作品賞を受賞し、黒澤監督はここから「世界のクロサワ」へ飛躍とか。
さて、この本は最初にウラジオストクで出版されますが、その高い芸術性をゴーリキーが絶賛しモスクワの国立出版社から再版されています。
なるほど、自然の表現力や深く温かな人間への眼差しは素晴らしいかも。
ただ、楽しみにしていた前述の一節は見えなかったので、それは、初版にあったのか?
自分の欲するように生きたい
探検の途中、デルスウ・ウザーラは目が悪くなって生きる糧であった猟が出来なくなり、ウラジオストクでアルセーニエフと暮らし始めますが、だんだん痩せてやつれて老い込んでくる。
彼は「町では自分の欲するようにではなく、他人の欲するように生きなくてはならない」と理解するようになり、とうとう彼は、アルセーニエフの家を出て行き、悲劇が彼を襲う。
この本を読みながら、やはり可能なんだ!と思ったことがあります。
それは、シベリアの美女アナスタシアは家を持たずにタイガで暮らしていますね。
この本にも原住民のウデヘ人ロガタが零下20℃の厳寒の中、小屋の中は人が多く狭苦しいので焚火もなく外で寝る場面がありますが、デルスウは「この人たち、寒さ恐れない。夜が来るとそこに眠る。いつも月が、彼の背中あたためる。」と説明しています。
人の力、人の可能性は底知れないと思いますが、便利は人の持つ力を削ぐんですね。
あっ、僕は厳寒の地に投げ出されたら、どんな装備があっても無理!って思います。
ただ、できる限り他人の欲するようにではなく、自分の欲するような生き方をしたいものだと。
そして、いつも命の輝きに満ちたこの世界を感じて生きたいものだと。