「 356 チョリソー」
左から時計まわりに「スモークソーセージ」、「チョリソ」、「スモークベーコン」、自家製「粒マスタード」
イビサスモークレストラン 福岡県うきは市浮羽町田篭719
自家製燻製を供する職人レストラン 福岡県うきは市「IBIZA SMOKE RESTAURANT」 buono編集部 2021年02月26日
福岡県うきは市郊外に自家製の燻製を使った料理を食べさせてくれる店がある。 石窯焼きパンやベーコンを石窯のおき火で燻すように炒めた野趣溢れる料理が旨い。生ハム、パエリア、スペイン風オムレツを供する職人レストランへお連れしよう。
おき火で香ばしく焼いたワイルドな肉料理が旨い
南イタリアの郊外をドライブ中、チーズ工房が営むレストランと遭遇したことがある。美味しくて鮮度が自慢のチーズを食べてもらいたくてレストランを始めたというのだ。探してみると、国内にも食の職人が経営するレストランがある。そうした食の職人直営の飲食店へご案内しよう。
今回ご登場いただくのは、 福岡県うきは市の片田舎で燻製職人が営む『イビサスモークレストラン』(以下イビサ)である。
この店に初めて連れて行かれたら、淑女に限らず誰もが不安にかられるはずだ。高速を降り、住宅街を抜けたかと思うと景色は一変。ダム湖沿いの道を上っていくと、やがてセンターラインのない細い道路に出る。寒村をいくつも通り過ぎているうちに、食事に行くというよりも山菜採りに来たような気分になってくる。「いったいどこへ行こう としているのか?」と疑心暗鬼に駆られはじめた頃、石造りの平屋が目に飛び込んでくる。ここが旅の目的地、イビサだ。
イビサは尾花光店長の父であり、画家だった新生さんが1988年にオープンした。新生さんは77年頃、妻と二人でスペインのイビサ島に移住し、1年半後帰国した新生さんは石がゴロゴロしたこの土地を購入。自身たちの手で開拓し、家を建てた。
場所柄スーパーはおろか乾物屋もない。家族に食べさせるため、新生さんはスペイン風生ハムやベーコン、ハムなどを作り、石を組んだ石窯でパンを焼き始めた。誰に習ったわけでもない。スペインで覚えた舌の記憶だけが頼りだった。燻製もパンも家族の大切な食料だったことから、添加物は一切使わなかった。
87年に手作りの燻製を3坪の木造店舗で売り始めた。無添加の素朴な燻製を求めて、人里離れたイビサに足を運ぶ人が増えていった。その翌年石を積み上げたレストランをオープン。2008年、父からイビサを受け継いだ光さんも父の教えを頑なに守り、添加物を使わない燻製を作り続けている。
イビサへ向かう途中、ちょっと寄り道すると日本棚田百選に選ばれたつづら棚田に出合える。
そんなイビサを2012年鉄砲水が襲った。店の裏を流れる川が大雨で氾濫したのだ。幸い家族もスタッフも無事だったが、店の一部と石窯を流出。光さんは店を修復し、翌年5月にリニューアルオープンした。以前よりも窓を大きくとったことで、開放感溢れる店に生まれ変わった。
いつの頃からかメニューが増えていった。都会のレストランではまず出せない料理もある。「みのう豚のロースの炭火焼」がそれだ。料理名こそ炭火焼だが、地元産みのう豚をおき火で焼いた野趣溢れる一品だ。
ジューシーな「みのう豚のロースの炭火焼」は土日限定。
「みのう豚のロースの炭火焼」の肉は、石窯から取り出したおき火と梨の原木で燻しながら焼き上げる。
「地元の果樹園で貰った梨の原木も使っています。この木で燻すように焼くと梨の木の甘い香りが付きます」(尾花光さん)
鄙のレストランでどんな料理を供しているのか紹介する。
香り高い生ハムをスペイン産ワインと一緒に賞味したい
「イビサベーコンとうきはの色々野菜のサラダ」という料理がある。この店の名物料理パエリアに使うパエリア鍋にベーコンや旬の野菜を入れ、薪が燃える石窯で焼くように炒めた一品だ。シンプルで野趣な料理だが、ベーコンの原材料の豚肉も野菜も、地のものを使っているので滋味深い味わいが楽しめる。
石窯で炒めた食材を盛った「イビサベーコンとうきはの色々野菜のサラダ」。
厨房の隣に構えた石窯はパン焼きだけでなく、調理にも活用している。「イビサベーコンとうきはの色々野菜のサラダ」はもちろん、「みのう豚のロースの炭火焼」に添える野菜も鍋にのせて石窯で調理する。
昨今ベーコンやハムは、燻製の香りを付ける薫液と呼ばれる液体に漬け込んだ製品が主流だ。けれど、イビサでは今も昔ながらの方法で燻製を手がけている。店に隣接する燻製工房で肉を山桜でスモークしているのだ。たとえばハムは5センチ厚に切ったロース肉を9種類のスパイスや塩、砂糖などが入ったソミュール液に3日漬けたものを塩抜き後半日かけて丁寧に燻す。
スペイン風生ハムやサラミ、チョリソなどは別棟の熟成室で熟成させる。イビサの生ハムは、新生さんが地中海に浮かぶイビサ島で食べた味を再現したものだ。新生さんが食べたスペインの生ハム、ハモンセラーノには砂糖も亜硝酸ナトリウムも使っていない。その味を再現するまでに10年かかった。
燻製職人の尾花光さんはチョリソ(パプリカを利かせたスペインを代表するサラミソーセージ)の他、サラミやコッパを10〜15°Cに保った熟成室で熟成させていた。
生ハムも熟成室で熟成中。鼻に近づけると生ハム特有のしっとりとした、甘い香りが感じられる。
レストランに隣接する燻製工房。この日はベーコンとハムを燻していた。その他、合鴨のスモークなども手がけている。
塩漬けにした豚モモ肉を熟成室で2年熟成させる。それを注文がある度に光さんが手で1枚1枚切る。イビサの生ハムはしっとりとしていて、芳しい香りを放っている。口にふくむと、とろけるような味を楽しませてくれる。舌にべたべたとした味が残らないのは、砂糖を使っていないからだ。スペインに限らずイタリアでもサラミには亜硝酸ナトリウムなどを使うのが一般的だが、イビサではサラミにさえ添加物を使っていない。
これからの季節は天気が良ければテラスで食事をしたくなる。スペインのワインも揃っているのでつい飲みたくなるが、近所に宿泊施設もあるので安心してグラスを傾けられる。せっかく来たのだから日帰りではもったいない。山里の料理とワインと風景を思う存分味わいたい。
燻製職人&シェフ 尾花光さん
9年前、父・新生さんからイビサを継承した光さんは、より旨い燻製や料理を提供するため、父が始めた燻製や料理のレシピを現代の味覚に合うようにスパイスの調合や塩加減などを改良してきた。地元の食材を用いた新メニューの開発にも余念がない。
*https://funq.jp/buono/article/676461/ より
私見ですが・・・ 行くことはちょっと難しいかもだけど、一度取り寄せてみようかと思います。とても魅力的なお店・料理に心惹かれます。
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