「死なないと生まれない」
生まれないと死なない。死なないと生まれない。停止はしていない。変化をしている。次へ次へ流れている。そこへひとり留まろうとしても留まり得ない。己という一存在も存在の全体と肩を並べながら、常に流転をしている。いのちの旅をしている。
生まれ変わり生まれ変わる。死を契機として生まれ変わる。だから死は凄まじいエネルギーを内包していなくてはならない。なにしろ大爆発がここで起きるのである。この力で転換が始まるのである。消滅でも凋落でもない。パワーが一挙に活動へ向かうのである。
死は一時の位、ほんの一時の状態である。生はそうではない。一時ではない。死と死の間を続行するものである。江戸時代の駅(うまや)のようなものだ。ここで肉体という馬を新しくする。
死は暗いものではない。忌むものではない。明るさへ向かう扉である。こちら側からは閉じるための扉だけにしか見えないが、そうではない。開けるための扉でもあるのだ。恐がるべきものではない。明るさへ向かう扉が開くのだ。これで次の世界へランクアップする。
ここに死の明るい哲学がある。すべては留まってはいないのだ。ここは淀みではない。水流の早い早瀬である。転じて転じて行く。変化して変化して行く。いのちはすべての変化を楽しむ旅をしているはずだ。暗い死の因習に執着することはない。
わたしは老いた。老いて終わり、死んで終わりではないと考えていると息が深くなる。