あたたかやスキップで行く女の子
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これもNHK俳句5月号、小澤實選の佳作入選の句。季題は「あたたか」。春の季語か。愛知県の小野薫さんの作品。
女の子は、もちろん男の子でもいい。いいけれど、女の子だと編んだ黒髪が背中で揺れているのが見えて来る。男の子だと白い運動靴の靴底が白く見えている。
女の子は学校帰りだろうか。帰って来た後だろうか。口に飴玉をしゃぶっている。しなければならない宿題は後回しで、走り出して、途中の野原まで来たら、今度はスキップになった。嬉しい。気持ちが軽い。鼻歌が出る。
スキップをしてでも行きたい気持ちにさせているのは、いったい何なんだろう。
女の子はきっと小学生だろう。中学生ではあるまい。思春期に入ったらこうまで軽々とはスキップができないはず。
ああ、そういう頃が、わたしにもあったなあと思う。ずっとずっとずっと若い頃に。何にも考えないでよかった頃、そういう頃が確かに一度あったなあと思う。
この作品は「あたたかや」で始まっている。春の午後だろう。気温が高いのではなくて、気持ちが明るく弾んでいるのだろう。或いは、そういうスキップをして跳んでいる女の子を見ている作者のがむしろ百倍暖まれたのかもしれない。
小澤實選の句はどれも誠実だ。そう思える。人情が575の合間からあふれている。
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