今回は横道へ逸れず、共産党に関する情報を紹介します。
「1978 ( 昭和53 ) 年に福田赳夫首相が結んだ、〈日中平和友好条約〉の国会承認において、10月18日の参議院本会議で、共産党の立木洋が本会議の討論に立った。」
「中国側がこの十余年来、日本国民の運動に対し武装闘争路線の押しつけを図り、大国主義的覇権主義行為に出ていると批判した上で、自党議員の訪中拒否と中国側による日本国内の親中国・反日本共産党系新左翼グループの支援が、内政干渉であると述べた。」
新左翼グループというのは、中国式「武力闘争」で革命を達成しようとする左翼過激派のことです。国会の議事録にも記載されている発言ですが、予想していた通り中国政府は、日本国内の過激派集団を支援していました。それならば筋を通して「日中平和友好条約」に反対したのかと言いますと、そうではありません。
「中国政府の一連の行為が、同条約が反対する覇権主義に含まれると日本政府が確認したという理由で、立木は日本共産党として承認に賛成した。」
日本政府が中国の内政干渉を確認しながら、条約の承認を認めているのなら、共産党も認めてやろうという回りくどい理由づけをしています。
立木議員の意見は、どう考えても共産党の日頃の主張と一致しせず、中国共産党に関する歯切れの悪さが目立ちますが、次の中国とベトナムの戦争時は違っています。ベトナムは親ソ蓮派の共産党政府で、反中国の立場を鮮明にしています。
「1979 ( 昭和54 ) 年2月に始まった中越戦争では、1966 ( 昭和41 ) 年の宮本訪問団以来ベトナム共産党との友好関係を維持する日本共産党は、〈中国はベトナムに対する侵略行為をただちに中止せよ〉という声明を出した。」
「中越戦争を中国の侵略と断じるとともに、中国の軍事行動を〈社会主義の大義とは全く無縁〉として批判した。」
「同年3月には、中越戦争を取材中の〈しんぶん赤旗〉のハノイ特派員の高野功が、中国人民解放軍に射殺される事件があった。〈しんぶん赤旗〉編集長韮沢忠雄は次の声明を出した。」
「正義と真実の報道に準じた高野特派員の死を深く悼むとともに、重ねて中国のベトナム侵略を強く糾弾する。」
世界第2位の経済大国となった日本で、共産党のトップに立つ宮本委員長の矜持を、次の説明が教えています。
「 中国共産党は文化大革命時の、世界各国の共産党への内政干渉を1970 ( 昭和45 ) 年末から順次、曖昧な〈どっちもどっち論〉や〈未来志向論〉などで修復していった。」
「その流れとして、1985 ( 昭和60 ) 年にも一度は関係修復のための会談を、日本共産党に申し入れていた。しかしその内容が関係悪化の原因を、〈宜粗不宜細 ( 粗い方がよく、細かいのはよくない ) 〉と曖昧にするものであったため、宮本は、誤りを具体的に認めず、謝罪もしない中国共産党の姿勢を拒絶した。」
「 1989 ( 昭和64) 年の天安門事件を日本共産党は、〈社会主義の大義に照らし、国際的にも絶対に黙過できない暴挙〉〈言語道断の暴挙にたいし、怒りをこめて断固糾弾する〉と批判している。」
宮本委員長が中国共産党の関係修復の動きを何度拒絶しても、なぜ中国は諦めることなく日本共産党との対立を解消しようとするのか。現在の習近平体制下の尊大で攻撃的な中国政府からは、考えられない低姿勢です。
「それは、宮本委員長の率いる日本共産党の存在が大きいからだ。」
共産党員の答えは、常にこんなものだろうと思いますが、ここでも私の考えは違います。昭和60年は保守の中曽根内閣で、アメリカは反共のレーガン大統領でした。二人は互いをファーストネームで呼び合うほど、親密な関係だとマスコミが騒ぎ、「ロン・ヤス関係」という言葉がしばらく流行りました。
同年の3月、ソ連ではチェルネンコ書記長が死去し,政治局最年少のゴルバチョフ政治局員が新書記長に就任し、彼は短期間のうちに党・政府幹部人事の大幅刷新と若返りを進めました。この時の状況を説明する情報がありますので、紹介します。
「ゴルバチョフ書記長は4月の中央委員会総会で、〈社会・経済発展の促進〉がソ連の主要な課題であると述べ,こうした政策姿勢が外交面にいかなる影響を及ぼすかが注目された。」
「かかる背景の下、ソ連はより積極的な外交姿勢をとり始め、米国の呼びかけに応じて、米ソ首脳会談が11月19日から21日にかけて開催された。」
「特に同会談では、両首脳のみの会談が5時間余にわたって行われ、極めて異例なこととして注目された。会談後の共同発表文は、〈適切に適用された〉米ソの核兵器の50%削減の原則、暫定的なINF合意の考え方等,これまでの米ソ両案の共通点を確認したほか両国間対話の強化をうたっている。」「また1986 ( 昭和61 ) 年にゴルバチョフ書記長訪米、87年にレーガン大統領訪ソが行われることとされた。」
「さらにソ連は、我が国、西欧各国との外交に積極姿勢を示し、また北朝鮮との関係緊密化を図り、さらにオマーン、アラブ首長国連邦との外交関係を樹立するなど、外交の幅の拡大を図る動きを見せたことが注目された。」
説明を読めばわかる通り、中国が日本共産党に秋波を送っているのは、宮本委員長の指導する日本共産党の存在が大きいためでなく、経済大国となり、超大国アメリカと親密になり、しかも敵対国ソ連が積極的に近づいているからでした。世界経済と政治の舞台で、無視できない日本の存在があるため、中国は日本共産党との関係修復を狙っているのだと、共産党員には気の毒ですが私はそう考えます。
次回は、次の委員長になった不破氏と志位氏の共産党と、中国の関係に関する情報を紹介します。