「130 JUJU mortier」
「山只華陶苑」加藤智也さんの波紋櫛目すり鉢。
寛政六年(1794年)創業の山只華陶苑は、
美濃焼の一つとして数えられる高田焼にこだわり代々すり鉢を作っています。
ワラ白 JUJU mortierは、この窯の七代目 加藤智也さんが生みだしたすり鉢で、
研究と鍛錬を重ね約9年の歳月をかけて完成させた「波紋櫛目(はもんくしめ)」のすり目が最大の特徴です。
デザイン性と実用性を兼ね備えたすり鉢は、2012年にグッドデザイン賞を受賞しています。
開発までにおよそ9年を要した波紋櫛目(はもんくしめ)すり鉢。
すり鉢で擂ると食材が上にあがるという経験をした方は多いと思います。食材が擂れるのは、すり粉木がすり目に逆らっている場所だけなので、擂れてない食材は上に持ち上がります。
山只華陶苑の「波紋櫛目」の美しい曲線のすり目は、波紋にすることで、すり粉木がしっかりとすり目にあたり、擂っている間に食材が上に逃げることがなくなり、早く少ない力で擂ることができます。また通常すり鉢は制作工程の関係で右回しのほうがよく擂れるといわれていますが、波紋のすり目にすることで、右回しでも左回しでも利き手に関係なく擂ることができるようになります。さらに食材への摩擦力が少なくなり、香り高くより美味しく調理ができるようになりました。
結婚祝いや引越祝いはもちろん、両親に贈る品としてもオススメです。
すり鉢に適した土「青土(アオト)」。
美濃焼の一角を担う高田焼は青土(アオト)と呼ばれる青い土からできています。青土はすり鉢を作る土として大変優れており、耐久性が高く、焼き上がると吸水性がほとんどなくなります。さらに土の特性からザラっとした質感があり、これが良い摩擦力を与えています。
また、すり鉢は長く使っていると磨耗しますが、青土独特の土の粒子が欠けの鋭さを優しくガードしてくれるという特性もあります。山只華陶苑はこういったことから200年以上この土をずっと使い続けています。
潰す、擂る、盛る。
スパイスやニンニクを潰してソース作りに、
胡麻など風味豊かな素材を擂ってドレッシンや和え物に。
山只華陶苑のすり鉢は食材を選ばず、使い方次第で様々な料理に役立ちます。
4寸と6寸から選べます。
4寸は一人暮らしやご夫婦に。6寸はご家族やホームパーティーのときなどにオススメです。
4寸はドレッシングやソース、6寸はパスタと和えてパスタ皿などでもお使いいただけるので、
人数に関係なく両方持っておきたいアイテムです。
*https://kougeishop.com/suribachi-siro/ より
山只華陶苑 岐阜県多治見市高田町8-46
Episode 1 独創の原点、青土(あおと)
青土(アオト)とは、高田で採れる原土の事で、文字通り掘り出した土の色が、少しネズミ色がかった青色をしており、この様に呼ばれるようになります。
この土は、掘ったそのままを天日で乾燥させ、水簸し、不純物を取っただけで使えるなど優れた特徴を持ち合わせています。
あまり知られていませんが、日本有数の歴史をもち、この様な素晴らしい性質の土があったからこそ、元和二年(1616年)加藤与左衛門景直によって窯が築かれ、高田焼が起ったのです。
Episode 2 青土へのこだわり
明治の頃より、白く、さらに固く焼き締まる磁器が、美濃でも発達してきました。そこで、藤兵衛窯でも磁器を使えば、すり目が堅牢になる事から磁器の使用も考えられたようです。しかし、この考えはやめられ青土を使い続けてきました。
それは、このすり目の持つ『摩擦力と優しさ』にあったと聞いております。
山只のすり鉢の内側をすり目に沿って触れてみて下さい。“ザラッ”とする感触が分ると思います。このざらつきが摩擦力に繋がるのです。
このざらつきは、高田の土の性質や土の製法に由来します。山から掘り出した原土を水簸して粘土にする方法が、細かな粒子の間に大きな粒子が入るかたちになる為ざらつくのです。磁器土で出来ているものや、土物ですり目に釉薬を掛けた物と比べると違いがお分かりになると思います。
Episode 3 優しさからの選択
すり鉢は、長く使っていますとすり目が摩耗します。これは、すり目の山が小さく欠ける事で、摩耗している訳です。しかし、この『小さなかけら』は、磁器やガラスの様に鋭くありません。摩擦力の元になった『ざらつき』すなわち土の粒子の大きな部分が、『小さなかけら』の鋭さを優しくガードしてくれるのです。小さな子供のお腹の中に、鋭いかけらを入れたくない先代の選択でした。
この様に、すり鉢に生じる欠点にも優しく対応してきた先代の考えと、この土の持つ性質が、今の代にまでこの土を使い続けさせる原動力となっています。
Episode 4 不思議な白い輪
すり鉢を焼き上げるときは、重ねて焼成します。この際、うつわ同士がくっついてしまわない様『アルミナ』というものを塗っています。
それが、内側に付いている白い輪なのです。
初代の頃は、山砂などでこの代用をしていたそうですが、このくっ付き防止成分のアルミナが、精製可能になってからも山砂の感覚に似るように、大きなアルミナの粒子を特別に混ぜる事で、白い輪の軽減を図っています。
このアルミナは、土の主な成分であり、それを特別に取り出しているだけで、体内に入っても健康に害を与えるものではありません。
Episode 5 身を粉にして人のためになる道具
新婚夫婦が、お互いに相手を思いやり、ともに努力してその愛を確かなものにして行く、そんなお話を『すり鉢』で例えたお話です。この様に、すり鉢もスリコギも、ともに少しずつ減って行きながら使っていただく道具であるため、使っていただく前に、必ずしていただきたいことがあります。
すり鉢を使う前には、まず『当たり』をつけて下さいとよく言われます。これは、車で言うところの『慣らし運転。』です。すり鉢もスリコギもお互いの相性が合うまでは、慣らしが必要であるのです。
では、当たりの付け方を説明します。
すり鉢とスリコギを水につけ、湿った状態にします。食材のない状態で、スリコギがすり面全体に当たるよう右回り、左回り同じ様にゴリゴリします。すり目とすり目の間に出来ている、薄く弱い部分がとれましたら終了です。
Episode 6 すべてを地元から…すり粉木の話
すり粉木は、昔から山椒の木が使われています。これは、この木の持つ薬効を利用しようとした先人の知恵なのです。すり鉢で食材をする時、すり粉木が少しずつ削れ取り入れているのですが、この木の持つ薬効が消化不良や腹痛を軽減させてくれるため使われてきたのです。しかし、最近は中国製品が安易に手に入る事から、輸入品が大多数です。輸入木は、必ず燻蒸処理をするため臭化メチル(メチルブロマイド)という物質が、樹の中に入り込んでいます。それをすり粉木として使えば、使っているうちに削れているのですから、この毒まで取り入れる事になります。
ですから、国内産の木を使って欲しいのです。
Episode 7 うずまく『波紋櫛目』の誕生
すり鉢は、すり目がうつわ全体に施されている事から、どの面でも摺れていると思われています。しかし七代目は、そこに疑問を持ちます。すれている場所は、すり粉木がすり目に逆らっている場所だけで、あとの場所では、食材はただ上へ持ち上がっているだけなのでは、と……。
そこで美しさや作業性など、さまざまなすり目のテストをします。開発までに約9年を費やしましたが、ついに完成形を見る事になります。このデザインは、食材を上へ逃げにくくしその場ですれていく為、早くすれるようになりました。そのため、食材への摩擦熱が少なく香り高くすれます。さらに、力のない高齢者の方にも少ない力で使って頂けます。
この目立ての摩擦力は、回す方向に関係なく、する物をその場所に止めておく力となるため右利き左利きに関係なく使っていただけるのです。
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