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<経産大臣指定伝統的工芸品> 新潟 燕鎚起銅器

2021-03-26 07:35:58 | 東京五輪延期

 「燕鎚起銅器」

 Description / 特徴・産地

 燕鎚起銅器とは?
 燕鎚起銅器(つばめついきどうき)は、新潟県燕市周辺で作られている金工品です。江戸時代中期に誕生した伝統工芸品で、当時からこの地方の弥彦山で採取した銅を使ってやかんなどを生産していました。
鎚起とは槌(つち)で起こす打物のことで、銅という素材の伸展性を利用して、一枚の銅板を打ち起こしていく方法は職人の高い技術が要求されます。
 燕鎚起銅器の特徴は、職人が鎚起することでできる光沢のある見た目や、長年手入れをすることで銅の風合いが増していくことです。一つの製品に数十万回も打ちを加えていくため、外側は陶器を思わせるほど滑らかに作ることが可能です。
作られる製品の多様さも魅力の一つで、日用品として使用する花瓶や水柱、急須などから美術的な作品まであります。銅の急須でお茶を入れると金属イオンが味を柔らかくする働きもあると言われています。1981年に伝統的工芸品に指定されました。

 History / 歴史
 金属加工の産地として有名な新潟県燕市は、江戸時代初期頃に和釘を作ったことから歴史が始まったと言われています。そして、江戸時代中期ごろに仙台の職人が燕市を訪れたときに、鎚起銅器の製作方法を伝えたことが燕鎚起銅器の起源です。このときに伝えられた鍛金技法は200年をゆうに超えて受け継がれています。
 現在、鎚起銅器の産地は国内でただ一つ燕市のみとなっていますが、この地で発展した理由は、近郊の弥彦山から質の高い銅鉱石が採取できたことです。やかんの生産から始まった燕鎚起銅器ですが、明治時代に入ると日用品の枠を超えて彫金技術を取り入れて、美術工芸品の要素が加わりました。
 急須や花瓶、美術品など長い時間をかけて味わいを増す銅器は長く愛用されていて、日常のなかになくてはならない製品となっています。さらに、1894年には、明治天皇へ花瓶を献上したこともあります。

*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/tsubametsuikidoki/ より

 槌が生み出す神秘の輝き 燕槌起銅器
 光の加減で色味を変える燕鎚起銅器。その肌に宿る不思議な光沢は、鎚起職人が打ち出す分だけ輝いていく。しっとりと手肌になじむ銅のぬくもりは、使い込むほどに艶を増す。

 
 鎚起銅器の由来
 洋食器の街として名高い新潟県燕市。ここには江戸の昔から伝わる鎚起銅器の技が、今なお息づいている。たった一枚の銅版から鎚だけで鍛え上げられた、しなやかな曲線と端正なデザインが特徴だ。その工房を訪ねると、銅版を叩く音がカンカンカン、カンカンカンと聞こえてくる。鎚起とは「鎚」で打ち「起」こすという言葉に由来する。一言で打ち起こすと言っても、打ち伸ばし、打ち詰め、打ち均らし(うちならし)など各種の技法があり、鳥口(とりくち)と呼ばれる金床棒や金鎚、木槌を目的に合わせて使い分けなければならないなど高度な技術が必要とされる。


 熟練の技、打ち起こし
 「打ち起こしは、目・耳・手が一致して初めて仕事を成すことができるんです。鎚が鳥口と銅板の接する一点にちゃんと当たっているかは音で判断します」と話すのは、40年以上鎚起の技を磨いてきた細野五郎さん。数え切れないほどの鎚と200種類にも及ぶ鳥口を、銅版の強度や伸縮の具合などに合わせて選び、鎚を打つ強さや角度を微妙に調整しなければならない。これらの打ち出し技術の集大成ともいえるのが、一枚の銅板から作られる口打ち出し水注だ。「困難なところは、口と胴のバランスのとり方です。中でも口の部分を打ち起こしていくのが一番難しい。口の上部がどうしても薄くなってしまうために失敗すると切れが生じてしまうんです。この口出し水注は熟練の職人のみ手がけることができます」と細野さんは言う。数十万回もの打ち起こしを重ねた表面には、まるで陶器にも似たまろやかな肌ざわりが現出する。


 着色仕上げがもたらす光沢の妙味
 この表面に味わい深い質感を加えるのが、「着色仕上げ」という工程だ。緑青と硫酸銅の混合液や硫化カリウム液を使って表面に化学変化を起こさせる。「色水(着色に使う溶液)の状態がその日、その時で違います。色水は使うごとに疲れていってしまい、色を変える力がだんだんと無くなっていきます。そのため、ある程度休ませたり調整しなおしたりしなければならないのです。この色水をちょうどよいバランスの状態にしておくことが非常に難しいですね」。こうして深い色合いが肌に宿り、これに彫金や表面合金、模様打ちなどの装飾が加えられ、作品に気品のある華やかさを与えていく。

 自分を取り巻く全てが参考
 この経験と勘の結晶とも言える鎚起の技を受け継ぐ伝統工芸士、山川薫さんに鎚起銅器の真髄を聞いてみた。「昔は、均らし(表面を平らにすること)3年、詰め(形を整えること)6年と言われてきました。鎚起の技を磨くには、それなりの時間が必要です。しかし技術はその人のやる気と探究心についてまわるもの。それに、なにより大事なのはセンスです」そう語る山下さんは写真を通して自分のセンスを磨いてきた。間の置き方などを写真から学び、鎚起銅器づくりに活かしてきたのだそうだ。自分を取り巻く全てが参考になる、と山下さんは言う。

 暮らしの中で輝きを増す鎚起銅器
 山下さんの生活の中には様々な鎚起銅器が自然と溶け込んでいる。花瓶をはじめ、水注に急須、茶托から火鉢まで。美術工芸品から日常に使われる器まで、鎚起銅器の世界の広さに改めて驚かされる。「今使っている水注は昭和28年製作のもの。これは私の初作品なんです。銅器は手入れをするほどに味わいが増します。毎日手をかけるからこそ愛着が生まれてくるものです」銅器の急須で注がれたお茶は金属イオンの効用によって、まろやかになり、うまみが一層引き立つ。魔法のような技術で生み出された鎚起銅器は、生活の中でその真価を発揮する。


 職人プロフィール

 山下薫

 昭和5年生まれ。
 昭和24年から50年間仕事を続けている。使う人が驚くような奇抜なデザインも作っていきたい、と意気込む。


 こぼれ話

 先人の知恵がつまった道具たち

 燕鎚起銅器に使われる道具をいくつか紹介しましょう。 まずは「鳥口(とりくち)」。木槌で打ち起こされた銅板をこの金具にひっかけて、金鎚で打ち絞っていきます。別名、当金(あてがね)と呼ばれ、製品の形によりいろいろ使い分けされ、その数は数百種類にも上ります。この鳥口は、ケヤキで作った上がり盤というケヤキ製の台の穴に挿し込んで使われます。
 鎚も用途にあわせて大小様々なものがあります。木槌は平らな銅板を打ち起こすときや、仕上げのために形を整えるときに使われます。金鎚は、胴体の形をつくる「詰め鎚」、鎚目をつけて肌をきれいにする「均らし鎚」、肌に模様をつける「荒らし鎚」、その他にも彫金用の鎚などがあります。
 上記に挙げた以外にも、一つの鎚起銅器を仕上げるためには、多種多様な道具が必要となります。道具どれ一つとっても、それぞれに先人の知恵がつまっていることは言うまでもありません。

*https://kougeihin.jp/craft/0704/ より


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